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第二章
楽しい夕ご飯のあとに
「そうそう、ジェム様。お気遣いありがとうございます。ただ、こちらは私がそうしたかったに過ぎないのです――一昨日の朝食は、先生主導になってしまいましたから。今度こそ腕を奮いたくなったのです」
「そうだったんだ……」
モルゲン先生が作ってくれた朝食もまた、美味しいものだった。対抗意識でもあったんだね。それなら納得したかな、プライド的な何かなんだね。
「……まーた、俺の知らないところでイベントが発生してる」
アルトは肩を落としていた。
「ふわあ……にぎやかだねー。アルトでも来たの?」
階段から下りてきたのは、寝ぼけ気味のモフモフで……。
「!」
「!」
私はアルトと目を合わせた。私たちはまずいと思った。このモフモフは来客に気づいてなくて……!
「!」
……リッカは今になって気がついた。まんまるお目目をさらに大きくした。
「……わ、わん!」
やらかした感満載の犬は、螺旋階段で立ち尽くしていた。今更の犬語。
「きゃあああ、ワンちゃんがシャベッタァァァ!!」
ソファから立ち上がったカイゼリン様が絶叫していた。歓喜の表情そのものだった。
「……まあ、シェリア様が喜ばれておりますので。特に深く触れたりは致しません」
リヒターさん淡々とした反応だった。私たちはホッとした……。
「……」
――そしてリヒターさん。シェリア様呼びに戻っていた。私は思うんだ、これは強制ではないって。お二人の新しい関係性ならでは、そうなんだって。と、私がしみじみとしていると。
「ああ、ああ! やっとお会いできましたわね。さあ、ワンちゃん……いえ、リッカちゃん! いらっしゃいな!」
カイゼリン様が両腕を広げていた。リッカもそこに飛び込んでいく。
「ああ、モフモフですわぁ……」
カイゼリン様はリッカを堪能しきっていた。年末の疲れも吹き飛んでいるようだ。わかる、わかります、カイゼリン様!
「あの、もしよかったら。夕ご飯も召し上がっていきませんか? リヒターさんの手作りもありますし」
「まあ、いいのかしら! ええ、リッカちゃんのお散歩は任せてちょうだい!」
「はい、お願いします」
一部険悪ではありつつも、和やかな時間は過ぎていく。
リッカの散歩の時間になると、カイゼリン様はリヒターを連れて一旦家を出ていった。残されたのはアルトと私。
「……シャーロットは良かったの」
「アルト?」
小声でもらしたのはアルトだった。彼はいいづらそうにはしている。
「リヒターのこと。君があいつと添い遂げなくて良かった……良かったけどさ」
アルトは色々と気づいているんだろうな……そうは思っている。
「……それは、そうだね」
私もそう答えて、アルトも何度も頷いて。
「そうそう。そうだよ。そうなんだけどさ……焦るなぁ」
――それでいて遠い目をしていた。彼の目が微かに赤く光っていた。
その後、夕飯の時間となった。
リヒターさんの料理は絶品であり、見栄えや栄養バランスまで見事だった。張り合うアルトも、ガチで作ってきていた。いつもの凝った作りの料理も負けてはいなかった。
リッカのごはんも豪勢になっていた。どちらが美味しいかという勝負にまで及んでいて。どっちも美味しいと笑う天使犬の前に、二人の戦意は喪失していた。平和な世界がそこにあった。
門限を破るということはなく、三人は早目に帰ることになっていた。例外などなく、アルトもだった。まだ帰りたくないと泣き言をもらすアルトを、委員の二人は容赦なく連れて帰ることにしていた。
「うう、いいんだ……シャーロットと大晦日過ごせたし。そうだ! 良いお年を!」
アルトは『言えた!』と得意になっていた。彼がずっと言いたかった言葉だったんだね。
「ふふ。うん、良いお年を」
私も同じ思いだよ。新しい年を迎えられる。喜ばしいことだった。
「よくわからないけれど、素敵な響きだこと。では、シャーロットさん。また来年もよろしくお願いしますわね」
「はい、来年もよろしくお願いいたします」
「ほほほ。一緒の委員活動、楽しみにしておりますわ」
「……はい」
私はその言葉を考えた。委員会での目的は果たした私、これからどうしよう。
大変だったし、楽しかったりもした――冬花の高校生活からしたら、体験できないことだった。
私は委員会に残るべきなのだろかな……私はもう。
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