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第二章
あなたを解放します②
「では、シャーロット。次会える時は……ああ、自首でしたね」
「自首……」
女神像を壊しただけで即死の世界で……自首。自首した先に、リヒターさんの生は許されるのでしょうか。
「……ええ、ご心配には及びません。きちんと罪を償ってきます」
殺人未遂でも立派な罪だ。犯罪には容赦のない、この国。リヒターさんの末路はおそらく――。
「あ……」
リヒターさんもそれがわかっている、自身の結末をわかっているんだ……その先の末路はもう――。
リヒターさんの目に宿る諦観。私は……私は。
それは嫌だ。
「私は諦めたくない。起きたら、カイゼリン様にお願いしてきます。国にだって直談判してでも。あなたが、リヒターさんが生きる未来だってあるって信じてる」
「シャーロット、それは……」
無謀な話だと、リヒターさんは言おうとしてるよね。私だって百も承知だよ。
「私は欲張りだから。あなただって生きていて欲しい――いつか、リヒトさんに戻れる日まで。生き延びようよ?」
「……私は」
リヒターさんは俯いていた顔を上げた。私は諦めないと、目でも強く訴える。彼はその目を見ていた。
「……私はね、その目に弱いんです。私にも悪あがきさせてください」
「リヒターさん!」
リヒターさんの目にも光が戻った。私も笑顔になった。
「明日から、がんばりましょ……」
眠気が訪れてきた。次目覚めた時は、朝を迎えることになる。まだまだひと踏ん張りだね。
「……眠る前に一つ、よいでしょうか」
「はい……」
横になる私に向けて、リヒターさんから。彼はしばらく言葉に迷っていたけれど。
「私達の始まりは歪でもありました――次こそは初対面から始めましょう。私はもう、あなたを困らせたくないのです。自分勝手な思いのせいであなたのことを……」
「リヒターさん……?」
リヒターさんからの懇願だった。懺悔をしているかのようでもあった。
「……そうですね。初対面からですね。よそよそしくて、長い沈黙も辛くて。そんな私達でしたから」
「はは、そうですね……それが、いいんだ」
リヒターさんは自嘲するように笑っていた。
「あなたを知って、あなたと触れ合えて。しあわせな日々でした。身勝手な私をお許しください。これは自身に対する罰でもあり」
――戒めでもあると。リヒターさんはそう思っているんだ。私は……。
「ありがとうございました――おやすみなさいませ、ジェム様」
「おやすみなさい……」
リヒターさんの心地の良い声を聞いていると、どんどん眠りに落ちていきそう――。
「……シャーロット」
私の名前を呼んでいた。その声も好きだったよ……もう聞くことはなくなるけれど。最後になる、シャーロットって呼ぶ声。
その表情も、眼差しも。私たちはもう……あの他人行儀な関係になるのだから。ならね、私はもう少しだけ、もう少しだけでもって。その姿を目に映しておきたくて。
「……私は出直してきます。まずは生き抜いて、罪を償って」
リヒターさんはそこらに落ちていた金属片を拾い上げた。錠前の断片なのかな……?
「――いつの日かまた、『リヒト』と呼んでもらえるように」
座り直したリヒターさんは、金属片を上に掲げていた。眩しそうに見つめていた――。
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