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第三章
女子寮長と男子寮長の邂逅
本日からお世話になるのが、学園の女子寮だ。溌剌とした寮長が迎えてくれる。モフモフ好きの彼女は、いつだって笑顔だった。私も緊張することなく話せる相手でもあった。
「失礼します。編入生のシャーロット・ジェムです。本日よりお世話になります」
「そうなんだ、よろしくねー。待っててね、うちの寮長にも紹介するから」
いつも寮長さんが迎えてくださったけれど、今回は違っていた。女子寮生の方、かな? 見たことない女子生徒だった。
「ありがとうございます」
寮長さんではなかったけれど、この女子寮の雰囲気が良いこと、優しい人ばかりなのは存じていた。挨拶をしたあと、寮生さんの案内で私は入っていく。
吹き抜けのフロアにいるのは、女子寮の寮長さんだ。
「……あれ?」
いつもにこやかな寮長さん、彼女の顔つきが今は険しくなっていた。それは、目の前にいる存在に向けてのことようだ。
「寮長ー。新しい子だよ。だからさ……いい加減、話を終わらせたら? じゃ、私はこのへんで」
案内してくれた彼女は、私を寮長さんに託すと去っていった。正直、このピリつく状況に置かれても困ってしまうというか……。
ううん、ここは話しかけないことには……!
「あの、お話中すみません。編入生の――」
「……あっれー、新しい女の子!? しかも、すげーカワイイ!」
「……あ」
覚えのある声、テンションだった。女子寮長と話していた男子生徒。
彼はサラサラの前髪ストレートヘア、本当に楽しそうに笑う、太陽のような笑顔の持ち主。人との交流も多そうで、さぞモテそうでもある、明るい男子生徒だった。
「……ほら、すぐナンパだ。そんな君の話を飲めるものか」
言い捨てたのは女子寮長さん。話し合いをしていたようだけれど、それが決裂しそうだった。
「えー、そういうこと言わないでくださいってー。オレ、そんな軽くないし、待ってくださいってー」
「……話はまた今度で。私は彼女を案内しないとなのでね」
「まあ、しゃーないっすね。じゃ、また来るっす――でさっ! キミはお名前なんていうの!?」
あっさり引き下がったと思いきや、舌の根が渇かない内に。彼は私に絡んできた。
「あ、うん。私はシャーロット・ジェム。よろしくね。寮長さんもお世話になります。よろしくお願いします」
「ああ、話は聞いているよ。よろしくね。丁度話も切り上げるところだったんだ――いいね、君は自分の寮に帰りなさい」
私の挨拶を受け取りつつも、寮長さんは彼を帰そうとしていた。
「はーい。そうそうオレね、ロルフ・ヴァールザーガー! 男子寮の方で、寮長やってるんだ。一斉ジャンケンで負けちゃってさー」
「ジャンケン……」
ここに来て新たな事実が発覚した。高等部一年で寮長というのは、そこそこ珍しいとは思っていた。そうした経緯があって、彼、ロルフ君は寮長におさまったんだ……。
「っと、帰ります帰ります。じゃ、おやすみー……の前にっと」
あっさり帰ろうとしたと思われたが、そうではなかった。彼は他の寮生達にも話しかけていた。
「――ね? 悪い話じゃないっしょ? ぜったい楽しいからさー。だからさ、キミ達からも寮長さんに話してみてくんない? ……あ、そこのキミ! 話聞いてくんなーい?」
次々とだった。女子寮生の皆さん、満更でもない顔をしていた。 ロルフ君、根回しをしていない? 女子寮長さんの視界内というのに、堂々としたものだった。
「……おっとぉ、帰ります帰ります。じゃ、根回しよろしくねっ」
嵐のようにロルフ君は去っていった。肩を竦めた寮長さんは私に向き直った。
「まったく。ああ、遅くなったね。君の部屋を案内するから。上の階になるんだ」
「はい、お願いします……」
私は先を行く彼女を見た。大分和らいだようでも、不機嫌さも残っているようだった。
「……初日にごめんね。そうだね、君はどう思うかな。こう、あれだ……異性との交流を増やすというのは」
「なるほど……そういうお話だったのですね」
階段を上り、そこからさらに奥の方へ向かう。
「うーん……」
寮長さんは望んでいないようだ。それでも、私のような寮生なりたてにも意見を聞いてみたいようだった。
「……私は、よっぽどじゃないと参加しないと思います。勇気がいるというか……でも」
「そうだよね!」
「ええと……」
振り返った寮長さんは実に嬉しそうだった。そんな彼女に向けて、私は次の言葉を告げていいものか……ううん。
「……それでも。参加したい方もいるだろうなって。強制じゃなければ、悪い話じゃないかと思ってます」
「……ああ、うん、そうだよね。それも一つの意見だ」
目に見えて女子寮長さんはがっかりしていた。といっても、彼女は機嫌を損ねたわけでもないようだ。私の目をしっかりと見ていた。
「シャーロット君。話を聞いてくれてありがとう。私、他の子達にも伺ってみるよ」
「はい、わかりました」
彼女なりに善処はしてくれるようだった。私は微笑んだ。
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