春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第二章

守られる日々⑬

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「……シャーロット。ここまでにしましょうか」
「は、はい……」

 気がつけば、もう夜になっていた。私は力が抜けきってしまっていた。気合でパジャマに着替えたけれど、お風呂までは……。

 ご飯だってそうだった。リヒトさんに果物を持ってきてもらった。それをベッドでつまんでいた。私は彼の口元に持っていって、彼からも食べさせてもらって。うん、ひんやりとしていて美味しい……。

「リヒトさん。せっかくの作り置き、明日に――」

 私の指に果汁が滴る。その指を絡めとって、舐めたのは――リヒトさん。

「……」

 艶めかしくて……性的ともいえて。彼の金色の瞳も劣情を孕んでいる、それは私の気のせいでも勘違いでもない。

 私たちはぎりぎりだった。リヒトさんは『そういうこと』を望んでいる。それは私も……私もなのかな……頭にモヤがかかっている。

「……一年、終わりますね。来年も共に過ごしましょう――末永く」

 リヒトさんはベッドに横になり始めて、私も引きずりこんでいた。私をそのまま抱きしめて離そうともしない。

「そうだね、末永く……」

 末永く。彼はいつも言ってくれていた――家族になろうって。

「ええ。とはいえ、正式な夫婦になるには、春まで待つことになりますね」
「なんか、ごめん……」
「いいえ。あなたのお誕生日でもありますから。祝福もさせてくださいね」

 リヒトさんとしては、今すぐにでも本当の家族になりたかったって。私の誕生日が二月末の為、そこまで待つ必要があった。

「……春まで。それまであなたを純潔のままで、ですか。私は耐えらえるのでしょうか」
「ちょっと、リヒトさん? ちょっと、きわどいかなぁ?」

 時折返しに困る発言をリヒトさんはしてくる。そうだよ、ぎりぎりなんだよ……私たち!

「なにがきわどいのでしょうか。私はあるがままの事を言ったまでです。滑稽ですか。私がこうして辛抱しているのが、笑い種にでもなるというのでしょうか」
「そうじゃない、そうじゃないよ……」

 面倒な反応をされた。この人は……。

「ねえ、リヒトさん……私はいいんだよ」

 あなたと最後まで繋がれるのは――しあわせなんだと思う。心の準備はもう……できていた。

「……よろしいのですね! では、色々と準備を――」

 表情の変化が乏しいリヒトさんが、色めきだった。あのね、話には続きがあるんだ。私は姿勢を正し、ベッドの上に座ることにした。リヒトさんも揃えるように座る。

「でもね、続きがあるんだ。まずは、入籍するとなると。私も出かける必要があるよね。出ていいんだよね」
「なりません。外に出る必要はありません。事前に書類はもらっておきます。私一人でも手続きは出来ますから」

 リヒトさんは即答だった。彼の中では迷いのないものだったから。

「……私は、ずっとそうなの? ……あなたに囚われたまま?」

 囚われた? 私は何を言い出すの? そんな言い方、リヒトさんにも悪いって――。

「ああ……シャーロット」

 囚われた。その言葉を受けたリヒトさんは――恍惚とした表情となっていた。満ち足りたものと。

「はい、そうです。ええ、ずっと……あなたを守り続けますから」
「私は……」

 私は……リヒトさん、あなたに守られたままで――。

『気持ちをしっかり持ってね』

「!?」

 誰かの言葉だった。今では思い出せない、男の子の声。だとしても。

「……」

 私にとって、もう遠い言葉。彼の虜になってしまっている私からしてみれば。

「……」

 どれだけ頭に警鐘が鳴り響こうとも。心が何かを叫んでいても。

『シャーリー!』

 リッカはエーデル村で暮らしている。リッカだけじゃない。繰り返しの日々で力になってくれた彼らも。私が犯人になることはなくなったなら、彼らも生きていられる。
 これでいいはず。この未来ならば、皆が幸せになれるはずなのに。

 私は心のどこかで抵抗を感じていた。引っかかることがあるから。頭がね、ぼうっとしていて、不明瞭だった。ずっと霧の中にいるような感覚でもあって。

「……リヒトさん、答えて欲しいんだ」


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