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第三章
染められる日々②
「三十日……?」
私は靄がかる頭の中、思い出す。どうも、この姿になると頭が朦朧としていた。そんな中、話はどんどん進んでいく。
「アル君がぎゃあぎゃあ言おうとね、決定なんでー。要はね、みんなでリナのコスプレしちゃおってこと! 参加条件は、楽しんでコスプレしてくれれば、それで良し! ポイントだけでもいいし、クオリティとかそういうのはいいのっ」
「ま、まあ? そっちは勝手にやればいいんじゃないですか? 三十日、別にイベントがあってもいいかなーって?」
本来は別のイベントもあったはずと。アルトは発案者をちらりと見た。あれだけ賑やかなロルフ君が何も言ってこないの、私もすごく気になる。
「なに、どうかしたの? 会場もね、鈴の鳴る木にしたの! ぜったい雰囲気いいでしょ、これ」
リナさんは胸をときめかせていた。でもね、あの惨劇を知る側からしたら、どうにも落ち着かない。ここまで、日付も会場まで合致するものかと。
「委員長にもね、承認をもらいましたー。決定事項でーす」
「……さようでございますか。こちらでも確認させていただきますね」
リナさんはリヒターさんを牽制しているかのようだった。彼もはいそうですかとは聞き入れられないようで、一度持ち帰ることにしていた。
ともあれ、この強制力。リナ主催のイベントを覆すことは困難そうだった。周りも盛り上がっている。リナさんは学園の人気者。この機会に近づきたい人も多くいるよね。
「ぐぬぬ、リナ先輩のコスプレって……」
アルトは参加条件に頭を悩ませていた。それでも思ったより早く決断した。
「……こんなん、男の娘になるしかないじゃん。はいはい、リナ先輩! 俺も参加します!」
アルトの発言にどよめきが発生した。アルトは正々堂々と手を上げている。何もおかしなことは言ってないと主張していた。
「がちで仕上げてくるんで! でもって、シャーロットと一緒に参加したいです!」
アルトの上げられた手はまっすぐに垂直に。これでもかと主張していた。どよめきつつも、クラスからは期待の目が上がっていた。綺麗な顔立ちでいて、これだけの全力ぶりである。出来栄えに期待できそうだと、歓迎されていた。
「……ごめん、アル君は不参加で。あのね、男の子でも女の子でもね? リナのコスプレは大歓迎なの。そこにラブとリスペクトがあればね? でも、アル君はちょっと――なんかむかつくから」
リナさんは冷たい目をアルトに向けていた。理由もまた酷かった。
「……は? いや、参加するんで。絶対参加してやるんで。リヒターも巻き込んでやる」
この子がそれで引き下がるわけがなかった。リヒターさんまで引き入れようとしていた。
「……。はい、かしこまりました」
間があったものの、リヒターさんも承諾していた。それで参加条件クリアとなるのならと。
「なにそれ、ちょー見たいかも。リッヒはいいよ。ウェルカム」
「光栄でございます」
リナさんもワクワクしていた。ご機嫌に私の顔を見てきた。
「ね、楽しみだね? ……どしたの?」
「あ、すみません……」
私はぼうっとしたままだった。話もほとんど聞けてない状態だった。アルトが男の娘どうこう、リヒターさんまでもそうだとか。本当におぼろげだった。にわかに信じがたい内容だったので、幻聴とまで思っていた。
「うーん、シャーロット。ううん……違う、『リナ』かな?」
「……リナさん、どういうことでしょうか?」
「そう、その喋り方も! ちょっと、リナっぷりが足りてないかな? ――いい? イベントまでにはあんたも徹底的に仕上げてくること!」
リナさんは不満顔だった。せっかくお揃いなのに、私のリナになりきりっぷりが足りてないと、指摘してきた。そして、耳打ちしてきた。
「……お願い。『外』では、ちゃんとやって? ほら、今もね? ……狼たちが狙っているでしょ?」
「……?」
「狙ってるの。でもね、リナでいたら不安も心配もなくなるから。ねっ?」
リナさんの目は真剣だった。本当に――『リナ』でさえいられたら、万事不安などないと思っているようだった。
「ほんと、うざったいなぁ……いつでもいつまでもまとわりついてきてさぁ?」
リナはさん『狼』扱いの彼らにも睨みをきかせた。
「……うん、わかった。頑張るね」
私も頷いた。リナさんがそう望むなら。自分をこんなにも思っている彼女が望むなら。
私――リナだってそうしたかった。
「ん、良い子」
リナさんはご満悦そうだった。頭まで撫でて回してきた。心地いいな……。
「ぐぬぬ……」
「ふふん」
悔しそうに見ているアルトに、優越感を覚えていた。
「……よろしいのでしょうか、ロルフ様」
ロルフ君はここまで無言だった。真意が見えないとリヒターさんは彼に問う。
「……ん、いいんじゃない? オレ、参加しないし。他に予定立てるし」
「……かしこまりました」
ロルフ君がそうならと、リヒターさんもそれ以上は、だった。
「――おっと。もう、クラスに戻らないと。ほら、アル君も出た出た」
「ちょっ、先輩……」
アルトは思ってもみない馬鹿力で廊下に押し出されていた――あの細腕から?
