春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第三章

心臓に悪い夜、そして朝




 それから夜中のお茶会をしたり、リッカにもおやつを振る舞ったりして。楽しい時間を過ごした。


 もう、寝る時間。寝るところの話になって。

『一緒に寝るのよ? 楽しいお泊り会なんだから――リナとのね?』

 と、リナさんが語っていた。あまりにも当然のように言われたこともあり、私も断る選択肢は無かった。
 広々とした天蓋付きのベッドで、私も寝ることになった。隣で枕を並べているのは……リナさん。

「すぴー」

 リッカはベッドには乗らず、毛布にくるまって床で寝ていた。上質なそれに包まれたワンコは熟睡していた。

「すうすう……リナはぁ、世界一可愛いんだからぁ」

 リナさんも寝言を言いながら就寝中だった。

「……」

 私一人が寝つけずにいた。落ち着かないんだ、こう――。

「……」

 あらゆる方向から視線を感じてならなかった。あれかな、ぬいぐるみがたくさんあるから?  
 ぬいぐるみが――。

「……?」

 そのぬいぐるみたちが。

 ぬいぐるみたちの目が――光った。

 暗闇に蠢くのはぬいぐるみたち。

 動いている。

「ひいっ!?」

 私は飛び起きてしまった。するといなや、ぬいぐるみの動きは止まった。

「すぴー」

 いつもなら異変を察知して起きるリッカ。彼は熟睡中という。

「……どうしたの?」

 リナさんは起きてきていた。真夜中に申し訳ないと思いつつ、私は胸を撫でおろした。今し方起きた現象について話すことにした。

「すみません、起こしてしまいまして。あの、ぬいぐるみたちがですね? 動いたり、目が光ったりしたもので、驚いてしまいまして」
「……」

 リナさんからの反応がない。寝ぼけているのかな……?

「リナさん……?」
「……ふふ、かわいー」

 妖しく笑ったのはリナさん……恍惚してない? 何故?

「はいはい。こうしてあげるから」
「わっ……」

 リナさんに抱きしめられることになった。彼女はあやすように私の背中を撫でていた。

「う、嬉しいですけど……」

 私の心臓は高鳴りっぱなしだった。

 結局、寝つけたのは明け方前となった。






 朝を迎えた。部屋中に香ばしい香りが漂っていた。

「おはよ。朝食、部屋に運んでもらったから」
「ありがとうございます……って」

 私はゆっくりと体を起こした。家のベッドでも、寮のベッドでもない。ここはリナさんの部屋だ。
 身支度が済んだリナさんは、朝飯をかっくらうワンコを眺めていた。リッカはがつがつ食べていた。

「なんかね、リッヒが作ったんだって」
「リッヒ。えっと……リヒターさん?」
「そ、リッヒ。リナのセンス、爆発的な?」

 ……リッカと響き、似てる。私、うっかり呼び間違えないようにしないと。

「ははは……」

 私は寝起きの頭で整理した。こういうこと?
 リッカの朝食を覗き込んでみた。内容は野菜をふんだんに使ったヘルシーなものだった。用意したリヒターさん、相談されたのかな? 私たちが泊まったのも、預かり知ることになっていると。ふむ。

「リナさん、ありがとうございます。良かったね、リッカ」
「……」

 ご飯、かっくらっているねぇ。神聖なる一時なので、邪魔しないように見守っていた。

 リッカは食べ終えた。ご馳走様とひと鳴き、そのあとは横になっていた。食後のひと休憩だね。お洋服もすっかりお気に入りだね。

「洗面所お借りしますね」

 私も準備をすることにした。リナさんは準備どころか、食事も済ませているようだ。

 それから、朝食もご馳走になる。寮の食事も立派だけれど、ここでの食事は格別だった。私は舌鼓を打った。食事を終えて、着替えることにした。となると、制服が必要で――。

「……あ」

 女子寮に戻らなくちゃいけないよね。着てきた私服はある。一旦、そちらに着替えようとしていた。

「リナさん。お招きありがとうございました。私たち女子寮に戻りますので」
「なに、制服?」
「はい」
「制服ならあるじゃない」

 リナさんはラックにかかっていた制服を渡してきた。それは――彼女の改造制服だった。
 まさか……まさかなの?

「安心して? 予備はいくらでもあるから。いっそ、あげちゃいたいくらい」
「いえ、お気遣いなく! 私、取りに行きますから―」

 ……そのまさかだった。リナさんは自分の制服を貸そうとしてくれていた。リナさんのご厚意は有難いけれど、ネグリジェはまだ、ごく僅かな人数だったから。制服となると……一斉に見られることになって。それは、それはさすがに…。
 サイズはあの謎技術によって、私でも着られそう。問題はサイズじゃないんだ、デザインなんだ……!

「いいんだー。今から女子寮って、遅刻決定じゃない?」
「え!?」

 部屋の時計を見た。かなりギリギリの時間だった。リナさんが『サボる?』と魅惑的な提案をしてくるも。
 よりにもよって、この日の一限目は遅刻に厳しい教師ときた。一回、彼の授業でやらかしていた身としては、私はそれはもう借りる一択しかなくて……。

「……有難く、お借りします」
「そうこなくっちゃ」


「……」

 着替え終えた私は姿見で確認した。リナさんだから着こなせる、許されし服であるんだ。それを突きつけられた。
 もうね、これは何かの罰ゲームかな……朝から嘆きたくなっていた。

「ふふーん」
「!?」

 鼻歌まじりのリナさんによって、髪型まで変えられた。早業だった。

「……ふふ、おそろい」

 リナさんと同じ――ツインテールだ。鏡越しの彼女は。
 愉悦に浸っていた。



 リナさんは自室でゆっくりしてから登校するのだそう。遅刻上等だった。

 私はというと、そういうわけにはいかなかった。リナさんにお礼を言い、部屋を後にした。



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