春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

文字の大きさ
188 / 557
第三章

リッカのいない夜……


 話している内に、私の部屋がある階に着いた。そのまま私の部屋の前まで進む。

「……となると、『彼女』にもなんだけど」

 私の隣室の住人。その部屋の前にて、女子寮長さんは構えていた。妙に緊張もしているようだ。

「……」

 私は知っている。自分の隣人はどういった女性か。また、寮長さんがこうなるのも共感できるような女性でもあるかも。それでも知らない振りをしないと、だった。

「大丈夫だよ、シャーロット君! 私もこれでも寮長だからねっ! どんな相手だろうと、積極的に交流しておかないと!」
「おお……」

 輝かしい寮長ぶりだった。私には眩しかった。
 よし、と気合を入れた寮長さん、彼女は隣室の扉を叩いていた。

「……」
「……」

 相手からの反応は無かった。まさかの留守だったようだ。

「……って、留守って。外出でしょうか。門限とかまずいんじゃ」

 私の方が冷や汗をかいてていた。隣人は門限破りというロックなことをしてくれちゃって……!

「そうだね、留守ときたか。この時間とは……ふふふ。豪胆な人物のようだ」

 かえって寮長さんの火がついたのかな? 苦手意識どころではなくなったようで、闘志を滾らせていた。

「――あら? 私の部屋に御用かしら?」
「!?」

 寮長さんの肩に手を置いて、彼女の耳に息を吹きかけたのは――包容力がありそうな艶やかな女子生徒だった。今、戻ってきたばかりのようだった。硬直してしまった寮長さんはそのままに。

「それに……」

 狙いを定めるかのように、彼女は私を見つめていた。

「……」

 クラーラ・メーディウムさん。私と同じ編入生であり、『聖女』として名高いという。繰り返しの日々で会ってはいるものの、私は初対面の振りをすることにした。

「初めまして、シャーロット・ジェムです。編入したばかりになります。お世話になります」
「……ふふ」
「!?」

 クラーラさんは意味深に笑った。私は……捕食される感覚に陥り、ぞくりとなった。

「――それで、寮長さん? お話あったんでしょう? どうぞ入って?」
「はう! ……いいや、私は寮長なんだ。望むところだ!」
「あら、可愛らしいこと。さあ、じっくりお話しましょ?」

 クラーラさんは寮長の肩をそのままで、部屋に押しやった。

「……」

 私は大丈夫だと信じることにした。寮長さんも、クラーラさんも……大丈夫だよね?





 私は部屋に入り、見渡した。快適な空調に、必要なものは一式揃っている部屋。中でもベッドは格別だった。例のベッドも立派ではあるけれど、あらぬことを考えなくて済むから……。

 手荷物を片付けたりして、私は一日を振り返る。
 アルトだけではなく、リヒターさんも記憶を保有することになった。
 入学の手続きで学園長室に赴いたら、今回の被害者ルイ・ゼンガーと遭遇した。

「……それで、リナさんとも接触できた」

 学園のアイドル的存在、リナ・ゼンガーの撮影現場に立ち会うこともできた。明日は、仕切り直しの撮影ツアーが催される。お昼過ぎに行われるんだよね。

「そうだ」

 今の内にクローゼットを開けて、確認しておくことにした。
 明日は制服で参加することにした。指定のコートも手にとる。外での移動には必需品だった。

「謎技術だよね」

 着用者の体型に合わせて変化する制服。デザインに独特さはありつつも、ブレザーとスカートといった定番ものだった。リボンも数色用意されていた。どれにしようかなと眺める。

「……うん、赤と金はやめておこう」

 ある二名を思わせる色だし。気になって手にとったのは、黄色だった。

「近いといえば近いけど。というか、そこまで誰も気にしないよね」

 控えめな色合いの黄色リボンが、私は一番好ましく思えていた。



 それから片付けも終えた。あとは、食堂で夕飯を食べることになるね。

「リッカ……」

 私は愛しの彼の名を呼んだ。本日はアルトのところにお泊りしている。うん、朝にでも迎えにいこう。寂しい気持ちを我慢してだ。

 明日もまだ休日ではあるものの、本格的に動き出していた――。






 翌朝、私は男子寮に向かっていた。到着すると、すでにアルトはいた。リッカをしっかりと支え、安定した抱え方で待機していた彼。

「男子寮には入らせません。なので、出待ちしてみました。散歩帰りだったし」
「ええ……」

 入らせませんって……私は困惑するも、今はリッカの話をすることにした。早朝から迷惑だったかな、っていうのも杞憂で済んだのかな?

「アルト、ありがとう。ほら、リッカいこっか」
「……」
「アルト?」
「……リッカを離したくない」

 私の方はお礼を言って預かろうとするも、アルトは手放さない。こっちがもう一度トライしても、アルトはリッカを手放そうとはしなかった。
 かつて犬が苦手だと言っていたアルトが、随分と変わったものだね……。微笑ましく思いつつも、それはそれだった。

「気持ちはわかるけどね。テスト受けないといけないんでしょ」
「うう……シャーロットが現実をつきつけてくるんだ」

 これからアルトは総テストもある。リッカもワンっと激励していた。『うう……』と、アルトは観念して、リッカをこちらに。

「シャーロット……リッカをお願いね……」
「うん、わかった……」

 リッカを託すと涙目だった。前から思っていたけれど、アルトはすっかりリッカの世話係となっていた。某おばあさんに続き、リッカの保護者ポジションを狙う者はまだまだいるんだね……。


感想 0

あなたにおすすめの小説

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

天咲リンネ
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

男女の友人関係は成立する?……無理です。

しゃーりん
恋愛
ローゼマリーには懇意にしている男女の友人がいる。 ローゼマリーと婚約者ロベルト、親友マチルダと婚約者グレッグ。 ある令嬢から、ロベルトとマチルダが二人で一緒にいたと言われても『友人だから』と気に留めなかった。 それでも気にした方がいいと言われたローゼマリーは、母に男女でも友人関係にはなれるよね?と聞いてみたが、母の答えは否定的だった。同性と同じような関係は無理だ、と。 その上、マチルダが親友に相応しくないと母に言われたローゼマリーは腹が立ったが、兄からその理由を説明された。そして父からも20年以上前にあった母の婚約者と友人の裏切りの話を聞くことになるというお話です。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

自称ヒロインに婚約者を……奪われませんでした

影茸
恋愛
平民から突然公爵家の一員、アイリスの妹となったアリミナは異常な程の魅力を持つ少女だった。 若い令息達、それも婚約者がいるものまで彼女を一目見た瞬間恋に落ちる。 そして、とうとう恐ろしい事態が起こってしまう。 ……アリミナがアイリスの婚約者である第2王子に目をつけたのだ。