「またね? お昼、一緒に食べよ? あとね、今日の放課後、温水プールで撮影もやるからね?」
「うん……」
「それから、今日もお泊りね? で、明日も明後日も――ずっと、一緒だからね」
ずっと、一緒。うん、そっかぁ……。
「うん――リナもね、嬉しい」
私は靄がかる頭の中、思い出す。どうも、この姿になると頭が朦朧としていた。そんな中、話はどんどん進んでいく。
「アル君がぎゃあぎゃあ言おうとね、決定なんでー。要はね、みんなでリナのコスプレしちゃおってこと! 参加条件は、楽しんでコスプレしてくれれば、それで良し! ポイントだけでもいいし、クオリティとかそういうのはいいのっ」
「ま、まあ? そっちは勝手にやればいいんじゃないですか? 三十日、別にイベントがあってもいいかなーって?」
本来は別のイベントもあったはずと。アルトは発案者をちらりと見た。あれだけ賑やかなロルフ君が何も言ってこないの、私もすごく気になる。
「なに、どうかしたの? 会場もね、鈴の鳴る木にしたの! ぜったい雰囲気いいでしょ、これ」
リナさんは胸をときめかせていた。でもね、あの惨劇を知る側からしたら、どうにも落ち着かない。ここまで、日付も会場まで合致するものかと。
「委員長にもね、承認をもらいましたー。決定事項でーす」
「……さようでございますか。こちらでも確認させていただきますね」
リナさんはリヒターさんを牽制しているかのようだった。彼もはいそうですかとは聞き入れられないようで、一度持ち帰ることにしていた。
ともあれ、この強制力。リナ主催のイベントを覆すことは困難そうだった。周りも盛り上がっている。リナさんは学園の人気者。この機会に近づきたい人も多くいるよね。
「ぐぬぬ、リナ先輩のコスプレって……」
アルトは参加条件に頭を悩ませていた。それでも思ったより早く決断した。
「……こんなん、男の娘になるしかないじゃん。はいはい、リナ先輩! 俺も参加します!」
アルトの発言にどよめきが発生した。アルトは正々堂々と手を上げている。何もおかしなことは言ってないと主張していた。
「がちで仕上げてくるんで! でもって、シャーロットと一緒に参加したいです!」
アルトの上げられた手はまっすぐに垂直に。これでもかと主張していた。どよめきつつも、クラスからは期待の目が上がっていた。綺麗な顔立ちでいて、これだけの全力ぶりである。出来栄えに期待できそうだと、歓迎されていた。
「……ごめん、アル君は不参加で。あのね、男の子でも女の子でもね? リナのコスプレは大歓迎なの。そこにラブとリスペクトがあればね? でも、アル君はちょっと――なんかむかつくから」
リナさんは冷たい目をアルトに向けていた。理由もまた酷かった。
「……は? いや、参加するんで。絶対参加してやるんで。リヒターも巻き込んでやる」
この子がそれで引き下がるわけがなかった。リヒターさんまで引き入れようとしていた。
「……。はい、かしこまりました」
間があったものの、リヒターさんも承諾していた。それで参加条件クリアとなるのならと。
「なにそれ、ちょー見たいかも。リッヒはいいよ。ウェルカム」
「光栄でございます」
リナさんもワクワクしていた。ご機嫌に私の顔を見てきた。
「ね、楽しみだね? ……どしたの?」
「あ、すみません……」
私はぼうっとしたままだった。話もほとんど聞けてない状態だった。アルトが男の娘どうこう、リヒターさんまでもそうだとか。本当におぼろげだった。にわかに信じがたい内容だったので、幻聴とまで思っていた。
「うーん、シャーロット。ううん……違う、『リナ』かな?」
「……リナさん、どういうことでしょうか?」
「そう、その喋り方も! ちょっと、リナっぷりが足りてないかな? ――いい? イベントまでにはあんたも徹底的に仕上げてくること!」
リナさんは不満顔だった。せっかくお揃いなのに、私のリナになりきりっぷりが足りてないと、指摘してきた。そして、耳打ちしてきた。
「……お願い。『外』では、ちゃんとやって? ほら、今もね? ……狼たちが狙っているでしょ?」
「……?」
「狙ってるの。でもね、リナでいたら不安も心配もなくなるから。ねっ?」
リナさんの目は真剣だった。本当に――『リナ』でさえいられたら、万事不安などないと思っているようだった。
「ほんと、うざったいなぁ……いつでもいつまでもまとわりついてきてさぁ?」
リナはさん『狼』扱いの彼らにも睨みをきかせた。
「……うん、わかった。頑張るね」
私も頷いた。リナさんがそう望むなら。自分をこんなにも思っている彼女が望むなら。
私――リナだってそうしたかった。
「ん、良い子」
リナさんはご満悦そうだった。頭まで撫でて回してきた。心地いいな……。
「ぐぬぬ……」
「ふふん」
悔しそうに見ているアルトに、優越感を覚えていた。
「……よろしいのでしょうか、ロルフ様」
ロルフ君はここまで無言だった。真意が見えないとリヒターさんは彼に問う。
「……ん、いいんじゃない? オレ、参加しないし。他に予定立てるし」
「……かしこまりました」
ロルフ君がそうならと、リヒターさんもそれ以上は、だった。
「――おっと。もう、クラスに戻らないと。ほら、アル君も出た出た」
「ちょっ、先輩……」
アルトは思ってもみない馬鹿力で廊下に押し出されていた――あの細腕から?
「またね? お昼、一緒に食べよ? あとね、今日の放課後、温水プールで撮影もやるからね?」
「うん……」
「それから、今日もお泊りね? で、明日も明後日も――ずっと、一緒だからね」
ずっと、一緒。うん、そっかぁ……。
「うん――リナもね、嬉しい」
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