春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第三章

カップルを彩る木々たち


 週末が訪れた。大晦日の前日――イベント当日となった。


 昼からも開催されており、学年入り混じって交流がされていた。どちらの寮も解放されており、人が行き交っていた。




 日が落ちていき、夜になるとイベントは佳境に入る。ここからは高等部の生徒限定となる。告白スポットの鈴の鳴る木々に、人が集まっていく。もはやカップル成立寸前の彼らが、体を寄せ合いながら向かっていた。

「ふう……」

 私は前日の夜通しの設営準備。そして、当日の補助業務を引き受けていた。
 ロルフ君からは助かると感謝された。一番忙しそうな彼が、手伝ってくれた人一人ひとりに声をかけていた。
 ロルフ君のそういうところ、好ましいな。明るいのもそうだけれど、気遣いの人なんだね。

「それじゃ、リッカ。また出かけてくるね。行ってきます」
「うん。いってらっしゃい……すぴー」

 リッカは自室でおとなしくしていた。イベントに出れば、人気殺到ワンコに違いない。
 でも、リッカはそれを願わなかった。リッカも交流は増やしているものの、まだ、人に慣れないところはあった。

 ゆっくり。ゆっくりでいいよね。




「わあ……」

 風に吹かれて、鈴の音が鳴っていた。連続で鳴っても、耳障りにはならないのが不思議。手作りのライトが、足元を照らしていた。とても幻想的だなぁ……。
 飾り付けられた木々の下に、カップルたちが寄り添っていた。誰もが幸せそうだった。

「……」

 羨ましい、そういった気持ちが私にあった。それでいて、微笑ましくも思えていた。

「休憩から戻りました」
「おっ、シャーリーちゃん! おかえりおかえりー」

 このイベントで一番張り切っている人、ロルフ君は巡回中だった。彼は責任ある立場として、羽目を外さないように見張り役でもあったのだ。

「うん、賑わっとるわー。やって良かったー」

 ロルフ君は感慨深そうに見ていた。彼自身も初イベントだったようで、手探り感もあったって話してくれていた。それでもこれだけの賑わい、彼も感慨深いよね。

「うん、楽しそう。本当に素敵なイベントだったと思う。こういうの、きっかけになるだろうし。ロルフ君、感謝されてるよ」
「まじで。オレ、恋とりもっちゃってんじゃん? しかも、すっげーたくさん」
「そうだね。あはは、恋のキューピッドだ」

 得意になっているロルフ君が可笑しくて。私は笑った。

「そうそう、人のばっかりー。……まじ、それな」

 ロルフ君は近くの鈴の木に寄りかかった。その反動でちりんと音が鳴った。

「自分のは全然なのになー」
「そうなんだ……」

 ロルフ君が自分の恋話を語り始めた。私はそういえばと思った。
 特定の誰かと付き合っている様子もない。学外かとこっちが勝手に思っていたくらいにだった。それだけ、学園内の誰とも匂わせることがなかった。

「そうなのー。でもさ、オレだってきっかけに縋りたいわけじゃん? 口実つけてでもさ、一緒に……いられたらって」

 ロルフ君は空を見上げていた。雪が降ることもない夜空だ。

「ロルフ君……」
「……はあ。イベント放り投げて、今すぐにでもって感じ」

 ロルフ君は誰かを強く想っている――それは本気であると。

「ん? ……ごめん。無責任極まれりってね。さあ、カップル共を盛り上げてきますかぁ!」
 私からの視線に気がついたのか、ロルフ君はいつものように笑ってみせた。

「じゃ、シャーリーちゃん。続き、お願いね」
「はい」

 カップル成立した二人に、ドリンクを差し上げる仕事があった。特製のカップルドリンクだ。写真撮影やら、他にも手助けしたりする。私は今からそれを行おうとしたけれど、ロルフ君? 彼は神妙な顔をしていた。

「どうしたの?」
「いやさ、発案者のオレが言っちゃったりするけどさー? ……気まずくね?」

 二人の世界のカップルに割り込むようなものだって。コミュ力の塊のロルフ君がそう言うとは。

「そうなんだ。皆さんわりと機嫌いいし。普通に対応してくれるよ?」

 相手はなにせ浮かれに浮かれまくっているんだし。ミスをしたとしても、怒りもしない。感謝される。幸せな雰囲気にあてられることもあるが、それ以上に幸せの手助けが出来るのなら。私はそうした考え。幸せならオッケーだよね。

「これぞ他人事力! さすシャだわー」
「いや、他人事って……」
「じゃ、シャーリーちゃん! あの二人、お願いしていい? ね、ね、お願い! 他の子らもねー、半泣きなのー。激ムズなのー」

 ロルフ君は両手合わせて拝み倒してきた。どの二人かと確認してみると。

「あの二人かぁ……」

 かなり離れた位置にある木の下。最も注目の二人、リナさんとアルトだった……ええと、どういうこと?
 お互いがあさっての方向を向いていた。もっと和やかなムードなら良かった。こう、喧嘩でもしているのか。それともただ気まずいのか。割り込む方も気まずいと……確かに。

「……ううん、行ってきます」


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