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第三章
挟まれた朝食
「ぐー……すぴー……」
美味しい朝ごはんを食べ、お水を飲んで、リッカはご満悦だね。寝られる時に寝るのが犬、ソファで眠りに入っていた。
さて、私たちも食べよう。と、カウンター席に着いたのだけれど。
「いただきまーす。いつもながら美味しそう。やっぱ、愛が込められてるから?」
右隣にはアルト。
「いただきます。となりますと、私の愛も含まれることになりますが。よろしいのでしょうか」
左隣にはリヒターさん。
「……いただきます」
私は二人に挟まれる形になった。強制的に真ん中に座らされた。今からでも端の席に行ってもいいかな……? 険悪な雰囲気の中心、宥めるだけのスキルが私にはなくて……!
「……受け取る側の自由なんで。リヒターからは食材さんの尊さと栄養素くらいじゃない? もちろん、シャーロットからは、あ、あ、愛というか」
「そこまで言っていただけたのなら、感無量です。私の料理は避けられると思っておりましたから」
「食べ物さんは悪くないから。つか、どんなイメージなの。腹立つわー」
私を挟んで二人は言い合いは続く。うう……胃痛が。
「……」
ここでリヒターさんの料理を誉めようものなら、アルトは対抗意識を燃やすだろうし。では、アルトのも美味しいと述べるとなると、リヒターさんが面白くないかもしれない。
表情の変化が乏しく、わかりづらいのがリヒターさん。それでも付き合っていく内に、微々たる変化もわかるようになってきていたから。
「ええと……」
私なりにも、どうにかこの雰囲気を払拭してみせないと! せっかくの美味しいご飯なんだし。
「……うん、朝食はお米だよね。お米、美味しいよね」
私は無難な話をすることにした……無難過ぎたかな。
「……」
前世や現世の幼馴染達くらい、話術に長けていたら……!
「お米大好きシャーロットかわえぇ……。リヒター、心して聞いて? このおうちで米ってすごい貴重なんで。いつもはパンとかジャガイモが主食なんで。有難く食べること! ……あ、シャーロット? いつもの料理も大変有難いからね?」
「ええ、心得ました。そうですね、我が国からしてみれば高級ですからね。輸入頼りですし、量も限られておりますから。有難く頂戴します」
二人の食いつきは意外と良かった。雰囲気も和らいだみたい。私はホッとした。
「とはいえ、ジェム様。ご入学されるのでしたら、食堂もご利用になるかと。米料理もたくさんありますので」
「へえ、食堂にお米あったんだ。気づかなかった。私、見逃していたんだね」
「……ジェム様」
微かに笑っていたリヒターさんが、深刻めいた雰囲気となった。
「……そうですね。あなたは、繰り返されておられるのですから。食堂をご利用されたこともおありでしょうね……私も同伴した時もあったかと」
「……それは」
リヒターさんとの食堂の利用は、確かに何度もあった。最初はカイゼリン様のお昼の世話係として。
それからは、彼との個人的な利用。私の中では鮮明に記憶に残っていても、リヒターさんにはその頃の記憶はないんだよね。
「……」
アルトもそうだったし、リヒターさんもそう。彼に『守られた日々』の中で、どこまで記憶にあるのか定かではないから。彼らが言わない限り、触れない限り。こちらもその話題は避けておきたかった。ましてや――あんな私の姿とか。
「やはり……と、申しましょうか。私は知っていたとしても、限りがございますね。きっと、私の預かり知らないところで――どれだけ迷惑をかけてきたのでしょうか」
……リヒターさんは悔いるようだった。自分が罪を犯した記憶もあって、それ以外でも。彼自身が知らないところで、何かをしでかしていたのだろうと。
「……リヒターさん。それを乗り越えた上で、今があるから。あなただから、罪の意識は消えないだろうけど。今いるあなたは、誰も傷つけてはいない。打ち勝ったリヒターさんだよ」
「ジェム様……はい、承知はしております」
リヒターさんは罪の意識を抱えたまま、これからも生きていく。
「……リヒターさ。俺もそうだから、わかりはする。うん。今はさ、これからのこと考えよ。どこの誰か知らないけどさ、しつこいからさ――この子を陥れようとしてるから」
アルトもそう、過ちと悔いる気持ちを抱えていた。だからこそ、わかる気持ちもあるんだと思う。アルトなりの労わりなんだ。
「ありがとうございます、アルト様」
「ん」
だからこそ、リヒターさんも素直にお礼を言っていた。アルトも短く返した。そうだね、本当にそう。私は口にしていた。
「ほら、大晦日。また、みんなで集まろうよ。その為にも乗り切ってみせよう」
前に楽しく過ごせた時のように。また、その時を迎えたいんだ。
「そうだね、そうしよう」
「はい、かしこまりました」
「すぴー」
彼らも思いは同じだった。誓い、頷いてくれた。
美味しい朝ごはんを食べ、お水を飲んで、リッカはご満悦だね。寝られる時に寝るのが犬、ソファで眠りに入っていた。
さて、私たちも食べよう。と、カウンター席に着いたのだけれど。
「いただきまーす。いつもながら美味しそう。やっぱ、愛が込められてるから?」
右隣にはアルト。
「いただきます。となりますと、私の愛も含まれることになりますが。よろしいのでしょうか」
左隣にはリヒターさん。
「……いただきます」
私は二人に挟まれる形になった。強制的に真ん中に座らされた。今からでも端の席に行ってもいいかな……? 険悪な雰囲気の中心、宥めるだけのスキルが私にはなくて……!
