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第三章
カップル誕生……?
「も、もう。今までそんなに見つめてくれたことなんてなかったのに。リナ、ドキドキしちゃった。ねえ、アル君? リナ……期待していいの?」
リナさんは体をもじもじさせていた。そんな彼女にアルトは。
「……そうですね――リナ先輩」
「アル君!」
「今まですみませんでした。塩だったと思うんですけど、俺、緊張してただけなんで。そのお詫びってとこですね――その日、空けておきます」
「やったぁ!」
リナさんはその場でぴょんぴょん飛び跳ねた。アルトの両手をとりながらだ。アルトも嫌がることなく、笑顔を向けていた。周囲の生徒達も歓声を上げていた。一部は複雑ながらも、リナさんの幸せを願って拍手をしていた。
「……」
私は一瞬だけアルトを見て、彼に気づかれる前にそらした。アルトが承諾したのに、『今』の私に何が言えるのかな。
『なに、お前から仕掛けろとは言わない。でもな、リナ・ゼンガーからの接触があった場合、わかるよな?』
面談室での作戦会議。先生が言っていた。それをアルトは実践したのかな。それとも。
アルトは意味深にリナさんを見つめていた。彼女の可愛らしさは相当のもの。その中身もそうだった。それに気づいて、彼もまたリナに惹かれたとしたら。
「緊張、かぁ。ふふ、アル君ったら。そうだったんだぁ」
リナさんは、アルトと向き合った。二人のやりとりは続いていた。私も目が離せずにいて。
「リナが可愛いからね、緊張するのもわかるの。ならね――もっと一緒にいよ?」
はにかむリナさん。あまりの愛らしさに外野が悶絶していた。
「……は?」
笑顔のまま、低音で聞き返したのはアルトで……?
「え、アル君……? いやだった……?」
泣きそうな顔をしているのは、リナさん。瞳を潤ませていた。
「あー……俺、緊張してただけなんで。嬉しいです、はい」
アルトはそう答えた。リナさんはなんだぁと安心していた。
「じゃ、アル君! リナ達とご飯食べよ。あと、放課後とかー。休みの日とかー。あ、リナの撮影がない日ねっ」
リナさんはここぞとばかりに、アルトの腕を組んだ。
「……」
「アル君……? やっぱりいや……?」
アルトは笑顔のままだ。また、リナさんが不安そうな顔をしていた。
「いいえ、緊張してただけですから。緊張、緊張」
「……」
リナさんの眉、ぴくりと上がってなかった……? あまりの速さ、見間違いかな……?
「休日なんですけど。俺、ギルドの仕事があって。休日だけは、どうしても無理ってことで」
「あ、そうだったね。アル君、ギルドに所属してるんだったねー。リナ知ってるよ、『中央ギルド』でしょ? つよーい、かっこいー」
「あー……どうも」
「ふふ、照れてる。カワイイ!」
上目遣いでリナさんは見ている。された側はひとたまりもないんじゃってくらい、それは愛らしいものだった。
「じゃあ、みんなまったねー。いこ、アル君?」
「はい。じゃあね、シャーロット」
リナさんは再び腕を組み直し、アルトに寄りかかった。アルトもされるがままだ。
「あ……」
私が返事しようとした頃には、彼らは遠ざかっていた。
着替えに戻りに女子寮に着くと、楽しそうな声がする。
「へっへっへっへっ」
子犬の笑い声と。
「あー、リッカちゃーん。春の妖精さんだねぇ」
「新しいお洋服だねぇ、可愛いねぇ」
リッカを可愛がる、女性たちの楽しそうな声だ。女子寮を管理している職員の皆さん。日々、暮らしを支えてくださっている。
女子寮のフロアで、リッカと追っかけっこをしていたり、おやつを与えていたり、リッカを撫でくり回していたり。本当に楽しそうだった。
「!」
私の匂いがしたと、リッカが走ってやってきた。珍しい恰好をしているシャーロットをただ、純粋な目で見てきていた。
「おやおやシャーロットちゃん、驚いたよ!」
「あれだね、ゼンガーさんとこの娘さんみたいだね。追っかけてたのは知ってたけど、びっくりだね」
日頃の私を見てきた彼女らからしたら、驚きは当然ともいえた。
「こんにちは。私もそう思います……」
私は死んだような目をしていた。着替えにきたのだと、皆さんも察したようで、それ以上は触れないでいてくださった。
「わふっ」
「リッカ……」
私が部屋に戻ろうとすると、リッカも後をついてきた。嬉しそうに、ちょこまかついてきている。
「一緒にお昼ごはん、食べよっか?」
「わんっ」
可愛いねぇ……。
私は結局、昼休みをリッカと共に過ごした。気にして誘ってくれた彼らには悪いと思いつつ――。
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