春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第三章

……来るの、遅かっただろ




 書置きのみだった為、リヒターさんは改めて挨拶をしに。アルトはこれからの多忙な日々に備えて休息。学園に着いた彼らと別れることになった。

 私はリッカを抱っこしたまま、モルゲン先生が来るのを待っていた。今回は昼過ぎの到着だ。ここ最近では遅い方だった。

「……」

 リナさんの撮影は昼からだ。もう始まっているのでしょうね。意識していけば、撮影現場に被らなくて済む。それさえなければ、自分とリナさんの接点はないだろうと。

「それでいいんじゃ……」

 リナさんと出逢ったこと自体が、あの惨劇を招いたのなら。私が考えに囚われ、深く入り込もうとしていた時。

「――よう、待たせたな」

 明るい声に呼び戻された。

「……いえ、こちらの方こそ」

 門にいらしたのは先生。彼は門番さんたちに挨拶をして、私たちを連れていった。




 教職員寮に向かっていた。人気が無いのを確認すると、先生は尋ねてきた。

「今回、あいつらいないんだな」
「はい。それぞれの用がありまして。それと、情報のすり合わせも済んでまして。アルトの方からも説明してくれると」
「はぁ、段取りのいいことだ。なら、学園長室直行だな」
「はい。それと先生――」

 先生にもお伝えしよう、そう思っていたところ。

「ふう……」

 息を吐いたのは先生。そこからは絞り出すような声だった。

「……来るの、遅かっただろ。何事かと思ってた」
「すみません、先生……」

 先生からしたら、だった。ここ最近では早く来るようになったのに、今回は違っていた。直近の終わり方も尋常ではなかった。何かあったと思うよね……。

「……いや、いい。あれだな! 俺からも行けばいいんだよな。いいよな、教師が行っても。な、シャーロット?」
「それはまあ……」
「でも、まあ。そうだな。行き違いがあってもなんだよな。はあ……損な役割だ。どっしり構えるのがベストなのか? なあ?」
「それはまあ……私では答えが出せないかなと」
「だよな。俺が出すべき答えだ」

 先生は私の肩に触れようとするも、そこは寸前で踏みとどまった。

「おっと、また言われるからな。さ、俺が出来ることだ。行くとするか」
「よろしくお願いします――」

 先生の表情に明るさが戻っていた。彼はリッカを見る。

「リッカはアルトのところか?」
「いえ、今回は私のところで。お留守番してもらいます。リッカ、いいかな?」

 アルトともそのように話がついていた。リッカもわんっと返事した。リッカを女子寮の部屋に送り届け、本校舎へ――。



 学園長室前にやってきた。ここから入学やリッカの件で申請することになる。先生がノックをしようとしたけれど、その手を下げていた。

「……話し声、するな。先客がいる」
「先生、もしかしてですが」
「ああ――ルイ・ゼンガーの可能性が高い」
「……」

 はい、先生。ルイ・ゼンガーでほぼ決まりでしょう。かなりの長話のよう、あの話好きの学園長が話し込んでいるのかもしれない。

「……あの人は」

 イベントの乱入者。あの狂人の最大候補は――ルイ・ゼンガー。。彼には記憶が無いだろうと、こちらにはある。

「……出直すか。どのみち客人がいるんじゃな。こちらは何も出来ないわけだ」
「あ……」

 先生は私の肩を軽く叩いた。落ち着かせるかのようだった。

「訴えても怒ってもいいぞ。俺が……そうしたくなったんだからな」
「……いえ」
「そうか」

 私にとっては、心休まる行為だった。咎めることなんてする気も起きなくて。




 モルゲン先生とは一旦別れた。夕方に再度訪れることになったので、そこまでの時間は空くことになった。

 まだリナさんの撮影会はやっているかもしれない……確認しに行こう。

「大丈夫、大丈夫だから……」

 遠巻きで良かった。リナさんが生きている姿。それが確認できれば、私はそれで良かった。



 
 階段の次は、玄関口での撮影だった。その流れを追っても、リナさんの姿はなかった。校舎内を探し回ることにした。



「……」

 校舎内どこを探しても、リナさんの姿はなかった。となると、校舎の外かな。この広い学園内を捜索か。

「ううん、平気。全然平気」

 自治委員活動でどれだけ歩いたことか。学園と店との往復でどれだけ歩いていることか。とはいえ、当てずっぽうは避けたかった。リナさんが行きそうな場所を想像する。

「……あそこかな」

 春の女神ゆかりの泉、リナさんが一人で訪れていた場所だ。そこは、鈴の鳴る木を通り抜けた先にある。そこに向かうことにした。



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