春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第二章

共に突入――

 広間を出ると、空気は一様に変わっていた。豪華ながらも品があった内装が変化していた。黄金の壁が蠢いている。監視されているようで落ち着きのないものだった。

「は、なにこれ……」

 あまりの薄気味悪さに、アルトも引いていた。それでも急ごうと前を向くも。

 ゆらりゆらりと、異形なる存在が現れてきた。私は目を凝らす。
 彼らは――自治委員だった。各々が武器を構えていた。中にはカイゼリン様を慕っていた委員もいて、今は意思を無くしているかのようだ。彼らが一斉に襲いかかってきた。

「イインチョウノ、イインチョウノジャマヲスルナァァァ!」
「……!」

 かつて私を殺めた相手。それでも、今は慄いてもいられない。構える。

「通してもらいます……!」

 私は襲いかかってきた委員の一人を凍らせた。そうだよ、怖れている場合じゃないの……! 私は応戦しながらも、道を切り開いていく。

 増殖するかのような、遮る者たち。私たちの行方を遮るのは、委員に限ったことではない。この人たちはいわば――リヒト・リヒターの狂信者だった。
 これだけの人数を魅了する彼に畏怖しつつ、キリがない状況でもあり。こうしている間にも、カイゼリン様は、『彼』は……!

「……シャーロット、リッカ抱っこしといて?」
「う、うん」

 突然の提案だね? よくわからないけれど、私はリッカを持ち上げた。さらに、まとめて担ぎあげるのはアルト……!?

「アルト!?」

 アルトは蹴散らしながらも、突っ切っていく。抜けた先で、私たちを下ろした。

「……シャーロット、委員長を助けてあげて。俺は君を信じてる」
「!」

 アルトは背中を見せた。彼一人で対処する気というの……? 一般人の集団ではなく、武装集団と化していた。多勢に無勢でもあるのに……それでもアルト、君はは一人で戦おうというの。

「――それで、俺も信じて。ヤらない程度にヤるからっ!」

 そう宣誓したアルトは、突進していった。武器を強奪して、相手を気絶させている。

 そう、そうだね……アルト。お互いに信じよう。

「……うん、お願い」

 私も背中を預けるように――アルトから背を向けた。ここは彼に託して、リッカと共に駆けだしていく。




「……なんか、ここさっきも来た気がする」

 私たちは迎賓館内を走り廻っていた――おかしかった。外観からしても、ここまで広いものではない。なのに、未だにカイゼリン様のところへ辿りつけなかった。

 まるで――迷宮の中かのようで。

「……つけた印は残っているのに」

 目印にと黄金の壁に刻んでいた矢印。それはちゃんと残っていた。それなのに、こうも彷徨う羽目になってしまうなんて……。

「クンクン」

 リッカはなにか匂いを嗅いでいた。

「はあはあ……」

 カイゼリン様を見つけて終わりではない……真犯人も捕らえて、止めないと。
 その為に私は魔力を温存していた。自力で走り回ることになった。ぐるぐると途方もなく彷徨っている。この永久に続くかのような――。

「クンクンクンクン」

 リッカはまだ匂いを嗅いでいた。リッカはワンと吠えた。

「リヒターの匂い、近いよ!」
「え……」
「僕、匂い辿ってたんだ。シャーリー、もう少しだよ!」
「リッカぁ……!」 

 もう……お利口リッカ! そうなの、匂いで辿っていたんだね! 私はひたすら感激していた。






 リッカの先導に、私もついていく。そうしてやがて。

「わんわん!」

 リッカがある部屋の前で立ち止まった。『シェリア・カイゼリン』の表札――彼女の部屋だった。この部屋なんだ、この部屋に彼らはいる。

 ドアは施錠されていなかった。あのリヒターとしたことが、だった。

「……」

 それだけ追い詰められていたのかな。他にも彼の心情的な何かがあったのか。ただ、今は好都合とだけ、私はそう受け取ることにした。

 私は勢いよく扉を開けた。リッカと共に突入した。





「……シャーロット?」
「あああ……」

 荒らされた部屋。床に座り込んで泣きべそをかいているカイゼリン様。彼女は窓際まで逃げていた。それ以上は恐怖のあまり体が動かないようで……。

 刃物を持って立っているのは……リヒターさん。彼は私に気がつくと振り返った。

「ああ、シャーロット。来てしまったのですね――」
「……っ!」

 そこからはさらに勢い任せだった。

 白いモフモフが、リヒターさんの顔面めがけて飛び立った。

 私もリヒターさんに突進して、彼に馬乗りになった。彼の手足を氷の魔力で拘束した。

 直後、私はカイゼリン様目掛けて氷の魔力を放つ。築き上げられたのは、氷の壁――カイゼリンを守る為のもの。

「わんっ!」

 リッカはカイゼリン様の傍へ寄った。泣きじゃくる彼女の前に立つ。

「……はあはあ」

 これで……魔力を使い果たしてしまった。私は息切れを起こしながらも、リヒターさんを見た。突然の乱入に目を見開いていたリヒターさん、彼は――笑んでいた。

「これはこれは。――随分と過激なことを」

 リヒターさんは拘束されているにも関わらず、悠長なものだった。私をまじまじと見る余裕まであるときた。

「……ああ、そうですね。私は敗北したのでしょうね。ただ、諦めません。私の願いは消えませんから――シェリア・カイゼリンに消えてもらうまでは」
「ひいっ!」

 氷の壁の向こうでカイゼリン様が叫んでいた。リヒターさんの本気が彼女にもわかっていた。

「……うん」

 たとえ今回防げたとしても、この人は諦めはしない。今日が無理だったら、それが出来得る日まで。そうやって諦めないんだ。

「……あなたこそが、囚われていたんだ」

 私はそうやって言葉にして――すっと腑に落ちたんだ。

 リヒターさんはずっと囚われたまま――リヒターにも、リヒトにもなれない。

 ただの殺人者のままなんだよ、このままだと……。
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