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第三章
イベ、開催しまっす!
しおりを挟む「――ありがとう、ロルフ君。今日一日お世話になります」
「いいっていいってー。役得っしょー」
いつもの授業道具は部屋に置いたままだった。筆記具から教科書まで、隣の彼になにからなにまでお世話になった。ロルフ君が明るくそう言ってくれる分、救いがあった。
「……あらら、シャーリーちゃん? お疲れ?」
「うん、まあね……」
ロルフ君は休み時間になると積極的に話しかけてくれていた。時には彼の友達も交えてくれたり。
「でもね、ロルフ君のおかげかも」
「お?」
ロルフ君は不思議だった。本当に不思議。話しやすいのもだけど……こんなにも落ち着くんだ。慣れ親しんでいるというのかな? ……彼と私はループを経ていても、会ったばかりのはずなのにね?
「君と話しているとね、気持ちが明るくなるんだ」
――前世の頃のあの子みたい。私はどうしても重なったから。彼を想って微笑んだ。
「……」
ロルフ君? 彼は急に押し黙ったかと思ったら。
「……うん、そうだよね」
深く頷いていた。思いに浸っているかのような、そんな感じだった。そんな彼は、笑顔全開になって会話を続けていた。
「――じゃ、もっと明るくなる話をすっか! ねね、シャーリーちゃん! 前にさ、そっちの寮長さんとオレとで話してたの覚えてるかな?」
「うん。女子寮に来ていた時で合ってれば」
今回の編入初日の話だよね。ロルフ君は女子寮長さんに何かを交渉していた。
「さっすが、シャーリーちゃん! 覚えてるとか、さすシャ!」
「あはは……」
どこぞの幼馴染もそう言っていたね……さすシャ。
「まずね、こう? せっかくの高校生活じゃん? 色々と交流したいじゃん? 仲良くなったりしたいじゃん?」
「高校生活……?」
「そっ! で、やっと向こうの寮長からもオッケー出てさぁ。なんと、冬休み中に交流イベントが行われることになりましたー! 女子寮と男子寮の交流会っす!」
「!」
ロルフ君のテンションが高い。彼は天井に向けて拳を突き出していた。やり遂げた感が伝わってくるよ、ロルフ君……!
「おお、すごいね……ロルフ君頑張ったねぇ」
「そうそう、褒めて褒めて! 根回しやっといて良かったわー」
ロルフ君はうんうんと頷いていた。それから語るは内容だった。
「で、イベント内容。つっても、普通に食べて飲んでなだけなんだけど。ほら――あの鈴の鳴る木あるっしょ? あそこでいい感じにならないかなってー」
「あそこかぁ。それなら、確かにそうかも」
確か、恋愛のジンクスもあるというスポットだよね? おあつらえ向きだと私も同意した。
「でさー、シャーリーちゃーん? 前、タイミング合ったらって、言ってくれたじゃん? 当日とかさ、手伝ってくれたらうれしいなーって」
ロルフ君が上目遣いで頼んできた。可愛らしくあざとかった。
「……ええと、タイミング合ったらでいいかな? 出来る限りは手伝うようにするから」
「っしゃ! ありがとー!」
私も心置きなく承諾したかったけど、ルイ・ゼンガーさんの件があったから。ひとまずは手伝える時に手伝うという返事をした。ロルフ君はそれでも良かったようで、ガッツポーズしていた。
「やりやがったなー、ロルフー!」
「それって、寮以外の参加はだめ?」
「どんどん呼び込んでいいの?」
ロルフ君の大声で注目が集まっていた。クラスメイトたちが続々と質問してきた。
「やりましたよー、やったりましたよー、オレはっ! あと、参加は寮限定じゃないんで大歓迎っ! めっちゃ呼び込んでおいてくれると助かるー」
「わかった。それで日にちっていつ? 冬休みってことだけど」
「三十日! けっこう近いんだよねー」
すでに日にちも決定しているんだ。ロルフ君は他の生徒と盛り上がっていた。彼らは、準備は大丈夫なのか。いくらでも手伝うとか。ロルフ君と一緒に盛り立てたいんだね。
「……三十日」
私はその日にちのことを考えていた。それは――歌手殺害事件発生の前日にあたった。
「……どうしよう」
私、イベント当日に手伝えるのかな……事件に備えなくてはいけないよね。
ごめん、ロルフ君。せめてそれまでの間は手伝うから。君に話すわけにはいかないから、誤魔化すばかりなのが心苦しい。
これまでになかった展開、何事もなければいいけれど……。
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