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第三章
噂のキング
放課後になった。さて、どうやってリナさんと接触しよう? 今日も撮影やってないかな? と、頭を巡らせていた時だった。
「――よう。確か、昨日犬連れてた子だろ?」
「そうそう、シャーリーちゃんだっけ?」
リナさんのファンの二人、彼らが声を掛けてきた。
「うん。その、色々とお騒がせしちゃって、すみませんでした……」
彼らからしてみれば、妙な雰囲気にさせてしまった一因だよね……私はお詫びした。
「いや、いろんなリナちゃん見られたからな! そこはグッジョブってことで!」
「うんうん、リナ様可愛かったし」
彼らは怒ってはないのかな……? それならいいんだけど……。
「今日もさ、撮影やるんだって。なんか……珍しいよな」
「うん……。昨日、良い感じだったと思ってたけど」
昨日の撮影。飼い主馬鹿と思われようと、リナさんは嫌そうではなかった。むしろ楽しそうだったとも思っている。
……でも。その後は強制退場同然だったので、具体的にはわからない。とくに噂話とかもなさそうだったし。
「うーん……」
父であるルイ・ゼンガーさん、彼の介入があったんだよね。
「……」
私は気になっていた。どうも互いの反応が……何かがあるかのようで。確信があるわけじゃないけれど、可能性の一つとして留めておくことにした。
「教えてくれてありがとう。私も参加させてもらうね」
どのみちチャンスなんだ。私は二つ返事で見学することにした。新規であろう自分を歓迎してくれるのも、私は嬉しく思えた。
「うん、それはいいんだ。あのさ、ロルフ君との話聞こえていたんだけど」
「――『オシカツ』? なんだろ。すごくトキメクっていうか! こう、絶対覚えておきたいというか! 心の底からでもあるし、魂の底からというか!」
ロルフ君との会話で確かに出していた。私は意外だと思った。いかにも知ってそうな彼らだったのに。それを言ったらアルトもだけど。
「それじゃ、教えていいかな? 上手く説明できなかったらごめんね」
道中、彼らと一緒に向かうことになった。私は歩きながら推し活文化のことを説明していた。二人は目を輝かせながら聞いていた。
話しながら行っていたので、遅れてしまったようだった。リナさんの撮影は既に始まっていた。今回は食堂だった。美味しいものに囲まれているリナさん、映えるなぁ。
遅れてきたこともあり、私たちは後方で見守ることにした。
「……」
こうして遠くからみても、リナさんの存在は目を惹く。輝いていた。
「――ほう、何やら人だかりが出来ているな」
「ええ、そうですね。今撮影をやってまして――」
私の隣に誰か立った。リナさんの撮影に興味を示した人かな? 新参者ながらも私は説明しようとした。
「それはよい。今はな……そなたのことだ。カナリア色の髪の乙女――そなたがそうであろう?」
「え……」
この学園では目立つ、褐色の肌。黒の短髪の毛先を遊ばせている。健康的なおでこがむき出しの快活そうな男子生徒がそこにいた。
くっきりとした大きな瞳と、顔に幼さは残っている。それでいて、それなりの長身でもあった。
「本日参られたというおなご、そなただろう?」
彼が着用しているのは、詰襟の制服。こちらは白を基調としたもので、高等部とも委員会とも異なる制服。中等部のものだった。
中等部の制服を着た男子生徒――それも美女と連呼しているとなると。
「まさか……」
彼こそが噂の『キング』……!? でも、こうして目にしてみると、納得ともいうか……。
……うん、困った。向こうからやってきたのだから。それも前触れ無しに。
「ふむ。申し遅れた。余はエドワード・アタラクシア・ロウラウンドだ!」
「……ええと、ロウラウンドさん?」
「ふむ。長いだろうな! エド・クラウンで通しておる。あと、余は後輩にあたる。畏まらずともよいぞ。エドとよく呼ばれておるな!」
「……エドワード君でもいいかな?」
私は彼、エドワード君との会話を続けていた。警戒するようにと言われていたけれど、普通に話しやすいというか。向こうも普通に話しかけているだけだと思っていた。
「よいぞ! でな、余は南方の国、『ララシア』より参った――」
堂々とした態度だったエドワード君が、途中で言いやめた。でもそれは束の間のこと、彼はすぐに続けた。
「……貴族である」
「へえ、ララシアから。確か南国の」
私も聞いたことがあった。そこまで詳しくはない。
――遥か南方にある海洋国家ララシア。ヴェールに包まれた国とも、閉ざされた国とも言われていた。
存在さえあやふやな国とも……それは言い過ぎだとは思う。現にララシアの貴族と名乗る少年がここにいるのだから。
「ああ! とても良いところだぞ」
相手は無邪気な笑顔を見せている。変に警戒することもないのかな、本当に。
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