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第三章
ゼンガー兄妹
本日の撮影はこれまでのようだった。
「?」
この後、玄関口まで移動していたよね? でもそうはならなかった。
リナさんの気が乗らなかったようだった。撮影が終わるといなや、リナさんは無表情になっていた。
「リナ様?」
「リナちゃん?」
ファンの皆さんだって、さすがに気になることでしょう。リナさんもまずいと思ったのか。
「……うん」
小さく頷き、ファン一人ひとりを見ていた。
「……みんな、今日はごめんね? リナ、明日はちゃんと頑張るから! 時間は今日と同じ。集合場所は玄関ね!」
リナさんは手を振りながら、帰っていった。尊そうにお見送りしていたファンたちも、リナさんがいなくなったら、即解散。私はその様を見て、思っていた。
「……語ったりしないのかな」
彼らの推しはリナさん。せっかくの同志がいるのに、語らないで帰るのも寂しいんじゃ……。
前世はオフ会にも行ったことがないし、ネット上でのファンとのやりとりもしてこなかった。それもあって……こう、強い憧れというか!
「……さてと」
先生を待たせている身だった。リナさんがいない今、残っていても仕方ないよね。推し語りをしている状況でもないじゃない……。
「――あの、失礼します。シャーロットさん、ですよね?」
「は、はい! すみません、私も帰ります」
私以外にも残っていた人物がいた……って、どなただろう? 制服は着ているから、生徒さんではあるのかな?
「こちらこそすみません。騒がしかったでしょう?」
「いえいえ……その、楽しかったですし。リナさんも素敵でした」
確かに……それはそう。私は驚きの連続だった。それでも、リナさんを推す……推したい!この気持ちは本物だった。
「ほっ、そういってもらえるなら良かったです。あ、改めまして。俺、ケイン・ゼンガーです。リナの一個上の兄です」
リナさんのお兄さん? ……お兄さん。
「はい、シャーロット・ジェムです。よろしくお願いします」
話しやすい人だった。この穏やかな物腰もお父さんに似たのかな? お顔とかそっくりだもんね。
リナさんともそう。顔は似ている。似てはいるのだけれど……。
「……?」
どこか違和感もあった。その違和感は断定できないもので。
「ご迷惑とかでなければ、良かったんです」
「迷惑だなんてそんな……こちらも楽しみましたから」
「そう……ですか。なら、良かったです」
兄であるケインさん、彼は私に一礼をして去っていった。私も会釈した頃には、彼は背を見せてしまっていて……。
「お兄さん、いらしたんだ……」
あれ……リナさんに声、掛けてた? というか、いつからいたのかな? ちょっと不思議というか、疑問に残るというか……。
「うーん、ゼンガーさんも……」
息子さんの存在には気づいてなかったのかな? うーん?
謎ばかりの一家だなって、私は思った。
「だからこそ、だね」
明日も催されるっていうし。張り切って参加しないとね。
明日は丸一日、リナさんに密着することになりそうだった。
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