152 / 557
第二章
わたくしの学友
しおりを挟む私たちは迎賓館へと急いでいた。リッカを抱えながら、スケートのように滑りながら移動していた。
「……」
何が起こるかはわからない。魔力の残量も気にしなくてはならない。前回の増強剤は綺麗になくなっていた。原材料が手に入りにくい貴重なあれらは、しっかりと使われた扱いになっていた。腑に落ちないけれど、無い物は無い。
「早く、早く伝えないと」
カイゼリン様はもうパーティ入りをしている。近くには警護もいて――側近の彼、リヒターさんもいる。
『シャーロット』
通信機器が受信した。あらかじめ先生に渡されたものであり、発信元も彼から。
「先生! アルトにも会ったらでいいです。とにかく、カイゼリン様の傍についていてください! 私も急ぎますから」
『ああ、わかってるさ――ほら』
「!」
電波は良くないけれど、映像は映し出されていた。画面に映っているのは、談笑しているカイゼリン様だった。ドレスで着飾ったより美しい彼女が――生存している。
その後方にいるのは疲れきったアルトだった。教師として潜り込めた先生はともかく、アルトが謎だった。彼はスーツを着ており、護衛といった体ではあった。上手いことやったのかな。
「……」
どのみちリヒターさんはいる。彼はまだ動いてないようでも、じきに時間は訪れるから。
私は迎賓館の門の前に立った。
「――失礼いたします。学園自治委員会所属の、シャーロット・ジェムと申します。シェリア・カイゼリン様に火急の用がありまして、参りました」
門の警備にあたる人たちに告げた。私は自治委員の制服ではあるものの、それ以上の立証はない。ここで通らなければ、侵入するしかないと思っていた。
「――はい。はい、かしこまりました。失礼しました。シャーロット・ジェム様であらせられますね。『ご学友』でもあるので、丁重にと。シェリア様が仰せでした」
「!」
通信で連絡をとっていた警備員さんに、私は恭しく通された。頭を下げて通してもらった。
「……カイゼリン様」
「わんっ」
友人といってくれた。私は胸が満たされる思いだ。リッカも見上げてくる。彼もやる気に満ちていた。
「うん」
何としても乗り越えよう。私たちは気概に満ちていた。
楽団による演奏や、華やかな人々。豪奢な調度品に、煌びやかなシャンデリア。このような時でなければ、心が躍るものばかりだった。
選ばれた者達による、華麗なる宴が開かれていた――悲劇が起こるはずもないと、彼らは優雅に踊っていた。
「もうすぐ……」
私は早歩きで向かっていった。委員の制服とはいえ、ドレス姿ではない。わたしは奇異な目で見られているけれど、今は気にしていられない。
大広間にカイゼリン様はいるはずだ。彼女に説明と説得をしよう。今ならば、荒唐無稽な話だろうと彼女は信じてくれるはずなんだ。その後、アルトたちと協力してリヒターさん……真犯人を拘束する。
これならと私は信じた。
「あ……」
広間まで到達した。中心にいるのは、カイゼリン様。そうだね、彼女は無事だ。もうこれで大丈夫だと、そう思えた時。
――私はリヒターさんを見つけた。彼は口だけでこう告げた。
『あなたであっても――邪魔はさせません』
突如、迎賓館の灯りが一斉に消された。場は騒然となった。
「!」
が、暗闇は一瞬のこと。すぐに照明は灯された。来賓客たちが安堵する中、私たちはすぐに異変に気がつく。
「カイゼリン様、それに……!」
「わんわんっ! ……がるるるるる」
――カイゼリンとリヒターがいなくなっていた。
「シャーロット! リッカ!」
アルトがすぐに駆け寄ってきた。彼は私たちの無事を確認したあと、カイゼリン様が消えた方を見ていた。
「……だよね。犯人はアイツ。そうでしょ?」
「……うん。そうだよ、アルト」
直接言ってはいないものの、アルトは状況からして判断した。私もそうだと頷く。事情を知っている私たちはともかく、他の人からしてみたら突然過ぎることだった。
「――はい、私はこの学園の教師です。至急、シェリア・カイゼリン嬢。そして、リヒト・リヒターの捜索にあたってください」
事情を知る一人、モルゲン先生が警備に要請をかけていた。場の鎮静化も図っていた。パニック状態も収まりつつはある。でもその流れで先生が陣頭指揮を執ることに。
「……あとで、合流する」
「はい」
先生を残して、私たちは救出に向かうことになった。
0
あなたにおすすめの小説
彼氏がヤンデレてることに気付いたのでデッドエンド回避します
八
恋愛
ヤンデレ乙女ゲー主人公に転生した女の子が好かれたいやら殺されたくないやらでわたわたする話。基本ほのぼのしてます。食べてばっかり。
なろうに別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたものなので今と芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
一部加筆修正しています。
2025/9/9完結しました。ありがとうございました。
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
転生したら、乙女ゲームの悪役令嬢だったので現実逃避を始めます
山見月あいまゆ
恋愛
私が前世を思い出したのは前世のことに興味を持った時だった
「えっ!前世って前の人生のことなの。私の前の人生はなんだろう?早く思い出したい」
そう思った時すべてを思い出した。
ここは乙女ゲームの世界
そして私は悪役令嬢セリーナ・グランチェスタ
私の人生の結末はハーッピーエンドなんて喜ばしいものじゃない
バットエンド処刑されて終わりなのだ
こんなことを思い出すなら前世を思い出したくなかった
さっき言ったこととは真逆のことを思うのだった…
聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!
碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった!
落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。
オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。
ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!?
*カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
単純に婚約破棄したかっただけなのに、生まれた時から外堀埋められてたって話する?
甘寧
恋愛
婚約破棄したい令嬢が、実は溺愛されていたというテンプレのようなお話です。
……作者がただ単に糸目、関西弁男子を書きたかっただけなんです。
※不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる