春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第二章

あなたを解放します①

「ん……」

 目を覚ましたのは鳥籠の中だ。いつもの夢の中。

「おはようございます」
「リヒターさん……?」

 寝転ぶ私を見るのは、立膝をついたリヒターさんだった。私は寝ぼけた眼で彼を見た。

「あえたね……リヒターさん」
「はい、シャーロット」

 鳥籠の夢にリヒターさんがいた。うん、あえた。

 私はゆっくりと体を起こし、鳥籠の形状を確認した。いつもの鉄製のものに戻っていた。巨大化していた錠前も元のサイズだ。ただ、黄金色のまま、伸ばされたアームは規則的に動いていた。

「あなたが寝ている間に観察しておりました。鳥籠に囚われているあなたは、最初危機だと思っていました。ただ、この鳥籠に害意はないようです。あるとしたら」

 ――執着か、そう告げたリヒターさんも感じ取っているのかな。

「……」

 無言のリヒターさんの視線は、黄金色の錠前へ。手の届く位置にある、彼に近しいと思えるそれだった。
 それに躊躇わず触れようとする彼、私はぼんやりと見ていた。そこでハッとする。

「ま、ま、待って。リヒターさん、待ってください」

 アルトの時もそうだった。その錠前に触れた途端、彼は『ある日々』の記憶が蘇っていたんだ。その後の様子からして覚えてはいなさそう。うん、覚えていない。覚えていないんだ。でもね。

「どうしましたか?」
「……それ、触らなくてもいいんじゃないかなと。触る必要がないかなって」
「そうですか」

 リヒターさんは触る手を一旦止めてくれている。私はそうそうと引きつり笑いをしていた。

「……シャーロット。そう言われると触りたくなるものですね」
「ああっ」

 天邪鬼かな、天邪鬼なのかな!? リヒターさんは遠慮なく触れた。

「……!」

 リヒターさんが触れた途端――そのまま立ち尽くしていた。ああ……アルトの時みたく、映像でも流れていて……あの日々の……!!

「……はい」
「……?」

 リヒターさんはそれだけ言った。リアクションが薄い? な、なんだぁ、違う映像だったのかな? 私はそうして安堵するも。

「……まあ、そうするでしょうね。私なら」

 リヒターさんの顔は真っ赤に染まっていた。例にもれず、『あの日々』の映像を彼は目にしてしまったんだ……。

「……ああ、まただ」
「ねえ、シャーロット」

 ただただ気まずい私に対し、リヒターさんは声をかけてきた。

「あの日々の私は、ありのままであなたを愛していました。あなたも幸せかと思ってましたが――こうしてここにいることが、答えですね」

 切ない表情ながらも、自分はわかっているのだと。リヒターさんはそう言葉にしていた。
 それは……あなたの言う通りなんだ。あの日々は確かにしあわせだったけれど。でもね。

「……うん。私は、あの未来は望めなかった」
「ふふ、はっきりと言ってくれますね。そうですね、あのままなら、私はどんな姿を見せていたことか。これで良かったのでしょうね」

 リヒターさんは可笑しくなって笑っていた。彼は笑顔のままだけれど。

「……あなたを苦しませていました。申し訳ございませんでした」

 笑顔ながらも、寂しそうな顔も覗かせていた。

「ああ、その位置なら大丈夫そう。そのままでお願いします」

 私にその場で留まってもらってほしいの? 私がそうすると、彼は頭を下げた。彼の手にはハンマーがあり、それを握った。

「あなたを解放します」

 ――美しい所作だった。
 リヒターさんは黄金色の錠前を叩き割った。破片が砕けて飛び散った。黄金色の飛沫が、さらさらと消滅していった。

「ええ、これで良かったのです……」

 その様を眺め、リヒターさんはそう呟いていた。そして、何事もなかったかのように、私に向き直っていて。

「私の分はもうご心配なさらず。他のは……ええ、他の方でしょうね。あなたも難儀なものですね」
「ははは……」

 私は笑うしかなかった。アルトやリヒターの例もあれば、誰かからと考えるのが一番自然だった。

 得体も知れない執着心がまだ、私を囚われの身とさせているんだ……。
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