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第三章
自治委員として
「えー、本日より――各クラスより、一名。場合によっては二名。代表、つまりクラス委員を選出することになりました。ひとまずは高等部のみだけど、ゆくゆくはってことで」
「!」
教室はよりざわつく。立ち上がったのはリヒターさんだ。
「突然の話で恐縮でございます。ただ、我々の権限ばかりが大きくなってしまっており、健全な運営がなされてないと考えた上です。皆様のご助力を何卒よろしくお願い申し上げます」
リヒターさんは深々とお辞儀をした。厳粛なる雰囲気の中、それを壊すのはロルフ君で。
「リヒリヒさー、一つ一つの教室にそうして回るわけー?」
「回るわけー、というよりは。既にご挨拶には伺いました。私一人でもありませんから」
「ひえー。仕事はえー」
「褒めていただけたのでしたら、光栄でございます」
「褒めてる褒めてるー」
ロルフ君がいつまでも絡みそうだったので、担任は咳払いをした。
「はーい、すみませーん」
「おしゃべりは休み時間にしてちょうだいね。で、誰かやりたいって人いるかな?」
担任が尋ねるが、なかなか手が上がらない。自治委員ではないけれど、後釜のようなもの。プレッシャーもあるんだと思う。
「あー……そういう感じ? じゃ、オレやります!」
軽いノリでロルフ君が手を上げた。クラスメイト達も彼ならと賛同しそうだった。
「ロルフ君、大丈夫……? 寮長もやってたよね?」
ロルフ君、クラス委員も兼任となると大変じゃない? 私は案じずにはいられなかった。
「お、心配している感じ? ――じゃあさ、シャーリーちゃんも手伝ってよ。二人で仲良くやろ?」
「私も……?」
それならロルフ君の負担も軽く出来る。とても望ましいこと、なんだけれど……。
「……」
今回はゼンガー親子に集中しないとだから……気の毒だけれど、ここは断ることにした。
「ごめん、ロルフ君。まだ委員とかになる度胸はなくて。でも、タイミングが合えば手伝えるかなって」
「えー!? がっかりぃ……しかも、度胸とかいらなくね?」
断られて落ち込んだのか、ロルフ君はうつ伏せになった。そのまま顔だけ見上げてきた。
「ごめんね……」
見るからにしょんぼりしていたから、私は罪悪感が芽生えてしまっていた。でも、そこはロルフ君というべきか。彼はくしゃっと笑った。
「……まー、そういうところ、キミらしいというか」
優しい笑顔を向けてくれていた。心から安心できるような、そんな笑い顔。
「全然いいよーいいよー。それじゃあ、誰かオレを助けて―?」
それでもって、重苦しくならないように。払拭するかのように振る舞っていてくれていた。
「それなら、私も立候補する!」
「あたしも!」
「俺もやってもいいぜー」
クラスメイトたちがロルフ君がいるならと、次々と立候補してきた。
「お、助かるわー。先生、全員委員でいーい?」
「皆の気持ちは尊いけど、却下です」
結局はロルフ君一名のまま、他の生徒がフォローに入ることとなった。時間内にクラス委員を決定し、朝礼は終了した。
「――失礼いたします、ジェム様」
「リヒターさん?」
お昼休みになった。声を掛けてきたのがリヒターさんだった。席を立った彼は、私の近くまでやってきた。
「席を外させていただきます。所用で出かけて参ります」
「そうなんだ。委員会のお仕事?」
「はい。それで、なのですが……」
リヒターさん、話したいことがあるようだった。私は彼の言葉を待つ。
「もし、ジェム様さえよろしければ……お昼を共にと思っておりました」
「本当? それは嬉しいな」
リヒターさん、用はあるみたい。でも、編入初日の私を気にしてくれたのかな? それでお昼に誘ってくれたんだね、きっと。
「……はい。私もそう望んでおります故……なんとしても早目に片付けてきますから」
「そう? こっちは気にしないで。いくらでも待てるから」
「よろしいのでしょうか」
「うん。いってらっしゃい」
私は彼の帰りを待つことにした。そうだ、待っている間にリヒターさんの分も用意しておこう。サプライズだと一人計画していた。
私はこうも思っていた。リヒターさんは負担を軽くしようとはしている。一方で、やはり学園のことは放ってはおけないなんだなって。彼らしいと思った。
「――そうだよ、リヒリヒいってらっしゃーい。オレ、シャーリーちゃんと一緒に待ってるからさー」
すっと入ってきたのは、ロルフ君だった。彼は隣に座ったままだった。
「あれ、いいの? ロルフ君って」
それこそ友人に囲まれてそうなのに。彼女だっていそうなのに。
「いいのいいの! だって、シャーリーちゃん来たばっかっしょ? 一人にさせちゃ可哀そうじゃん?」
ロルフ君、体を寄せてきた。結構近めで……私一人が緊張しているんだろうね。ロルフ君、普通にニッコニコだから……。
「……秒で片付けて参ります」
リヒターさんはあくまで無表情のまま。でも、どことなく不機嫌そうだった。
「秒とか。かっけーな、オイ」
「言葉尻をとらないでいただけますか――出来るだけ早目に戻りますので。ジェム様、絡まれ続けるでしょうが、今しばらくご辛抱ください」
「辛抱とか。ひっでー」
より不機嫌になるリヒターさんとは対照的に、ロルフ君はけらけら笑っていた。リヒターさんが急ごうとしていたところ。
「……リヒリヒさー、大変だねぇ。『キング』の件でしょ?」
そう声を掛けてきたのは、ロルフ君だ。リヒターさんの足が止まる。
「お、正解?」
「……申しておきましょうか。正解でもあり、不正解です。『彼』は貴族であると伺っておりますので」
「いや、そうだけどさ。キングでよくない?」
「いえ、王族ではないと耳にしておりますので……このへんで失礼させていただきます」
押し問答は続くと思われたけれど、切ったのはリヒターさん。『不本意ですが』と口にしつつもリヒターさんは教室から出ていった。
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