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第二章
守られる日々⑦
明日は冬休み。休み前のミーティングを行っていた。
「では、明日からの冬休み前に備えて。皆さんも交替で構いません。あらかじめ、彼らには話を通しておりますので、指示に従うようにしてください」
リヒトさんは委員たちに冬休み中も出動要請をする。特に優秀だった委員二人に、仕切りを任せていた。優秀コンビは頭を下げた。他の委員たちも拍手で歓迎した。
「委員長、長期休暇ですね。我々にお任せください!」
「今までがご多忙でしたからねぇ? ……誰かさんのせいで」
片や現委員長を称え、片や旧委員長には嫌味を言っていた。ただ、現委員長はそういうのは好まないので、これ以上はやめていた。
「……」
カイゼリン様はひたすら肩身が狭そうだった。
「……カイゼリン様」
やっぱりなんだ。カイゼリン様を見ていると不思議な感情が沸いてくる。
私にとってのカイゼリン様って……本当に妬みの相手だった? もっと、純粋な想いだったはずだよね? 困ったところもあったけれど、頼りになるところもあった。そんな人だったはずなのに。
「……」
カイゼリン様を見ていた私。それをまた、リヒトさんも見ているんだろうな。いつものように無言で。
「はい。皆さんにお任せします――私達は引退しますので。業務内容の指示書は残しておきました」
「!?」
私はリヒトさんを勢いよく見た。こちらを見てくれたと、リヒトさんは微笑んでいた。委員はそれどころではない。騒ぎになっていた。この突然すぎる言動のせいであった。
「自治委員会は引退――私とシャーロットは学園も退学します。これから学園長の元へと向かいます」
「……ちょっと。ちょっと、待ってって! リヒトさん。私、聞いてない!」
当事者である私からしたら、とんでもない話だよ……!
「すみません。驚かせようとしただけですが。本当はもっと早くにしたかったのです。ただ、準備に手間取ってしまいまして」
「うん、驚いた。すごく驚いたけど……私は、納得してない。しかも準備とか」
せめて相談をしてほしかった。いや、そういう大事な話をなぜ、当人抜きで決めるの。常軌を逸しているんじゃ。
……大事な話。そう、そうだよ。リッカのこと、いつになったら……! 私ははっきり言って面会謝絶状態、モルゲン先生にまでまともに会えない――。
というか、ずっと委員会活動と、そして。
リヒトさんとの時間しか――。
「シャーロット、大丈夫です。大丈夫ですから」
「え……」
「――あなたの子犬もご一緒に。私は歓迎します」
「リヒトさん……!」
リヒトさん、わかってくれていたんだ。そして、リッカのこともちゃんと考えてくれていた。
私、何を不安に思っていたのかな……リヒトさんがいてくれるのに。
「では、皆さん――カイゼリン様。今までお世話になりました」
……カイゼリン様。リヒトさんが、彼女をそう呼んでいた。何故? ずっと『シェリア様』って。それがあなたの特別だと思っていて……私は妬くところだったり……妬いてた、よね?
「……リヒター」
カイゼリン様も目を伏せていた。とても複雑そうで、憂えてもいて。それなのに……リヒトさんは目もくれない。
「私は――『リヒト』として生きていきます。愛する人と共に」
リヒトさんは私の肩を抱いた。思い出すのは、彼の言葉だ。
『――私は、リヒトです』
『……それでもリヒターでいろと。そういうことでしょうか』
ずっと『リヒト』でいたいと――彼は望んでいた。
「……あなたは、『リヒト』に戻りたいんだね」
「ああ、シャーロット……ええ、ええそうです!」
たまらなくなったリヒトさんは、私を抱きしめた。衆目に晒そうと、彼はお構いなしだった。
「……狂わされたのは、私もだよ」
私だってそう。この温もりを――リヒトさんを手放すことなんて、出来なかった。
溶けない雪のようだと。そう言っていたのは誰だったか。
唯一溶かしてくれるというなら。終わりを、結末を迎えられるとしたら。
それは、彼に溶かしつくされること。彼との未来を選ぶことなのだろう。
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