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第二章
国民的歌手殺害事件へ――
「……!?」
――私は寝ていた体を起こした。不吉な予感に私の体は震える。
何が、何が起こるというの。
「がるるるるるる」
「君まで……。何があるというの……」
あれだけぐっすり眠っていたリッカが――即座に立って唸り続けていた。
そこで鳴り響くのは、拡声器による声――絶望を知らせるものだった。
『――ルイ・ゼンガー氏、殺害事件。犯人はシャーロット・ジェム。発見次第、ただちに報告せよ』
「え……」
その名は存じている。存じているだけ、面識なんてない。会ったこともない人を殺したと告げてきた。『いつもの』濡れ衣だ……!
その声にはまだ続きがあった。
『生死は問わない』
「生死は……」
生きたままか、殺しても構わないか。それは――死刑宣告も当然だった。
来る。あの人達が来る。そう、今も。
鍵をかけた玄関は乱暴に開けられ、複数の螺旋階段を駆け上げる音――私にとっての死神は彼らだ。ううん、私は抗ってみせる。大人しく殺されたくたまるものか……!
「君だけでも……!」
私は窓を全開にして、リッカだけでも逃がそうとする。この子は今回は何も関係ない。かといって、見逃してくれるような慈悲深さ。それがあったならどんなに違っていたことか。
「お願い、逃げて――」
逃げようとしないリッカは、私を守るように立つ。お願いだから、リッカ……!
「――」
金糸雀隊の一人が、何かを呟いた。それは私には届かないもの。
――気づいた時には、目の前に血しぶきが飛び散っていた。貫かれたのは私の心臓。ああ、まただ。
血にまみれたこの目に、泣きそうなリッカの姿が映った――どうか生き延びて。そう私は願うも。
ここで意識は途切れた。
「!」
ここは鳥籠の夢。また殺され、また戻ってきたのだ。
「シャーリー……」
リッカが力ない声で私を呼んだ。
「……大丈夫だよ、リッカも私も生きてる」
「うん……」
リッカの前では笑ってみせるも。私はというと……残った感触に震えていた。まだ胸を突き刺さされた感触が残って、消えてくれない。
「……しっかりしないと」
死の恐怖に怯えながらも、自分達は乗り越えてきたではないか。また、力を合わせて乗り越えていけばいい。
「……」
私の手は震えたままだ。これ以上震えるな、と自身を叱咤した。
「――ルイ・ゼンガー」
「僕、知ってる。春の女神様に歌ってくれる人」
「うん、そうだよ」
ルイ・ゼンガー。彼は国民的人気歌手だ。春の女神の祭典での歌い手も務めたことがある。今年、いや来年となってしまったけれど。来年も彼が有力視されていた。
その前にあるのが――大晦日の式典。それはルイ・ゼンガーさんが本決定だった。
「……」
ルイ・ゼンガーさんとは接点はない――でもお子さんの方なら。
『リナ・ゼンガー』なら学園の生徒だった。そちらから接点をもつことにした。もたなければ、また犯人にされてお終いだから。
「…ふう、わからないことばかり」」
それでも私は顔を上げた。リッカもそうだ。また訪れる繰り返しの日々に向けて、今は体を休めることにした――。
囚われの少女は、今宵も鳥籠の中で眠る。閉じ込める錠前は、逃してなんてくれない。
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