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第二章
守られる日々⑪
「ふふ……」
そう、だね……こうして触れ合えるのが、こんなにもしあわせなんだ。リヒトさん、色々と心の準備に手間取る私だけれどね、少しずつでも――もっと触れていきたいの。
私はそっと離れて、精一杯背伸びをしてみた。本当に背が高いから、結構限界までつま先立ちしてるんだけどな。
「……シャーロット?」
リヒトさんは心配そうな顔をして様子を伺っていた。うん、締まらない……普通にお願いしよう。
「うん……リヒトさん、屈んでもらっていい?」
「は、はい……?」
ありがとうリヒトさん、その高さなら――。
「シャーロッ……」
彼が私の名前を言い終える前に。
私から彼にキスをしていた。一度だけでなく、何度も。
「……ふう」
私から唇を離して、瞳も開く。その……なんだろうね、一方的だったのかな……? リヒトさんは何も反応が無かったというか……拙かったから、かな。
「……」
それとも驚きすぎたからとか、意外過ぎてとか? 彼はまだ……固まったまま。今だってそう――。
「ひゃっ!」
突然の浮遊感。気づいた時には――リヒトさんに抱き抱え上げられていた!?
「……あまりにも意表を突かれたものですから。私としたことが、頭が追いついていませんでした」
「ど、どういうこと……?」
「もう一度お願いします、ということです」
「え」
リヒトさん、目が血走ってない!? 彼の綺麗な『金色』の瞳、それが鬼気迫るものになっているともいうか……! そ、それに改めてそう言われるとなると。
「さあ、シャーロット……!」
こうも構えられてもいると、ちょっと……!
しばらくの間。
「……しませんか? しませんか、そうですか。まあ、いずれね?」
「はい、いずれでお願いします……」
リヒトさん、落ち着いてくれたみたい。良かった、と胸を撫で下ろしていたところ。
「シャーロット、あまり刺激しないでくださいね?」
「ん?」
刺激? リヒトさんは続ける。
「刺激を与えないでください。私はあなたを大事にしたいから、待つとは申しました」
「……はい」
「ですが、ただでさえ愛しいあなたと一つ屋根の下。己の理性との闘いの日々なのですから」
「う、うん?」
理性? そうはいっても、リヒトさんからだって――。
「……ええ、確かにですね。私からもしてますね。ああ、募る一方です」
また読んだのって――といった私の思考が中断される。
リヒトさんからキスされたから。彼はすぐに離すと、私にねだった。
「ねえ、シャーロット……腕、回してもらえませんか?」
「うん……」
私はそれに応えた。そうすることで、互いの顔がさらに近づいた。そうして唇も触れ合わせて。
長くなるのかな……って、漠然と考えていたけれど。
「ご心配なさらず。あなたの手料理、冷めてしまいますから。一旦、このへんで」
リヒトさんはそう言ってくれた。そっか、考えてくれたんだ――。
「……続きは食後で、ね?」
「……うん」
長くなりそう――。
「私からも、ささやかな労いですが」
寝る前に、リヒトさんが紅茶をふるってくれた。居間のソファに座る私の前にあるのはスコーンだ。彼お手製のもの。
「わあ、ありがとう。リヒトさんが淹れてくれるの、美味しいんだ。スコーンも手作りのだ、やった」
「それは光栄です」
リヒトさんも隣に座ったので、一緒に紅茶を飲む。夜中のお茶会だった。こうして一緒にいる時間は、日中はとれない。お互いの至福の一時ともいえた。
「スコーン、なにかけようかな」
ジャムやメープルシロップ。生クリーム。そして――ハチミツがあった。クマの形をした容器がすごく可愛い。
「シャーロット。こちらのハチミツですが、本日買ってきたものです。容器も可愛らしくて、有名店ということで。あなたへのプレゼントのつもりでした」
「私へのプレゼント?」
「はい。ハチミツはお嫌いでしたか? 味の感想を聞きたかったのですが」
「ううん? ハチミツも好き。ありがとう。せっかくだし、いただくね?」
スプーンをハチミツに向けた。とても美味しそう。
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