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第三章
逞しいですね
しおりを挟む朝早くから雪かきに精を出していた。スコップで、雪をかきだしていく。リッカも隣で雪を掘っていた。リッカも頑張っている。掘ってる、掘ってるねぇ。
「へっへっへっへっ」
楽しそうだった。そんなリッカに癒されつつ、私はスコップを構え直した。
「……逞しいですね」
「あ」
訪れてきたのはリヒターさんだった。朝から張り切っている私と、ひたすら穴を掘っているリッカ。そこには悲壮感はなかった。
「おはようございます、お二方。私も居ても立ってもいられなくなりまして。こうして参ったわけではありますが」
リヒターさんは改めて私たちを見た。この寒さの中でも、うっすらと汗をかいている私。舌を出して息が上がっているリッカ。
リヒターさんはもう一度、『逞しいですね』って。
「……そっか、ありがとう。うん、落ち込んだりもしたし、してるけどね。今は、体を動かしたいなって」
「わんっ」
「ね、リッカ? といっても、お客様案内しないとだね。リヒターさん、家の中で待ってもらっていい?」
私はスコップを家の壁に立てかけ、リヒターさんを家に通そうとした。
「……ふふ、お借りします」
小さく笑ったリヒターさんが、立てかけたスコップを手にした。そして、要領良く雪かきを始めていた。ちょ……私は慌てる。
「いやいや、リヒターさん。私がやるから」
「いえいえ、お休みください」
「そういうわけには」
「このスコップは今や私のものです。さあどうぞ、お休みくださいませ」
「くっ……」
主導権はリヒターさんにあり……私は一度敗走した。
しばらくして戻ってきて、別のスコップを手にしていた。裏に住んでいるご年配から借りたものだった。
「ありがとね、リヒターさん。私もやるから。というか、リヒターさんより雪かきしてみせるから」
私だって長年の積み重ねがあるから。得意げに雪かきを再開していた。
「それは楽しみにしております」
「くぅ……」
リヒターさんの方がサクサクと進めていた。私も負けていられなかった。
「……ときにジェム様。アルト様、いらしてないのですね」
「……うん」
いたら真っ先に雪かきを手伝いそうな子がいなかった。リヒターさんも気になるよね……。
アルトはまだ現れることもなく、雪かきも終盤に差し掛かっていた。
雪かきを終えて、私たちは家の中に入ることにした。リッカは満足し、ソファの上で爆睡していた。
「リヒターさん、ありがとう。助かりました」
私はお茶を出した。リヒターさんは軽く一礼していた。
「お隣失礼します。砂糖とミルクあるから、好みで調整してね」
リヒターさんはカウンター席に着いていたので、私も隣に座る。カウンターにそれらを置き、味の調節は任せることにした。たとえ、彼の好みの味を知っていたとしても、こればかりは素知らぬ振りをしなくてはならなかった。
「いえ。こちらこそお気遣いありがとうございます」
リヒターさんは砂糖だけ少量入れた。それからいただきます、と紅茶を口に含んだ。
「それじゃ、私も」
私はミルクだけ入れることにした。リヒターさんは気になったのか、声を掛けてきた。
「おや、よろしいのでしょうか。普段はもっと……いえ、私は何を申しているのでしょうか。昼食時もそれくらいだったでしょうに」
「そうそう、そうなんだ。多くないよ、多くない」
最近となっては、大量投入は控えていた。正直甘味が足りてないと思いつつも、私は我慢する。
「……うーん」
私は考える。暖炉の火にあたりながら、丸まっているリッカを見る。汚れていたリッカが、綺麗になったように。あげたケープをつけ続けているのもそうなんだ。
リッカは――特異点でもあった。彼は状態が継続されているという。
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