春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第三章

ファン離れ……?



 冬休みが近づいていた。生徒たちは浮かれ気分だった。私だって事件がなければ、テンションが上がりきっていた。
 ルイ・ゼンガー氏。そして、その娘のリナさんについて。ゼンガーさんもだけど、リナさんとの接触する機会が減ってしまっていた。彼女はアルトと一緒に過ごすようになっていた。

 今もそう。アルトの教室にやってきては、リナさんはニコニコしながら話しかけていた。

「でね、アル君? 前、一緒にいったお店あるでしょ? あそこ、カップル割してもらえたんだって。失敗したぁ」
「へえ、そうだったんですか。カップルに見えなかったんでしょうね」
「……。ほらぁ、リナってピュアピュアだったから。いちゃつきが足りなかったんだ。だからね、リベンジしよっ? 今日の放課後も行こうね?」
「放課後行くのはいいですよ。でも、俺もピュアピュアだし、緊張しちゃうんで。いちゃつくのはちょっと度胸いるなって。ヘタレでゴメンナサイ」
「……。絶対、いちゃついてやる」

 こうして二人はやりとりしていた。休み時間も放課後も。この二人は一緒に行動しているようだった。傍からみると、仲睦まじいカップルで。




「……」

 廊下を歩いていた私は自分の教室に戻ってきた。

「なあなあ、どう思う? ――最近のリナちゃん!」
「あーん、リナ様ぁ! 私達は寂しいんだけどー!」

 私に話しかけてきたのは、おなじみのファンの二人。リナさんの恋を応援しつつも、歓迎している様子でもなかった……。

 リナさんはすっかり撮影を行わなくなった。彼らファンからしてみれば、寂しくもあり不満も溜まるものだった。

 今日も撮影は行われなかった。



 しばらくしてもそう、リナさんとアルトは教室前で話し込んでいた。

 それを遠巻きに見ているのはファンたち。私もだね……。

 今日だって撮影は行われない……ファンたちとの交流だってない。

「……彼女はそれでいいのでしょうか」

 私の隣に立った青年が呟く。はい、私もそれを懸念していて――。

「!?」

 ……いやいや、突然じゃない!? 確かこの人は――。

「ああ、こんにちは。シャーロットさん、でしたよね」
「こ、こんにちは――ケインさん」

 兄であるケインさん、その人だった。気配もなくだったから、本当に驚いてしまった。心臓がまだバクバクいっている……。

「すっかり夢中ですね」

 ケインさんは、リナさんのことをそう評していた。それはそう、見るからにリナさんはアルトに夢中――恋する乙女そのものだって。誰しもがそう思わずにはいられない。
 ――誰しもが。

「……そんなもんだよね」 
「……ファンより、男だよな」

 追っかけである彼らが、不満を抱いていた。それが渦を巻いては広がっていってしまう。

「思っていたのと違う――リナ・ゼンガーって、あんなもんだったんだ」

 ファンの言い分、それが。

「それでね、アル君……あのね、リナは」

 それは、リナさん本人にも伝わっていっていて。

「リナはね……」

 リナさんの顔色が悪くなっていく。体も震えていて……。

「リナ先輩? 大丈夫ですか?」

 近くにいるアルトだって、心配になっているでしょう。彼はそっと触れようとするけれど。

「だ、大丈夫だから!」

 咄嗟に離れ、後ずさったのは……リナさんだった。アルトと距離まで置いてしまっている……?

「……そうよ、私は『リナ』なんだから」

 リナさんは呟き続けていた。彼女はアルトもそう、誰も視界に映していなくて。

「みんなが大好きな――リナ、なんだから」

 呪文のようだった。ずっと唱えていた彼女は――ようやく笑顔を見せた。

「……みんな、ごめんね? リナ、ちょっと浮かれ過ぎていたのかも」

 ファンの皆さんに向けての言葉と、あとはアルトにも。

「アル君……ごめんね? リナのこと好きなのは嬉しいの。でもね、お互いに夢中になり過ぎていたね……?」
「え、あ、はい」

 リナさんは瞳を潤ませて、申し訳なさそうにしていて。それなのに、アルトの反応はこうだ
った。

「リナはね、ファンのみんながいてこそのリナなの! 明日の放課後から撮影会を再開します!」
 リナさんは高らかに宣言した。ファンの皆さんはというと、あまり思わしくない雰囲気となっていて……。

「急に? 嬉しいけど……」
「なんか別にっていうか……」

 あまりにも放っておかれていたことが、彼らには……。
「あ……」

 ファンの心が離れてしまっている。それに焦ったのはリナさんだった。悩んだ彼女は、意を決するかのように告げることになった。その内容というのが。

「――と、特別だぞ!? リナの……リナの水着姿、見せちゃいます!」
「「「!!!」」」

 ファンたちは騒然となった。み、水着……思い切ったね、リナさん? 編入したての私より、彼らの衝撃はすごかったんだ。憧れてやまない彼女の肌が露わになるってこと、すごい衝撃だという話がしてきた。なんでも、肌を見せないことで有名だったから。夏制服でもそうだって。

「……いいんですか?」

 アルト、心配で確認していた。

「アル君、ごめんね? リナ、みんなのリナなの。妬く気持ちもわかるけど、ここは堪えてほしいなって」
「え、あ、はい」

 それでもリナさんはいつもの彼女、彼女の方から慮っていた。アルトの反応はまたしても、だった。

 場は盛り上がっていた。あのリナ・ゼンガーの水着姿、それは当然、他の生徒たちにも聞かれていた話だった。瞬く間に学園にも広まっていく。

「リナさん……」

 ファンに囲まれていて笑っている彼女……アルトが不安そうにしているのも、わかるんだ。
 リナさん、心から笑っていないんじゃないかって。私はそう思えてしまっていた。

 撮影会は明日、波乱が起こらないことを願っていた。



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