「……受け取る側の自由なんで。リヒターからは食材さんの尊さと栄養素くらいじゃない? もちろん、シャーロットからは、あ、あ、愛というか」
「そこまで言っていただけたのなら、感無量です。私の料理は避けられると思っておりましたから」
「食べ物さんは悪くないから。つか、どんなイメージなの。腹立つわー」
私を挟んで二人は言い合いは続く。うう……胃痛が。
「……」
ここでリヒターさんの料理を誉めようものなら、アルトは対抗意識を燃やすだろうし。では、アルトのも美味しいと述べるとなると、リヒターさんが面白くないかもしれない。
表情の変化が乏しく、わかりづらいのがリヒターさん。それでも付き合っていく内に、微々たる変化もわかるようになってきていたから。
「ええと……」
私なりにも、どうにかこの雰囲気を払拭してみせないと! せっかくの美味しいご飯なんだし。
「……うん、朝食はお米だよね。お米、美味しいよね」
私は無難な話をすることにした……無難過ぎたかな。
「……」
前世や現世の幼馴染達くらい、話術に長けていたら……!
「お米大好きシャーロットかわえぇ……。リヒター、心して聞いて? このおうちで米ってすごい貴重なんで。いつもはパンとかジャガイモが主食なんで。有難く食べること! ……あ、シャーロット? いつもの料理も大変有難いからね?」
「ええ、心得ました。そうですね、我が国からしてみれば高級ですからね。輸入頼りですし、量も限られておりますから。有難く頂戴します」
二人の食いつきは意外と良かった。雰囲気も和らいだみたい。私はホッとした。
「とはいえ、ジェム様。ご入学されるのでしたら、食堂もご利用になるかと。米料理もたくさんありますので」
「へえ、食堂にお米あったんだ。気づかなかった。私、見逃していたんだね」
「……ジェム様」
微かに笑っていたリヒターさんが、深刻めいた雰囲気となった。
「……そうですね。あなたは、繰り返されておられるのですから。食堂をご利用されたこともおありでしょうね……私も同伴した時もあったかと」
「……それは」
リヒターさんとの食堂の利用は、確かに何度もあった。最初はカイゼリン様のお昼の世話係として。
それからは、彼との個人的な利用。私の中では鮮明に記憶に残っていても、リヒターさんにはその頃の記憶はないんだよね。
「……」
アルトもそうだったし、リヒターさんもそう。彼に『守られた日々』の中で、どこまで記憶にあるのか定かではないから。彼らが言わない限り、触れない限り。こちらもその話題は避けておきたかった。ましてや――あんな私の姿とか。
「やはり……と、申しましょうか。私は知っていたとしても、限りがございますね。きっと、私の預かり知らないところで――どれだけ迷惑をかけてきたのでしょうか」
……リヒターさんは悔いるようだった。自分が罪を犯した記憶もあって、それ以外でも。彼自身が知らないところで、何かをしでかしていたのだろうと。
「……リヒターさん。それを乗り越えた上で、今があるから。あなただから、罪の意識は消えないだろうけど。今いるあなたは、誰も傷つけてはいない。打ち勝ったリヒターさんだよ」
「ジェム様……はい、承知はしております」
リヒターさんは罪の意識を抱えたまま、これからも生きていく。
「……リヒターさ。俺もそうだから、わかりはする。うん。今はさ、これからのこと考えよ。どこの誰か知らないけどさ、しつこいからさ――この子を陥れようとしてるから」
アルトもそう、過ちと悔いる気持ちを抱えていた。だからこそ、わかる気持ちもあるんだと思う。アルトなりの労わりなんだ。
「ありがとうございます、アルト様」
「ん」
だからこそ、リヒターさんも素直にお礼を言っていた。アルトも短く返した。そうだね、本当にそう。私は口にしていた。
「ほら、大晦日。また、みんなで集まろうよ。その為にも乗り切ってみせよう」
前に楽しく過ごせた時のように。また、その時を迎えたいんだ。
「そうだね、そうしよう」
「はい、かしこまりました」
「すぴー」
彼らも思いは同じだった。誓い、頷いてくれた。
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