春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第三章

プロローグ――染められた日々

 ふわふわの手触り。撫でる手から伝わるのはぬくもり。白いモフモフは今日も、私の側で寝ていた。ぐっすりだね。こうして安心して眠れるの、いつぶりだろうね。

 暗い部屋の中、私は一人考えていた。

 どうしても、考えちゃうんだ。それは――前世の私のこと。


 私の前世は、『皇冬花』って子だった。日本で暮らしている、女子高生。普通だったのかな、ある点を除いて――私は、冬花は教師に恋をしていたから。

 冬花は遊ばれていたって、そういうことだったんだろうね。どこかで信じていた私もいたけれど、先生からの言葉、あの結末からしたら。結局はそういうことだった。

 ――終わりにしよう。卒業式の日にあの人、片桐先生から言われたことだった。

 そこからの私たちは、屋上から転落して命を落とすことになった。私はその時に願ったんだ。それこそ、強い意思で。
 生まれ変わっても――片桐先生と出逢うことはありませんように。

 そう願うしか、なかったんだ。

「……ごめんね。お父さん、お母さん。ごめんね」


 このところね、家族のこと考えさせられる。今の私にはいないけど、前世の私には両親がいたんだ。


 二人を遺して逝ってしまった。それも教師と一緒に。何を言われたのかな。私と先生の噂も知っていたのかな。知らなくても、あんな死に方をしたら。わかってしまうよね。
 私のせいで、二人も色々言われてたとしたら。

「……『ヒナタちゃん』のことも」

 うん、友達。冬花にもね、友達がいたんだ。昔から一緒だった前世での幼馴染。
 その子は『ヒナタちゃん』。すごく明るくて、陽気で。私をいつも引っ張ってくれた子。よく一緒に笑っていた。私といて楽しいって笑ってくれた子。


 私からヒナタちゃんの話をしたこともあった。久々に見かけたよって。元気そうだったよって。私なりに雑談のつもりだった。

 でも、二人はその話を続ける気はなかった。私との話を切り上げて、それぞれの部屋へと入っていった。そんなにかな。そんなに、私の話いらなかったのかな。


「はは……冬花ってなんだろね」

 私は自嘲した。思い出せば出すほど、冬花の人生は何だったのかって思う。

 冬花なりに一生懸命に生きてきたんだ。そこは認めたい。否定したくなかった。でも、あんな醜聞まみれに死ぬことになってしまった。遺された二人のことを思うと。

「ごめんなさい。本当にごめんなさい……」

 私は、あなたたちの期待に応えられなかった。うちの親は厳しかった。でも、それは私がちゃんとしていたら、もっと違っていたのかな。


「……あ」

 暗闇に光るのは二つの目。あの子が起きて、私の方を見ていた。いつも熟睡して起きなかったから、油断していた。声、煩かったよね。

「ごめんね」

 モフモフは首を振って、私の枕元に近づいた。私に体を寄せて、そこで丸くなった。

「……ふふ、ありがとう」

 君は優しいんだ。いつだって、そう。それと不思議でもあった。君といると、私の暗い部分も和らぐというのかな。君は本当に不思議な子だね。


 ねえ、お父さん。お母さん。

 私はたくさん迷惑をかけてきた。困らせてもきた。でもね、やっぱりそうだと思いたい。

 冬花の人生にだって、意味はあったんだって。

 私はね、今違う世界で生きているよ。

 ――氷の力を持つ、小さな魔法屋の店主。シャーロット・ジェムとして。

「……」

 生きているんだ。最初の世界でも不意に訪れた死。それは、転生した後でも続いていた。死が、何度も襲ってくるんだ。
 それでも、私はこの世界で生きている。生き抜いていくんだ。

 あとね。もう二人には届かないと思うけど、これも言わせて欲しい。

 昔はもっと違っていたよね。仲が良かった頃もあったんだ。すれ違ってしまったのもあったんだよね。

 もう届かない。異世界で生きている私は、こうして二人の幸せを祈るしかできない。

 お父さん、お母さん。大好きだったよ。

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