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第三章
温もりも感じられるから
私は鳥籠の中にいた。またしても生を終えてしまった。刃物で複数の箇所を刺され、絞殺された。それでも今の私の肉体に損傷はない。
「う……」
もう痛みも苦しみも無い。それなのに、その感触がいつまでも残っているようだった。
「私だけではなくて……」
リナさんも。
アルトも。
犠牲となってしまった……。
「ここ、久々な気がする……」
私がそう感じる程、頻度としては減っていた。
「うう……」
頭がぼんやりとする。それでもいつもの流れで錠前の数を確認した。
「え……」
大型が一つに、中型が三つ。前からあった、それらに加えて。
――桃色の錠前が増えていた。
初めて見るものだった。ピンク色のハート型。鍵穴もいたってシンプルなもの。ただ、動きはあった。弾むように揺れていた。不規則性で、跳ねるよう。そのリズミカルな動き、ずっと見ていたら体が乗り出してしまうほどのものだった。
この錠前は執着の証ともされていた。誰かが、新たにということ……?
「いや、そんな……」
まさかとは思う。そんな執着とか……。
ただ。執着が愛情のみでなく、憎悪といったものも対象ならば。たった今、私を殺めた狂人。それも当てはまっているんじゃないかな。そんな相手だとしたら……本格的に絶望したくなる。
あの狂人なのか。それとも、他の誰かなのか。一体誰が――。
「くーん……」
「リッカ……」
とぼとぼとやってきたのはリッカ。悲しそうに鳴いてもいた。
本来ならば大晦日のはずが、日付が早まってしまった。それだけではない。殺されたのが、ルイ・ゼンガー氏ではなくて――。
「あのね、リッカ――」
「あのね、シャーリー。今は休んで」
私が今回の事件の話をしようとすると、リッカが止めた。
「お顔、真っ青なんだ」
「それは……」
「……おやすみ、シャーリー」
リッカが指摘する通り、私の顔は血の気がないって……。
「うん……」
主に精神的な負担によるもの。私の疲労は蓄積しきり、そのまま瞳を閉じた。
小鳥のさえずりがする。朝が来た。
「……」
また、繰り返しの日々が始まった。私は目を覚ますも、天井を眺めていた。いつまでもそうしたいくらいだった。
「シャーリー、起きた?」
私の顔に小さな影が覆う。リッカが心配そうに顔を覗いていた。
「……うん、起きたよ」
「うん」
リッカはぴたっと体をくっつけてきた。私の頬に柔らかい毛が触れている。くすぐったくて、つい笑ってしまった。
「……ふふ、あったかい」
リッカの高めの体温。鼓動の音も聞こえてきた。その温もりも感じられる。ああ、自分は生きているのだと、私は実感できた。
「……リッカ、私は大丈夫だよ。今回も、乗り越えよう」
「うん、シャーロット」
リッカも頷くと、ベッドから下りていった。私も体を起こして、と。
「リナさん、アルトも……」
殺されてしまったのは私だけではなかった。あの二人もそうだった。私は胸に手をあてた。
「……」
見知った人間の死を目の当たりにする。これはいつまでたっても辛いことだった。
「……アルトが待っているはずだし。急ぐね」
アルトは早朝だろうとやってくるから。このような事態だったらそうだと、納得できていた。これ以上寒空の下、待たせないように。私は手短に支度を済まそうとする。
「?」
リッカが首をかしげていた。私もつられるように首をかしげる。
「おかしいね。アルト、来てないよ」
「……そっか」
いつも訪れていた彼が来ていない。アルトも本調子じゃないよね……。
「……雪かき、しようかな」
昨日の積雪からして、今日は積もっているだろうから。今は体を動かしたい気分でもあった。
「僕も行く」
「うん、おいで」
私たちは早目に朝食をとることにした。体力をつけて、雪かきをする。そう決めたんだ。
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