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第三章
寝てる場合じゃない来訪者
家に入ると、私は施錠をした。話しかけてきたのはアルトだ。
「あのさ、シャーロット。そうだよね。みんな、だよね。シャーロットもそう。リッカも。でもって俺も」
「うん、そうだね.。リッカももちろんだけど。あのさ、もう一人――」
「えー……」
えー……って。繰り返しの日々を覚えているのは、君やリッカ、私だけでないでしょう?
「……アインスト・モルゲン先生ね。一緒にね、力合わせようね」
学園の教師である、アインスト・モルゲン先生。アルトの異母兄でもあった。
「はーい……」
アルト、すごい怠そうな返事だね……それでも反対したりはしなくなった。この二人の関係、進展している気もしていた。
「さてと。いつもなら処方、なんだけど」
アルトは元々薬品を求めてやってきていたはず。
「へ? ……あ、そうそう、お薬! お薬ちょうだい!」
「アルト?」
お薬が欲しくて、なんだよね? なんだろ、この『そうだった!』って感じの顔は。
「今、不要なの?」
「いやいや、いるいる。めっちゃいる。でもって、俺は売上に貢献したいんだ」
「その気持ちは嬉しいけど。でも、特に痛みがないなら。無理して買うものではないし。それに、買い置きって言って、買ってくれてたりもするし」
「なら、追い買い置きするし! 何かと入用だというか、入用予定だし!」
アルトはヤダヤダしているけれど、当人は健康そのものだよね。前のように徹夜ってわけでもないし。
うん、お茶だけ出しておこう。アルトにカウンター席に座ってもらうことにした。座った彼の前にお茶を置く。彼はいただきますと口にしていた。
「うん、うまい!」
「良かった」
こんなに美味しそうに飲んでくれる。嬉しいなぁ。
「ほら、君も君も。はい、砂糖とミルクたっぷり……」
「ありがとう」
私も隣に座って飲むことにした。私好みの味、アルトは覚えていた。
「それと……愛情たっぷり。召し上がれ?」
「そ、そっかぁ……」
隣から視線を注がれていた。私はろくな反応ができなかった……それでもアルトは笑顔のままだった。頬杖をついては私の方ばかり見ている……。
「あー……飲んでる飲んでる。俺の愛を味わってるぅ……」
……飲みづらい。すごく。どうしよう。
「……紅茶、美味しいなぁ」
「ふふ、シャーロットったら。照れてる照れてる」
「……あはは」
「ふふふ?」
――時間が長く感じてならなかった。
「えへへ、アルトだぁ……僕もこっちにいる……」
まだ眠たそうなリッカが二階からやってきた。熟睡していたはずだったけど、人の気配が集まってる方に来たんだね。
「リッカ、眠たそうじゃん。まだ寝てな?」
「うん、寝る……ソファで……」
あまりにも眠たそうなワンコに、アルトもそう提案した。リッカは暖炉前のソファで寝ることにしたみたい。ソファにぴょんと飛び乗ると、定位置で寝た。
「アルトもそうしたら? その間に朝食作っておくし」
「……そうしたいんだけどさ。なんだろね? この、今寝るわけにはいかない感?」
「え、わからない。突然どうしたの」
前はすんなりと寝たのに。アルトはこのようなことを言い出していた。
「……」
アルトだけではなかった。寝る体勢に入っていたリッカもまた、ソファで立ち上がっていた。唸っているわけではない。ただ、玄関の方を見ている。
「リッカもアルトもどうしたっていうの」
私一人がわからなかった。リッカの様子からして、緊急事態というわけではなさそう。アルトの方は臨戦態勢だったけれど。
呼び鈴が一回鳴った、それだけ。アルトはさておいて、この明朝にお客様。しかも名乗りもしない。どうしよう、出るかどうか迷うな……せめて名乗ってくれれば、なんだよね。
「わふっ」
リッカが玄関まで移動し、そこでお座りをしていた。しっぽを振っていた。
「私、対応してくるね――はい、どちら様でしょうか」
私がドア越しに応じることにした。
「……?」
先方からの反応は無い。もう一度呼びかけてみても、同じ。
「イタズラ……じゃないか。シャーロット、下がってくれる? 俺が出るから」
いつの間にかやってきたアルトが、私を後方へ。そして、彼がドアを開けた。
「朝っぱらから、何? この子には俺がついてるんで――」
アルトは威嚇していた。このような時間に何事だ言わんばかりに。
「ああ……」
入口の前にいる青年は、威圧しているアルトのことは視界に入っていなかった。胸をつまらせるように、泣きそうな彼が見ているのはただ――私の方で。
「……言葉が詰まりまして。名乗れませんでした」
感極まっていたからこそ、名を告げることが出来なかったということ?
「……リヒターさん?」
「リヒター!?」
アルトと同時だった。私たちは思わぬ人物の登場に驚いていた。
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