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第三章
あんだけデカイんだし、余裕でしょ!
購買部に二人で向かう途中、リナさんを見かけた。ファンたちと食堂で食事をしていた。遠くから見ていた私たちのことは気づいてないようで、声を掛けていいものか考えていた。
「――ああ、あの人ら? ああやって、昼食会を開いたりしてるんだって。リナ先輩のお気に入りだと招待されやすいとか」
「そうなんだ……お気に入りかぁ」
「噂でしかないけどねー」
ほら、とロルフ君が止まった。食堂内部にあるのが購買部だ。ピークが一旦引いたのか、そこまで混んではいなかった。となると、残っているものは限られてくるよね。
「良かった」
お米を用いた料理は残されていた。しかも、リヒターさんが好みそうな要素もあったもの。
「……」
例の頃の記憶になってはしまうけど……リヒターさんの好物、覚えているから。素材を生かした、あっさりとした味つけのもの。あと、彼が好きな紅茶の淹れ方もそうだよね。
いかにもな料理……果たして差し上げていいのかな。
「……ううん」
先日、米料理の話をしたばかりだし。それだと言い通せばいいか、いいよね。
「んー。シャーリーちゃんそのままチョイスじゃねー」
そう言ったロルフ君が、自分の分だけでなくもう一人分購入していた。おそらくリヒターさんの分になるのかな。それは大ボリュームの、肉類野菜類がマシマシの物だった。
「それ、一人分……?」
その量に、私は思わず聞いてしまった。何人かでシェアしそうな量に見えたから。
「うん、一人分。余裕っしょ。つか、リヒリヒだってそうだって。あんだけデカイんだし、余裕でしょ!」
「余裕かもだけど……」
リヒターさんは大食いというイメージはないけれど、確かに背とか高いもんね。うん、リヒターさんだし、大丈夫だね。
教室から戻ると、リヒターさんの方が待っていた。私たちの席近くで待機していた。
「お待たせしちゃったか。リヒターさん、お疲れ様」
「いえ。労いの言葉、痛み入ります。話自体は、ええ、どうにかですが――つきましたので」
「……本当に、お疲れ様でした」
中等部の生徒とのやり取りに、どこか疲れがみえていた。本当にお疲れ様……。
「ほら、リヒリヒも適当に座ってー。オレの前にでも座ってー」
「……適当、とは」
……うん。適当というわりに、ロルフ君は思いっきり指定してきていた。
「……失礼いたします。では、いただきましょうか」
リヒターさんは特に異を唱えることもなく、ロルフ君の前に座っていた。そして、胸元から何かを取り出そうとしている。
「……あ」
私は予想がついた。リヒターさんがいつも口にしている携帯食だ。あれで済まそうとしているんだ。
「……あのさ、リヒターさん? こっちでね、お昼用意しているんだ」
たまらなくなった私は、言ってしまった。ロルフ君があちゃーと言いたげだ。ううん、これはサプライズ。サプライズだと私は言い張る。
「ジェム様が、でしょうか」
わずかな表情変化だった。リヒターさんは心なしか浮かれているようだ。
「私じゃなくて、ロルフ君が。ほら、美味しそうだよ」
私は正直に話した。ロルフ君がイエーイと手を上げていた。
「……ご手配いただきまして、ありがとうございます。料金もお支払いしますね。ヴァールザーガー様」
「まじで? じゃ、シャーリーちゃんとワリカンしたからーオレらによろしくー!」
「……はい……お二方、ありがとうございました」
リヒターさんは無表情に戻った。その後、大ボリューム弁当を目にしても、彼はどこまでも無表情だった。
「いただきます――ときに、ジェム様。こちらだけ言わせてください」
「はい」
「……くれぐれもお気をつけください」
「……うん?」
「今回は破談となりましたが。彼はまだ、諦めておりません――美女と連呼する者には、ゆめゆめお近づきになりませぬよう」
ロルフ君だけではなく、リヒターさんまでもそう言う。
「もし彼に用があるのでしたら。いえ、無いとは思いたいですが。万が一ということもあります。私もお連れください」
「ほらぁ、シャーリーちゃん! リヒリヒもそう言ってんじゃーん? 盾になりたいってことじゃん?」
「ええ、そうですね。喜んで盾となりますので」
真剣なリヒターさんに、どこまで真剣かわからないロルフ君だった。私としては声を掛けられもせず、会ってすらない生徒であって。どこまで警戒したらいいものか。
「まあ……機会があったら」
接する機会なんてそうないだろうけど。といっても、迂闊に近づかない方が良い人物でもあるようだった。私は濁しつつ返事した。
「……ジェム様」
「シャーリーちゃんさぁ……」
納得いかないような目線を、二人からくらってしまった。
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