春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第三章

せっかくの愛らしさを――


「――エドワード君、こっち」

 ただ、彼はとても声の大きい生徒のようだった。リナさんの撮影の邪魔になると、後方に下がることにした。私は彼を手招きして、端の方に来てもらうことにした。

「お、おう……」

 落ち着かないのはエドワード君。『人がいないぞ……二人きりぞ』って、ソワソワしている?

「私はシャーロット・ジェムです。編入生です。よろしくお願いします」
「ああ、シャーロット殿だな。よろしく頼むぞ」

 エドワード君は空気を読み、声を潜めてくれていた。

「……ふむ。ふむふむふむ」
「……どうしたの?」

 声は静かになったと思ったら、今度のエドワード君の挙動が騒がしかった。私をやたらと見ていた。

「ふむ、すまない。誠に美女だと思うてな……? 話に聞いていた通り、美女だ。まごうことなき美女だ」
「え……」

 瞳の色はこの国の民ともそう変わらないよう。彼の茶色の瞳が、私の姿を映している。

「……あの堅物委員が、懸想するだけはある」
「……?」
「聞いてくれ。余はな、編入生が美女と聞いて会うのを楽しみにしておったのだ。昼休みにでもと思うていたところにだ。リヒター殿が我が部の件でやってきたのだ」
「うん……」

 あまりにも美女美女言われるのは、こっちとしても複雑で……。あまり聞いてられないのに、エドワード君は一方的に話しかけてくる。

「結論としては、余の話は聞き入れてくれなかった。ならばせめてと、噂の美女に会おうとしたらだ。――リヒター殿が牽制しおってからに。あれこれ圧力までかけてきおった。そこまでされたらな、余は燃えるというものだ」
「なるほど……」

 私は今、知らされた。リヒターさん、牽制とかしていたんだ……心配してこそだったとは思う。結果、焚きつけることになってしまった。

「期待以上だったぞ。余の美女部に加えたいくらいだ。我がハーレムの一員としてなっ」
「……」

 期待だけが上がっていく……ううん、美女って。そんなカーストトップが集いそうなところ、私としては重荷でしかないわけで。ああ、エドワード君の気が変わったりしてくれないかな――。

「―ねえ。さっきから気が散るんだけど?」
「!」

 剣呑とした雰囲気のリナさんがやってきた。結局邪魔をしてしまった……。

「ごめんなさい、リナさん……」

 私は謝った。リナさんとは昨日別れたきりだ。気まずい思いは残っている。

「別にいいけど? 今、小休止みたいなもんだから。次、移動するからね」

 撮影は一旦終わったようで、ファンたちはどこかへいっていた。

「……っと。次は気をつけてよー? そこのあんたも! リナと約束だぞ?」

 エドワード君に気がつくと、リナさんは注意していた。あざとい……可愛い……!

「おおお……」

 私だけではなく、興奮したのはエドワード君もだった。彼の顔は一気に赤くなっていた。

「さ、さすがだ……! 我が学園のアイドル、リナ殿!」
「ふふん、リナだからね」

 エドワード君、すっかりリナさんに首ったけだった。リナさんも悪い気してなさそう。

「さあ、リナ殿! 余のハーレムに加わるのだっ!」
「あー……有名な美女部ってやつぅ? リナ、みんなのリナだから。ごめんね?」

 悪い気はしてなくても、リナさんは両手を合わせてあざとく謝った。プロ意識……!

「おお、なんという愛らしさよ! 余は諦めぬぞ!」

 彼も彼で興奮が高まるばかりで。

「……」

 私はすっかりカヤの外だった。もうそれで良かった。この二人でやっていてほしかった。

「って、ごめんね? リナ、もう行かなきゃだし。ほら、シャーリーも」
「は、はい」

 リナさんの方は普通に対応してくれていた。正直、助かったんだ。私は彼女についていこうとした。

「…ほう、もう行くのか」
「うん。あんたも来る? もーっと夢中にさせたげる」

 リナさんはとびきりのスマイルを振りまいた。エドワード君はたまったものでなく、左胸を押さえていた。

「ふふん、リナにかかればね。みんな、リナに夢中なんだから」
「く……強力だ。余は致命傷ぞ……! ――だがな」
「……!?」
 すっと前に出たエドワード君は、リナさんの顔を覗き込んでいた。彼は呟いた。

「余はな――素の顔の方が好みだ」
「は……?」

 彼の言葉に、リナさんは笑顔のまま。エドワード君は続けようとする。

「せっかくの愛らしさを、塗りたくってはもったいな――」
「うるさいな!」

 廊下に響いたのは、頬を叩く音。

「……」

 頬を手で押さえたエドワード君と。

「……」

 息を切らしながら、激怒のリナさんがいた。力任せに引っ叩いたのは。
 ――リナさんだった。

「あ……」

 リナさんはその手を下げ、垂らした。彼女の瞳は揺れていた。気に触れたから、そうしてしまった。でも、本当はするつもりはなかった。自分で自分の行動が信じられないといった感じだった。

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