春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第二章

救いたい、今度こそ

「――はっ!」

 私は飛び起きた。冷たい床の感触。ここは鳥籠の夢だ。

「……」

 四角い金色の鳥籠はそのまま……ううん、そうじゃない。機械仕掛けの錠前が巨大なものと化していた。いくつものアームが他の錠前たちを拘束していた。金色に染まりつつあるそれらと同化でもしそうだった。

「……リヒトさん」

 あの幻覚はどこまで信じていいのか。とにかくこの錠前の様子からして、彼からの執着は終わったわけではない。まだ、飲み込もうとしているのだから……。

「次こそは」

 時間は限られていた。もう後がないんだ……。

「……リッカ」

 リッカはエーデル村で暮らしているはず。起きて会いにいけばいい。私はそう思いはするも。

「出ておいで、リッカ?」

 きっとこの夢を訪れているって、そんな気がした。そして、リッカが話したことについても。

「……おばあちゃんちの子。嘘だったんだよね。ね、リッカ?」

 話したことが嘘だったことも、わかった。

「……ごめんなさい」

 リッカがしょぼんとしながら姿を現わした。ああ、リッカ……。

「違う。リッカ。私が嘘をつかせたんだ。私が気にしないようにって。私は間に受けたんだ。ごめんね、リッカ」
「シャーリー、あのね……君が悪いとかじゃないの」

 リッカは小走りすると、鳥籠の近くまでやってきた。

「……アルトの時もそう。今回もそう。僕、何もできないんだ。そこにあるのは、強い意志。僕じゃ何もできない」
「強い意志……」

 春の女神が好むこと。それがマイナスに働くとこうもなるんだ……。

「……お待たせしちゃったけど、戻ろう。私達の場所へ」
「シャーリー。いいの?」
「うん。あの未来は――私が望む未来じゃない。私には覚悟なかったの。なかったのに、彼と深く関わろうとしたから、だから」

 不用意に。軽はずみに。彼の深部に触れてしまった。彼が必死に隠そうとしていたものを、曝け出すことになってしまった。

「私は――あの人も救いたい」
「……うん、シャーリー。帰ろう」




 私はいつもの自分の部屋で目覚めた。手にしているのは、机の引き出しにある推薦状だ。

「シャーリー。アルトが来てるよ」
「うん、ちょっと待たせるけど。行くね」

 教えてくれたリッカを撫でて、私は手早く支度を済ませた。玄関先にいるアルトを迎え入れる。

「おはよう、アルト」
「……あ、シャーロット。おはよ。それと」

 アルトは泣いているわけでもなく、困惑しているようだった。

「……今回のってなに? 俺、君を昼食に誘ったあたりから、ほんと記憶になくて」
「……そっか」

 あの『守られた日々』はそうなるんだ……アルトの時もそんな感じだったんだね。

 事件の解決の手がかりになるかもしれない。それでも私は話すのを躊躇った。内容が内容であったから。

「シャーロット、これってさ……いや」

 アルトはアルトで葛藤していた。言っていいのか。言わない方がいいのか。そんな葛藤だと私は思った。

「とりあえず、行こう? 共有できることは、きちんとするから」
「ん。わかった……」

 全てを話せはしない。それでも互いに信頼している。

「わん!」

 リッカもやる気だ。頼もしかった。学園についていく気満々だ。

「そう、リッカなんだけど。委員会に許可を取りに行ったらね、そのまま預ける形になっちゃって。それは避けたいなって。エーデル村にいてもらうしか」
「きゅーん……」

 リッカの尻尾は下がった。やる気満々のワンコは、待機の打診をされちゃったから……。

「あーあ、シャーロットは可愛い顔して鬼なんだー。俺にもいつも鬼! 好き! でも鬼!」

 アルトがなんか言っている。そんな彼がリッカを持ち上げた。リッカはバンザイの形となった。

「リッカは委員会になんて渡しません。なんとしても俺が面倒見ます」
「それは有難いけど……アルトも結構大変なんじゃ」
「そんなん愛の力でどうとでもなるし。散歩とか普通に行くし。普通に癒しだし」

 なっ? とリッカに同意を求めると、リッカも尻尾を振って応えた。アルトなら任せられるよね、私は彼にお願いすることにした。それはそれとして、その持ち方はやめてほしかった。

「おっと、愛の電波受信。持ち方変えまーす」

 私に注意される前に、アルトは正しい犬の抱っこをした。私にちゃんとやっているアピールした後、リッカを地面に下ろした。

 私たちは都へ立ち寄った後、学園へ向かうことにした。



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