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第二章
喜ばしい訪問者達
家の呼び鈴が鳴った。来客だろうと、私が対応しようとすると。
「俺も行く」
アルトが可愛いエプロンをつけたまま、一緒にきてくれることに。
「……うん、ありがと」
「ん」
今は大晦日前日でも、真夜中でもない――殺人の依頼者、金糸雀隊。彼らが来ることだってない。だとしても、アルトは気を遣ってくれたんだね。
「はい、どちら様でしょうか」
アルトは来客ということで、ドア越しに普通に応対していた。
「――失礼いたします、リヒターです。こちら、シャーロット・ジェム様のご自宅でお間違いないでしょうか」
訪問者はリヒターさん? 彼は確か、年末年始はカイゼリン様につきっきりのはずだった。何はともあれ、来てくれたのなら。私は家に入ってもらおうとしたけれど。
「……違います。お引き取りください。帰って、どうぞ」
「アルト!」
普通の対応がどこかいった。
「その声はジェム様ですね。ご在宅でしたか」
「うん、いるよ。ごめんね、今開けるから」
アルトがまた口を尖らせているけどね、私の方がそうしたかった。『違います』、じゃない。『お引き取りください』、じゃない。『帰って、どうぞ』、じゃない……!
「……いや。ごめん、ちょっと待ってて」
リヒターさんが来るというのなら、例のアレどうしよう? ハチミツ瓶を片付ける必要、出てくるよね? 今のリヒターさんは何のこっちゃだとしても……!
「……」
アルトがじっと見ている。じいっと見ている。私の挙動をあますことなく見ていた。
「……」
私はその視線にも負けず、ハチミツ瓶をいつもの棚にしまっておいた。
「お待たせ、リヒターさん――」
扉を開けるとそこにいたのはリヒターさんだけではなかった。一緒にいたのは――。
「ごきげんよう、シャーロットさん」
「カイゼリン様! ごんにちは」
リヒターさんはカイゼリンと共に訪れていた。というか、彼女の付き添いのようだ。
「突然の訪問でごめんなさいね。大晦日はゆっくりすることにしたの。そ、それで……お友達の家に遊びに行きたいなって」
「ええ、どうぞ。ぜひ、上がっていってください」
カイゼリン様は顔を赤くしながら、指でもじもじしていた。友達、という言葉。私も顔を綻ばせた。友達かぁ……えへへ。
コートの下はお二人とも私服だった。委員服ではない二人の姿は新鮮だった。上品で洗練された装い、素敵だなぁ……。
女子たちが楽しそうに家に入るなか、男子同士はというと……耳に入ってくるなぁ。
「アルト様……ご自宅で合っておりましたが」
「違いますー。『シャーロット・ジェムの魔法屋』が正解ですー。はい、ニワカ!」
「ああ、屁理屈というものですね。勉強になりました……ああ、そうだ。ジェム様」
アルトの相手を適当に切り上げ、私の元へとやってきたリヒターさん。
「こちら、お口に合うかはわかりかねますが。色々作って参りました。ぜひ、召し上がってください。もちろん、アルト様も」
「くっ……」
相手の余裕ぶりに、アルトは面白くないようだった。
「あと、リッカ様のも用意しておりますので」
「いいの? 色々ありがとう。リッカも喜ぶよ」
私は両手で受け取ると、台所に持っていた。包みにあるそれは、ご飯の時までのお楽しみだね。良かったね、リッカ? 楽しみだねぇ? うん、そうだね。ちゃんとお返しもしないと。
「リヒターさん。今度、何かお返しするから――」
「シャーロット、めっ! この男にそういうこと言っちゃだめ! ほら、ムッツリなんだから。あと……何でもする、これもダメ。ほんと気をつけて!」
割り込んできたのはアルト。私に釘をさしてきた。またしても人をムッツリ呼ばわりをしているし……しかも本人の前で。
「アルト様。あなたでしたら、いかがでしょうか」
リヒターさんは無表情のまま、アルトに問いかけていた。
「彼女からのお返し。何でもするというお言葉。心が沸き立つことはないということでしょうか。そう言われる機会をも奪われたら、どう思われるでしょうか」
「あー……心沸き立つし、イラってくるわー」
「ご理解いただけて何よりです」
「……だからって、リヒターが言われていいわけじゃないんで」
この二人は険悪なまま……ソファに座ってそわそわしているカイゼリン様が可愛いものだった。
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