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第三章
人気者が見せる影
「リヒターさん、そのキングって人に用なんだね?」
――『キング』。これまでのループで耳にしたことはなかった。ロルフ君に探りを入れてみることにした。
「そうそう。彼ね、中等部で有名人なんだよねー」
「ふむふむ、中等部」
「リヒリヒが言ってた通り、貴族なんだってー。南の国からやってきたとか。しかも、キミと一緒で編入生」
「ふむふむ、貴族で編入生」
ロルフ君が喋りたがりなこともあって、着々と情報は集まっていた。
「なんでもさー、『美女部』だっけ? ハーレムを築き上げたい? でも、ただハーレムを築くってだけじゃなくて? なんか、お嫁さんがどうたらって」
「……」
「ね、意味不だよねー」
私が反応に困ったのは、キングという人の狙い。そして――かつての日々で耳にしたこともあったこともあって、だった。
――美女部……美女部ときたかぁ。
『――直接お伺いしましたが、当人はいたって真剣でございました。なんでも、学園の選りすぐりの女生徒を集めて、嫁を探すという至高の目的があると。そう仰っておりました』
当時のリヒターさんがそう説明していた。今回もまた、その生徒と話をしにいったんだね。
「……ってね? オレが話したのも、注意喚起ー?」
「えっと……?」
ロルフ君が顔を覗き込んできた。陽気な人物特有の距離の詰め方、私となるとドギマギしてしまう。
「シャーリーちゃんも狙われんじゃね? 気をつけなー? あのイケメンども、いくらでも盾にしていいからさ?」
「あはは……私、縁がないだろうし。あと、色々と突っ込みどころが」
盾扱いされた彼らも可哀そうだって……いや、どのイケメンを指しているというの。
……想像できないわけでもないけれど。ロルフ君は知りもしないでしょうに――彼はこの数日で出逢ったに過ぎないはずだから。
……ロルフ君。君に対して、私の方は不思議な気持ちを抱いてはいるけれど――。
「あ、だめだ。事件発生だわー。血で血を洗い流すようなもんですわー」
「……ちょっと冗談きついかなー?」
そうだよ、ロルフ君は知らないはずなんだ。私は笑ってやり過ごすしかなかった。
「はは、ごめんて。楽しい話ね、楽しいお話――リナ・ゼンガー、追っかけてるんだって?」
「!」
すでに噂にはなっているんだ……編入生がリナ・ゼンガーの追っかけになったと。
「あれ、シャーリーちゃん?」
「あはは……」
乗らない方が不自然だよね……。
「……うん、私ね。リナさんに夢中になっちゃって。もう、私の推しというか。推し活に励みたいなってくらいには……夢中、なんだ」
「……」
「はは……」
私は上手く笑えていたかわからない。ロルフ君がこうも、真っすぐに見てくるのだ。まるで見透かすようで――。
「――シャーリーちゃんさ。本気でリナ・ゼンガー推してるの」
「……もちろん。新規だけどね」
いつになく真剣なロルフ君に私は焦る。まるで――疑惑をもたれているかのようで。
「……言えない、か」
「……」
微かな声だった。私が反応しようとした頃には。
「……じゃ、シャーリーちゃん! お昼、買ってこよっか」
「う、うん。そうしよう」
すっかりいつものロルフ君だった。彼が席を立ったので、私も続くことにした。
「リヒリヒの分も買っておかないとね――驚かせたいんでしょ?」
「え……」
まだリヒターさんの分も購入したい、そこまでならともかく。サプライズを企んでいたことまで読まれていた?
「ほら、サプラーイズ! って。あれ、違ったー?」
「う、ううん? びっくりさせたいなって思ってた」
「だよねー」
ロルフ君の突然の大声。残っていた生徒たちが総突っ込みしていた。ロルフ君も楽しそうに笑う。
……ロルフ君。
誰からも好かれて――ほぼ初対面の私に対しても、気さくに接してくれる。そんな、人気者の彼。
「……でもね」
時折ではあるけれど――彼が見せる表情が気になっていた。
どうも意味深であると思えてならなくて。
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