143 / 557
第二章
守られる日々⑬
しおりを挟む「……シャーロット。ここまでにしましょうか」
「は、はい……」
気がつけば、もう夜になっていた。私は力が抜けきってしまっていた。気合でパジャマに着替えたけれど、お風呂までは……。
ご飯だってそうだった。リヒトさんに果物を持ってきてもらった。それをベッドでつまんでいた。私は彼の口元に持っていって、彼からも食べさせてもらって。うん、ひんやりとしていて美味しい……。
「リヒトさん。せっかくの作り置き、明日に――」
私の指に果汁が滴る。その指を絡めとって、舐めたのは――リヒトさん。
「……」
艶めかしくて……性的ともいえて。彼の金色の瞳も劣情を孕んでいる、それは私の気のせいでも勘違いでもない。
私たちはぎりぎりだった。リヒトさんは『そういうこと』を望んでいる。それは私も……私もなのかな……頭にモヤがかかっている。
「……一年、終わりますね。来年も共に過ごしましょう――末永く」
リヒトさんはベッドに横になり始めて、私も引きずりこんでいた。私をそのまま抱きしめて離そうともしない。
「そうだね、末永く……」
末永く。彼はいつも言ってくれていた――家族になろうって。
「ええ。とはいえ、正式な夫婦になるには、春まで待つことになりますね」
「なんか、ごめん……」
「いいえ。あなたのお誕生日でもありますから。祝福もさせてくださいね」
リヒトさんとしては、今すぐにでも本当の家族になりたかったって。私の誕生日が二月末の為、そこまで待つ必要があった。
「……春まで。それまであなたを純潔のままで、ですか。私は耐えらえるのでしょうか」
「ちょっと、リヒトさん? ちょっと、きわどいかなぁ?」
時折返しに困る発言をリヒトさんはしてくる。そうだよ、ぎりぎりなんだよ……私たち!
「なにがきわどいのでしょうか。私はあるがままの事を言ったまでです。滑稽ですか。私がこうして辛抱しているのが、笑い種にでもなるというのでしょうか」
「そうじゃない、そうじゃないよ……」
面倒な反応をされた。この人は……。
「ねえ、リヒトさん……私はいいんだよ」
あなたと最後まで繋がれるのは――しあわせなんだと思う。心の準備はもう……できていた。
「……よろしいのですね! では、色々と準備を――」
表情の変化が乏しいリヒトさんが、色めきだった。あのね、話には続きがあるんだ。私は姿勢を正し、ベッドの上に座ることにした。リヒトさんも揃えるように座る。
「でもね、続きがあるんだ。まずは、入籍するとなると。私も出かける必要があるよね。出ていいんだよね」
「なりません。外に出る必要はありません。事前に書類はもらっておきます。私一人でも手続きは出来ますから」
リヒトさんは即答だった。彼の中では迷いのないものだったから。
「……私は、ずっとそうなの? ……あなたに囚われたまま?」
囚われた? 私は何を言い出すの? そんな言い方、リヒトさんにも悪いって――。
「ああ……シャーロット」
囚われた。その言葉を受けたリヒトさんは――恍惚とした表情となっていた。満ち足りたものと。
「はい、そうです。ええ、ずっと……あなたを守り続けますから」
「私は……」
私は……リヒトさん、あなたに守られたままで――。
『気持ちをしっかり持ってね』
「!?」
誰かの言葉だった。今では思い出せない、男の子の声。だとしても。
「……」
私にとって、もう遠い言葉。彼の虜になってしまっている私からしてみれば。
「……」
どれだけ頭に警鐘が鳴り響こうとも。心が何かを叫んでいても。
『シャーリー!』
リッカはエーデル村で暮らしている。リッカだけじゃない。繰り返しの日々で力になってくれた彼らも。私が犯人になることはなくなったなら、彼らも生きていられる。
これでいいはず。この未来ならば、皆が幸せになれるはずなのに。
私は心のどこかで抵抗を感じていた。引っかかることがあるから。頭がね、ぼうっとしていて、不明瞭だった。ずっと霧の中にいるような感覚でもあって。
「……リヒトさん、答えて欲しいんだ」
0
あなたにおすすめの小説
彼氏がヤンデレてることに気付いたのでデッドエンド回避します
八
恋愛
ヤンデレ乙女ゲー主人公に転生した女の子が好かれたいやら殺されたくないやらでわたわたする話。基本ほのぼのしてます。食べてばっかり。
なろうに別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたものなので今と芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
一部加筆修正しています。
2025/9/9完結しました。ありがとうございました。
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
転生したら、乙女ゲームの悪役令嬢だったので現実逃避を始めます
山見月あいまゆ
恋愛
私が前世を思い出したのは前世のことに興味を持った時だった
「えっ!前世って前の人生のことなの。私の前の人生はなんだろう?早く思い出したい」
そう思った時すべてを思い出した。
ここは乙女ゲームの世界
そして私は悪役令嬢セリーナ・グランチェスタ
私の人生の結末はハーッピーエンドなんて喜ばしいものじゃない
バットエンド処刑されて終わりなのだ
こんなことを思い出すなら前世を思い出したくなかった
さっき言ったこととは真逆のことを思うのだった…
聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!
碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった!
落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。
オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。
ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!?
*カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
単純に婚約破棄したかっただけなのに、生まれた時から外堀埋められてたって話する?
甘寧
恋愛
婚約破棄したい令嬢が、実は溺愛されていたというテンプレのようなお話です。
……作者がただ単に糸目、関西弁男子を書きたかっただけなんです。
※不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる