春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

文字の大きさ
191 / 557
第三章

リナもね、きっと――


「……ってことなんで、あんたの犬よろしくね。リナのファンはね、待ち望んでいるの」

 リナさん、またしても大きく溜息をついた。嫌そうにしながら、腕を組んだ。本人は目に見えて嫌そう。そう、彼女って確か。

「リナさんって、正直、犬が苦手なんじゃ」
「うん、苦手。だって、なんか勝手に近づいてきて吠えるし。噛みついてもきそうだし。リナ、猫派だし」

 相当のものだった。

「うちの子、大人しい子ですけど。でも、単独ってなると。その、結構怖がりな子でもあるので。絶対、噛みつかないともお約束もできなくて」
「……きゅーん」

 リッカは賢い子でもあっても、事態が急変することがあったら。パニックになって噛みつく可能性もなくはないから……。

「でしょうね。だから、そういうことよ」
「リナさん……?」

 リナさんは腕を組んだまま、こちらを見ていた。全身をくまなく観察しているようだった。

「うん……ルックスは悪くないってかんじ? いい、シャーリー? あんたが犬の責任者でもあるわけで。犬を抱っこして――リナの撮影に参加して」
「え!?」

 リナさんからまさかの提案だった。この宇宙規模の可愛いワンコ単独ではなく、保護者の私まで撮られるときた。

「リナの方で、適当に理由作っておくから。あんたはその犬を絶対、リナに近づけさせないこと」
「わ、私も撮られる……?」

 この自分が、このアイドルと。隣に立つこと……プレッシャーにも押しつぶされそう……!

「でも……」

 だとしても、これも目的の為なんだ。尻込みしていては、機会を失ってしまうから。

「リナさん、わかりました。私はあくまでリッカを見守る立場として、参加させてください。あなたたちが映えるようにアシストします」

 私は考え直してもいた。みなさん、リナさんに夢中なんだ。私みたいなモブに意識も向けないよね? そう考えよう。

「わかってるじゃない。でも、犬はほんとさりげなくでいいんで。だって、主役はリナなんだし」
「そうですね」

 そうそう、主役はリナさんだから。

「はぁ、かったる……でも、ファンのみんなは――そう望んでいるから」

 リナさんは嫌そうに言いながら、さっさと歩いて去っていった。





「シャーリー……」

 リナさんがいなくなったことで、リッカは震える声で呼びかけた。リッカ、緊張するよね……それに。

「リッカ、ごめんね?」
「ううん、いいの」

 リッカの意思に関係なく進めた話だったのに、こう言ってくれる。

「リッカは優しいね……」
 
 私がリッカの胸元を撫でた。くすぐったそうにしていた彼は、ぽつりと一言。

「……リナもね、きっといい子」
「リッカ?」

 私は驚いた。ついさっきまで、私たちは脅されていたのに。弱みを握ったとなると、態度を変えてきたリナさんのこと、リッカはそうコメントしていた。

「……うん。まあ、なんというか」

 リナさんに対しての感情。私はどう表したらいいのか? こう、どこか憎めないというのもあるが、彼女の節節の言動がどこか気遣うようなものでもあり。どうしてか、話しやすいということもあり。

「そうだね、リッカ」
「えへへ」

 少なくとも悪い人とは思えなかった。私の返しに、リッカも嬉しそうにしていた。
 うん、そうだね。もっとリナさんのことを知っていこう。まずは撮影会だね。

「私、抱っこしているからね? 撮影、乗り切ろう」
「うん、シャーリー」

 昼過ぎ予定の撮影を上手くこなせば、リナさんからの心証も良くなるかもしれない。私たちも女子寮に戻って昼食をとって、備えようね。



感想 0

あなたにおすすめの小説

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

天咲リンネ
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

男女の友人関係は成立する?……無理です。

しゃーりん
恋愛
ローゼマリーには懇意にしている男女の友人がいる。 ローゼマリーと婚約者ロベルト、親友マチルダと婚約者グレッグ。 ある令嬢から、ロベルトとマチルダが二人で一緒にいたと言われても『友人だから』と気に留めなかった。 それでも気にした方がいいと言われたローゼマリーは、母に男女でも友人関係にはなれるよね?と聞いてみたが、母の答えは否定的だった。同性と同じような関係は無理だ、と。 その上、マチルダが親友に相応しくないと母に言われたローゼマリーは腹が立ったが、兄からその理由を説明された。そして父からも20年以上前にあった母の婚約者と友人の裏切りの話を聞くことになるというお話です。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

自称ヒロインに婚約者を……奪われませんでした

影茸
恋愛
平民から突然公爵家の一員、アイリスの妹となったアリミナは異常な程の魅力を持つ少女だった。 若い令息達、それも婚約者がいるものまで彼女を一目見た瞬間恋に落ちる。 そして、とうとう恐ろしい事態が起こってしまう。 ……アリミナがアイリスの婚約者である第2王子に目をつけたのだ。