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第二章
守られる日々⑥
しおりを挟む日々は過ぎていく。
この日も委員会活動を行われていた。冬休みも目前、業務はラストスパートだった。
「うう……仕事、終わらないわ……」
カイゼリン様は大量の事務仕事を抱えていた。大量といっても、与えられる量は大体一緒。リヒトさんが上手く分担してくれている……はずなんだけど。
実は違ったりする? そう思えるほど、カイゼリン様の分は中々減らなかった。
「……」
リヒトさんの補佐をしつつ、私はカイゼリン様を見ていた。複雑な心境だった。
リヒトさんの本命の人、それは面白くはない。一方で、カイゼリン様を慕う気持ちも残っていた。孤立している彼女を見ていると、昔の自分を見ているようでもあって……。
「リヒトさん、いいかな……!?」
「はい、シャーロット。どうかしましたか?」
カイゼリン様の仕事量は無理があるのではないか。せめて、自分も手伝えないかと申し出ることにした。
「カイゼリン様の仕事量、一人がやる量じゃないよね。私も手伝ってきていい?」
「……はい?」
優しい顔から険しい顔へ、リヒトさんの顔は一変した。私は怯えるも、それでも頼んでいた。
「もちろん、リヒトさんへの補佐は怠らないから――」
「同情はよしてちょうだい!」
声を張り上げて席を立ったのはカイゼリン様だった。彼女は体を震わせていた。
「……そんなお情け。わたくしはいらないわ!」
カイゼリン様は……泣きそうな声をしていた。そんな表情も見られたくないと、彼女は部屋を出ていってしまった。
「……」
……カイゼリン様を傷つけただけだったのかな。
「私は……」
優越感にも浸っていたのかな……自分が、自分が汚い。昔の、前世の私みたいで……。
憂鬱になっていた私の元に――委員の皆さんが集ってきた。それも穏便なものではなさそうで。
「……委員長補佐。リヒトさん、ではありません。委員長、ですが」
委員の一人に吐き捨てるように言われた。
「……たとえ、委員長のお気に入りでしょうと。慎みは持ってください」
「……ただでさえ、朝帰りが目撃されているのに」
続けざまに、他の委員たちも私に不満をぶつけてくる。彼らは罵りを続けようとするも、それを許さなかったのがリヒトさん。彼は作業の手を止めて、視線を委員たちへ。
「――失礼します。まず、私の呼び方についてですが。委員長呼びを強制しているわけではありません。あなた方も好きなようにお呼びください」
「……ですが」
リヒトさんはそれだけでなかった。彼一人だけが……微笑んでいた。
「ええ、お気に入りです。最愛の人ですから。それと、彼女は普段は慎み深いです。普段はね」
「……あの、委員長?」
「それにです、朝帰りと称してよいものでしょうか。そこまではまだ、彼女が許してくれませんから」
「……いや、委員長?」
あまりにも赤裸々過ぎない……? リヒトさん一人が堂々としていた。私としては勘弁してほしいと思っていた。
「はい、ですが……委員長は騙されているんです」
「そうです……その人に狂わされているんだ」
渋々納得はするも、委員たちはまだ不満そうだった。
「私語はそのあたりで慎んでください。私はそのような類の話、あなた方から聞きたくはありません」
「……失礼いたしました、委員長」
リヒターさんの語気は荒めだった。委員たちも引き下がるしかなかった。
「……狂わされてる、か。ねえ、シャーロット? それは言い得て妙だと、そう思いませんか?」
リヒトさんがこっそりと打ち明けてきた。
「――私はあなたに狂わされているんでしょうね」
実に嬉しそうに。幸せそうに。そう伝えてきていた。
「あ……」
私は全身が冷えていく感触だった。私の介入によって、彼をおかしくさせてしまったのか――歪めてしまったのかと。
「……」
それでも私はもう……リヒトさんから離れなくなっていた。
今は実直で慕われている委員長のリヒトさん。委員長でなくなった彼はまた、別の顔を見せる。
そんな彼に、私は溺れきっていた。
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