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第三章
リナもね、きっと――
「……ってことなんで、あんたの犬よろしくね。リナのファンはね、待ち望んでいるの」
リナさん、またしても大きく溜息をついた。嫌そうにしながら、腕を組んだ。本人は目に見えて嫌そう。そう、彼女って確か。
「リナさんって、正直、犬が苦手なんじゃ」
「うん、苦手。だって、なんか勝手に近づいてきて吠えるし。噛みついてもきそうだし。リナ、猫派だし」
相当のものだった。
「うちの子、大人しい子ですけど。でも、単独ってなると。その、結構怖がりな子でもあるので。絶対、噛みつかないともお約束もできなくて」
「……きゅーん」
リッカは賢い子でもあっても、事態が急変することがあったら。パニックになって噛みつく可能性もなくはないから……。
「でしょうね。だから、そういうことよ」
「リナさん……?」
リナさんは腕を組んだまま、こちらを見ていた。全身をくまなく観察しているようだった。
「うん……ルックスは悪くないってかんじ? いい、シャーリー? あんたが犬の責任者でもあるわけで。犬を抱っこして――リナの撮影に参加して」
「え!?」
リナさんからまさかの提案だった。この宇宙規模の可愛いワンコ単独ではなく、保護者の私まで撮られるときた。
「リナの方で、適当に理由作っておくから。あんたはその犬を絶対、リナに近づけさせないこと」
「わ、私も撮られる……?」
この自分が、このアイドルと。隣に立つこと……プレッシャーにも押しつぶされそう……!
「でも……」
だとしても、これも目的の為なんだ。尻込みしていては、機会を失ってしまうから。
「リナさん、わかりました。私はあくまでリッカを見守る立場として、参加させてください。あなたたちが映えるようにアシストします」
私は考え直してもいた。みなさん、リナさんに夢中なんだ。私みたいなモブに意識も向けないよね? そう考えよう。
「わかってるじゃない。でも、犬はほんとさりげなくでいいんで。だって、主役はリナなんだし」
「そうですね」
そうそう、主役はリナさんだから。
「はぁ、かったる……でも、ファンのみんなは――そう望んでいるから」
リナさんは嫌そうに言いながら、さっさと歩いて去っていった。
「シャーリー……」
リナさんがいなくなったことで、リッカは震える声で呼びかけた。リッカ、緊張するよね……それに。
「リッカ、ごめんね?」
「ううん、いいの」
リッカの意思に関係なく進めた話だったのに、こう言ってくれる。
「リッカは優しいね……」
私がリッカの胸元を撫でた。くすぐったそうにしていた彼は、ぽつりと一言。
「……リナもね、きっといい子」
「リッカ?」
私は驚いた。ついさっきまで、私たちは脅されていたのに。弱みを握ったとなると、態度を変えてきたリナさんのこと、リッカはそうコメントしていた。
「……うん。まあ、なんというか」
リナさんに対しての感情。私はどう表したらいいのか? こう、どこか憎めないというのもあるが、彼女の節節の言動がどこか気遣うようなものでもあり。どうしてか、話しやすいということもあり。
「そうだね、リッカ」
「えへへ」
少なくとも悪い人とは思えなかった。私の返しに、リッカも嬉しそうにしていた。
うん、そうだね。もっとリナさんのことを知っていこう。まずは撮影会だね。
「私、抱っこしているからね? 撮影、乗り切ろう」
「うん、シャーリー」
昼過ぎ予定の撮影を上手くこなせば、リナさんからの心証も良くなるかもしれない。私たちも女子寮に戻って昼食をとって、備えようね。
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