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第二章
掃除ときたらこの男
「――いやぁ、シャーロットさすがだわー。さすシャだわー。部屋綺麗だね、綺麗綺麗。シャーロットも綺麗だし……とか言っちゃって!」
大晦日の朝、さっそくアルトがやってきた。朝っぱらから絶好調だった。ここぞとばかりに浮かれもいるようで……テンションが高い高い。
大掃除を手伝う気できたアルト。でも昨日の時点で私が終わらせていたので、褒める側に回っていた。座るように言っているのに、彼はなかなか座ってくれない。こうして歩き回っているんだから。
「うん、綺麗綺麗……」
アルトが一点を見つめていた。私はドキリとした。
「汚れとか気になったりしてる? 言ってくれていいんだよ?」
私は朝食の皿洗いをしつつ、不安になっていた。
「ううん? 全然? 綺麗綺麗」
アルトはどこか目が泳いでいた。これはあれだね……彼が気になる汚れがあったんだ。
「……」
私は思った。アルトは相当な綺麗好きなのだ。彼と付き合う人は、同じくらい綺麗好きの方がお互い良さそうだと。
「……出た。他人事の顔」
「!」
台所までやってきたアルトが、私の顔を覗き込んできた。不満そうに口を尖らせてもいた。
「ま、俺も細かいからね。そこはね、性分だからね。つか、俺が全部やりたいなぁ。シャーロットのこと全部……」
アルトは私の背後に立つと、シンクに手をついた。私を覆う形となっていて。
「皿洗いだってそう。君の手が荒れてほしくもないからさ。こうして全部やってあげたいの、君だけなのに……どうして、他の子とって考えるのかなぁ?」
「……」
アルトの吐息が耳にかかる。免疫がないこっちとしては、たまったものではない。それでも。
「……うん、わかった。それじゃ、アルトが気になったところお願いしていい? 雑巾、あそこにあるから。水はもう表に汲んだのがあるから」
気持ちをしっかりもって、と。私は下を潜り抜け、そこらにあった雑巾を指で指した。
「ええー……なんか、回避上手くなってない?」
アルトはしょげながらも、清掃に入ろうとしていた……ふう。
「……」
「アルト?」
またしてもある一点を見ていた。そんなに気になるところがあるもの……? 私がへこんでいたところ。
「アレ、なに」
「あれって……!」
目つきの悪くなったアルトが指しているのは、例のハチミツ瓶だった。
「……普通に買ったやつだよ? 可愛いなって?」
今度は私の目が泳いでいた。アルトにはもう疑惑しかない。
「あれ、壊していい?」
「だめ」
「じゃあ中味捨てて、瓶も捨てよう」
「だめです」
「じゃあ、誰かにあげるとか。兄貴にでもあげなよ」
「あげません」
アルトはどうしてもこのハチミツを遠ざけたかったようだ。うん……料理をする先生にあげる手もあるけれど。
「……」
贈り物なのだから。そうするのは私としても、気が進まなくて……。
「……うん。食べ物なんだし。開ければいいよね。おやつに食べようか」
「……」
「スコーンとか。うん、そうしよう」
「……」
おやつに使った後は――基本的に閉まっておこう。私はそうすることにした。
「……俺は待っています。シャーロットが俺のご機嫌をとってくれるのを。ご期待のアレをしてくれるのを!」
あとはアルト。彼の機嫌をとることにした。
「わかった。アルトのにもかけてあげるね」
「……うん! 期待していたのと、ちょっと違う! でも、かけてはほしい!」
機嫌は直ってくれたようで。アルトはスコーンを作ると張り切っていた。
「俺、頑張って作るからさ。あとで、あーんとかしてくれないかなって……?」
……乙女が私をチラチラ見ていた。乙女だなぁ……。
私にはハードルが高かったので、申し訳なさそうに遠慮しておいた。アルトはガーンっとなっていた……ごめん。
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