春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第三章

リナ・ゼンガーコスプレ



 リッカはリードをつけず、抱っこしたまま早歩きで迎賓館内を出た。女子寮に近づくと、リッカをそっと下ろした。女子寮の職員さんも気にかけてくれている。部屋の鍵もかけてないので、自室に戻ることもできた。

「うん……」 

 もしかしたら、今から自室で着替えても間に合う? ……ううん、そう考えている時間すらもロスなんだ。その考えは捨てて、今は急がないと……!


 そこからの私は全力疾走だった。ああ……登校途中の外の生徒からの注目は浴びる。それはずっと続いていた。

「うう……」

 私の顔は恥ずかしさの極みで真っ赤だった。穴にも埋まって姿を隠したいくらいだった。それでも私は走り続けた……!




「!」

 自分の教室に辿り着いた。扉の前にいる人物は――。

「――お、シャーロット? ギリギリか? ほら、入れよ」
「ありがとうございます……!」

 遅刻は欠席扱いの教師、モルゲン先生。彼はちょうど教室の扉を開けるところだった。私が入るまで待ってくださるのは、彼からの恩情。ありがとうございます、先生……!

 そんな先生が――。

「……は?」

 信じ難い、そんな声を出していた。わかります、先生……あまりにも目を疑いたくなるものだからですよね……!

「おはようございます……」

 後ろの方からこっそり入ってきても、そこに視線は集まってしまう。私の今の恰好なら、余計に……。

「ジェム様……?」

 事情を察しているであろうリヒターさんも、さすがに驚いていた。

「えっと、シャーリーちゃん……?」

 賑やかし担当のロルフ君も困惑していた。率先していじってきそうな彼らがこうだった。同級生たちからは触れてはいけない案件になっていた。リナ推しの彼らも目を泳がせていた。

「……俺はな、今きたんだ。よし、授業始めるぞー」

 このタイミングで先生もやってきた。私も紛れて席に着こうとすると。

「あー……シャーロット? その服装の件だ。あとで話しような?」
「はい……」

 先生は見逃しはしなかった……お騒がせしたわけだし、受けましょう――。

「――発言よろしいでしょうか」
「……律儀だな。どうぞ」

 挙手したのはリヒターさんだった。先生の許可を得て、彼は話し始める。

「ジェム様の服装でございますが、あくまで借用に過ぎないかと思われます。日頃の彼女は規則違反はしていない。ご存知でしょう? 本日は偶々かと――よって、呼び出す必要もないかと存じます」
「いや……それは、わかってはいるぞ。わかってはいるがな? でも、気になるだろうが。今日、突然だぞ? 前触れもなくだぞ!? 髪型まで合わせてきているときた!」

 先生の言葉に、同級生たちも頷いていた。私は……俯いていた。

「仰る通りでございます。かといって、呼び出すまでには至らないかと思われます――ましてや密室となりますと。そちらはいかがなものでしょうか」

 リヒターさんからの返しに、教室は騒然となった。確かに、といった声も上がっていた。

「密室とか言うなよ……」

 先生はうっすら涙目だった。

「あの、皆さん……! お騒がせしてすみません。お昼休みには着替えておきますので」
「……そうか。俺の責任で不問にしておくから」
「ありがとうございます」

 すぐにでも着替えたかったけれど、午前の授業に影響があるから。ここは昼休みまでこの恰好で過ごすことにした。呼び出されなかっただけ御の字だよね。



「――それでだ。我が国と同じく、冬の国と謳われるのが」

 先生が普段通り授業を行う中。

「……」

 私はひたすら肩身を狭くしていた。




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