春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第三章

『リナ』と『パパ』


「……おーい、シャーロット」
「あ、すみません……」

 リナさんに夢中で、先生のことを忘れていました……。『いいけどな……』と先生は拗ね気味のようだった?

「リナの撮影が終わったらでいい……もう一度面談室に来てもらえるか?」
「はい、わかりました。私の方でもお伝えしたいこともありまして」
「ああ。またな」
「……!」

 先生はカナリア色の頭を撫でようとするも、その手を下げた。この行為は各方面に怒らられたのもあるけれど。

「……まあ、そうだな。俺の方もセーブしないとだな」

 先生自身も自重することにしたようだった。そう、そうですよね……。

「なーにー、モルちゃんほんとに帰っちゃうんだー?」
「リナ、お前……」

 気が散るといっておいて、リナさんの方から声を掛けていた。それも撮影中に。先生は呆れを隠さなかった。

「アル君によろしくねー! 今度リナとデートしてって、さりげなく頼んどいてー」
「!」

 ――デート。私はドキリとした。アル君。アルトのことだよね? 話には聞いていたけれど、リナさんって本当に彼のことを……。
 取り巻きの人たち、ざわついてはいるものの、公認なのかな……? 猛反発とかはなさそうだった。

「あーはいはい。努力はする。そうだよなー。生徒同士だからなぁ。何も問題はないよなぁ」
「……」

 以前に言われたこと……ここぞとばかりに引用までしちゃって。先生としては、向こうから乗り気ならってこともあって。協力する姿勢を示していた。

「やった、モルちゃん! ありがとねー!」

 リナさんはその場で飛び跳ねた。とても愛らしいもので、そんな少女の純情を平然と利用とするのが……モルゲン先生。

「おう」

 モルゲン先生は片手を上げて去っていく。先生、面談室ですね? 

「……ん?」

 先生が去っていった方向。遠く、目を凝らさないと見えないような距離。そこにいたのは、ルイ・ゼンガーさんだった。彼は立ったままだった。
 学園長室からの帰りに、娘さんを見かけた。それで様子を見ていた、といったところかな。娘の頑張りを見守っている、そんな微笑ましいものと思っていたのに。

「……」

 私はゼンガーさんを見て――背筋が凍る思いだった。
 あれだけ麗しい男性なのに……おぞましい表情をしていたから。
 その表情のまま――リナさんを見ていた。

「……」

 ……娘さんに向ける表情、なのかな。私はどうしても気になってしまっていた。

「……おや」

 ひとしきりリナさんを眺めたあと、彼の視線は私へ。こちらに向かってくる。

「やあ、お嬢さん。さっきぶりだね」
「は、はい。こんにちは……」

 ゼンガーさんは美しい笑みをしていた。私からの視線にも気づいてそうだったのに、一切触れはしない、気にもしていないといった風だった。
 私の存在、ゼンガーさんにとっては心底どうでも良いようだった。彼の意識はすぐにリナさんに向いていた。

「リナ! 頑張っているようだね!」

 嬉々として娘に歩みに寄っていた。リナさんもその声に気づいたけれど。

「!」

 わずかにだった。肩をびくつかせたのは――リナさんだった。

「……もう、パパ? 急に来ないでよ、リナ、びっくりするでしょうが! しかも撮影中! もう、ここカットしてね!」
「あはは、ごめんごめん。つい」

 ……あれ? 今のは私の見間違い?
 そう思えるほど、リナさんは容赦なく父親を怒鳴りつけていた。怒られているのに、ルイさんは嬉しそうだった。

「もう、パパったら!」

 頬を膨らませたリナさん、彼女は撮影を中断させていた。父親が話があるようだと、察したようで。

「ああ、ごめんね? あとはね、大晦日までは滞在するからね。今日もディナーを予約しているから、家族水入らずだ」
「わあ! リナ、とっても楽しみ! ね、パパ? リナのお気に入りの店でしょ?」
「もちろんだよ、リナ」

 リナさんは両手を合わせてはしゃいでいた。そんな娘の肩を抱いて、彼も微笑んだ。リナさんも見事なまでに笑っている。

「撮影、頑張ってね? それじゃ、失敬するよ」 

 ゼンガーさんは腕時計を確認すると、その場を去ろうとしていた。と、その前に。

「――ああ、君達。リナのこと応援してくれているだろう。いつもありがとう。これからもリナと仲良くしてあげてね?」

 ルイ・ゼンガーさんに微笑まれると、ファンたちは色めきだっていた。この人物も大層な有名人、心浮かれるのももっともだった。

「もう、パパ! リナの邪魔をしないでって!」
「ああ、怒られた。それじゃ」

 陽気に笑いながら、今度こそルイさんは去っていった。

「……あんたたちも浮気者。リナがいるでしょうが!」

 リナを差し置いてと、彼女は責めていた。ファンたちは口々に謝る。お決まりの『リナは優しいから』と言って、それから撮影を再開した。

「……リナさん?」

 どこまでも可愛いリナさん。それでもね、私はどうしても気になってしまっていた。
 集中しきれてないようだったから――。



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