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第二章
守られる日々⑤
「――門限、過ぎましたね」
「も、もう……?」
「はい、そんな時間になるくらい。私はあなたを求めてました」
最終的には腰砕けになってしまい、私は立っていられなくなっていた。椅子に座ったリヒトさんの膝の上でも……続けられていた。その状態のまま、私は彼に寄りかかっていた。
「……ああ、このまま部屋に連れて帰りたい」
「……」
私はリヒトさんの言葉に首を振った。彼はもう暴走してしまっている。これ以上はもう、私にはついていける内容ではなくて。
「……性急過ぎましたね。また、いずれの機会にでも」
「リヒトさん、それって」
リヒトさんが何かを仄めかしている。私が疑問に思っていても。
「いえ、なんでもありません。今はね」
「……?」
こうしてはぐらかして、リヒトさんは決して教えはしない。
「シャーロット」
「!」
繋がれたのは手。その手は繋ぎ合わされる。
「きちんと、順序を踏んでいきましょうか――これは、嫌ですか?」
「……ううん」
リヒトさんとこうするのは好き。
「……?」
好きだったはず……自治委員会に向かう時も手を繋いでいた。
「抱きしめられるのは?」
「……好き」
「……ふう」
リヒトさんは溜息をつくと、膝の上の私を抱きしめた。
「撫でたら、落ち着く?」
「うん」
リヒトさんの手は、私の長い髪から、背中へ移ろっていく。そのまま下へ……下へ!?
「……これ以上は、今はいけない。何でもありません。ええ、何でもないのです」
リヒトさんは誤魔化すかのように口早に言うと、顔を近づけてきた。私の唇を指でなぞる。
「――こちらは?」
「……!」
「わかっているでしょう? あれ程、夢中だったのだから」
「……わかってる」
リヒトさんが示すもの、その答えを……私はわかっている。
彼の唇を受け入れて、互いに触れ合わせて。
長い時間をかけて、二人は想いを育んでいく。
「……」
リヒトさんにとっての第一はカイゼリン様。もうね、それでもいい。それでも……こうしてリヒトさんと触れ合えるなら。私の方に気持ちが向いているなら――。
「……?」
どうして? 何故私は疑問に思うの? 自分の気持ちだよ? 今の私の気持ち、そうでしょう? 私は――。
「ねえ、リヒトさん。私の方がきっと妬いてるよ」
「!」
私から抱きついた。そのまま、リヒトさんに身を任せて。リヒトさんときたら……硬直していた。当然、私は気づくわけで。それならと、さらに体を寄せた。意地にもなってたかも。
「……ほんと、今更」
この行動に固まるということ……今更になって後悔でもしているのかな。私は呆れながらも、瞳を閉じた。ああ、リヒトさんの心音が聞えてる……。
「シャーロット。あなたは何も知らないから――」
「……」
リヒトさんが何か呟いている。私は聞かなかったことにした。
その後、リヒトさんに女子寮まで送ってもらった。まだ夜は明けていない。寮生が寝ている中、こっそりと侵入していた。横抱きのまま私は連れていかれていて、自室の前で下ろされた。
「――うん、そのくらいの高さで。ありがとう、リヒトさん」
リヒトさんに屈んでももらうと、私は彼の耳にこっそりお礼を告げた。
「……いえ」
リヒトさんの耳が赤くなっていた……赤くなるんだ。私の気持ちは浮かれてしまった。
「私が原因そのものですから……あなたを求めたあまり」
「!」
返り討ちにあってしまった。私の方が顔が赤くなってしまった。リヒトさんにそのつもりがないのがまた、悔しかったり……。
「おやすみなさい、シャーロット」
「おやすみ、リヒトさん」
名残惜しい気持ちを抱きつつも、私はリヒトさんを見送った。
「……」
静まり返った部屋……あの子がいない部屋。
大丈夫だよ、リッカ。リヒトさんがいてくれる。また一緒にいられるようになるからね?
ね、リッカ? リヒトさんがいてくれたら、大丈夫なんだよ?
リッカは今……ええと、そうそう、モルゲン先生の元、だっけ? うん、そうだ。先生のところ。そうだっけ……頭が曖昧になる。
「……ううん」
不安な気持ちは吹き飛んでいく。私にはリヒトさんがついている。
――彼がね、守ってくれるから。
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