春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第三章

彼の命を守ったあと





「……派手にやったなぁ」

 向こうからやってきたのは先生だった。ぬいぐるみ化が解けるには早すぎるから、彼は難を逃れていたんだね。

「リナは……気を失っているだけか」
「はい。本当に良かった……」

 私はリナさんに寄り添った。このままおぶさって、彼女を連れて行けそう。

 次に、先生が確認したのは、氷漬けのルイ・ゼンガー。

「思いきったことしたなぁ」
「はい。でも、後悔してません」

 この後の式典はルイ・ゼンガーは不在となる。彼は自然解凍に任せることしたから。

 私たちはリナさんをとった。だから後悔はしていない。

「まあ、溶かせるんだけどな」
「そうでしたね……」

 先生ならそれが出来ますよね。女神像破壊事件の時にも実証されていましたから。となると、先生。今回も溶かすのでしょうか――。

「人目つかないとこ、俺の方で運んでおく――凍らされたとバレたらまずいからな」
「先生……」

 私たちは望ましくても、先生はいいのかな……? 立場がある彼からしたら、正しいこととはいえない行為。俯いて、私は考えていた。

「俺はな」

 先生の声、私は顔を上げる。そこにあったのは優しい顔だった。

「お前――お前たちの意志を尊重したい」
「よいのですか、先生……?」
「ああ」

 先生は深く頷いていた。それから、こうとも。

「それにだ。俺も聴く気になれなくてだなぁ……」
「ああ……」

 私たち……色々知ってしまいましたから。

「くーん……」
「リッカ……」

 リッカの尻尾は垂れ下がっていた。おうた、楽しみにしていたから……でも、リッカはすぐに首を振った。

「僕もね、これで良かったって……」

 それ以上は途切れていたけれど、リッカは私の足元に寄ってきた。大丈夫だよ、と伝えたそうに。

「……まあ、あれだ。ぬいぐるみの方も解けるだろうし、後は俺が引き受けておく……色々とな。それくらいはさせてくれ」
「ありがとうございます、先生……」
「ああ」

 それじゃあな、と先生は去ろうとする。

「そうだな、今度こそ言えるな――良いお年を」
「……はい。良いお年をお過ごしください」

 ようやくですね、先生。去っていく彼の背中を見送った。

「うん……そうだね、そうなんだ」

 リッカが尻尾を振っていた。そう、なんだかんだでやり遂げたんだ。

「うん、リッカ!」

 ルイ・ゼンガーは無事だった。殺害事件を防ぐことができた。

 やっと新しい年が迎えられる。そのような清々しい気分だった。








「ん……」

 リナさんの意識が戻った。彼女にとっては見慣れた天蓋付きのベッド。目覚めた先、側にいたのは私だった。

「気づかれたんですね、良かったです」

 リナさんが無事だったことに安心し、微笑んだ。

「私は……」

 リナさんは自分の手の平を見たあと。

「……私、殺すところだったんだ」

 ……涙を零した。

「どれだけあの人が憎くても、それだけはって思ってたのに……。私、親代わりの人、殺すところだった」

 彼女はじっと、その手を見つめたまま。

「止めてくれてありがとう……でもね。きっと私のやろうとしたことは消えない。罪だって――」
「リナさん」

 私は彼女に寄りかかって、抱きしめた。

「あなたの手は汚れてない。綺麗なままです」
「……馬鹿なこと、言わないでよ。私は――」
「はい、馬鹿げてる、間違っている、正しくないと言われようと。私は、あなたが踏みとどまってくれたって思ってるから。被害も無かったんですから」

 私はリナさんを抱きしめながら、改めて思ったことがあったんだ。

「……私、思ったんです。この世界が人を勝手に罪人にするなら――こっちだって、好きにしてやるって。いい加減、そう思いました」

 これまでの日々の中を経てきたこと。

 そちらがそのつもりなら、こちらはこうするまで。

「……シャーロット?」
「すみません、何の話ってなりますよね」

 リナさんから離れた私は、眉を下げて笑っていた。

「あんた……」
 リナさんは見つめていた。未遂とはいえ、罪を犯そうとした者を許そうとしている私を。
 それだけではない。私がこの世界に……理不尽さに、どれだけ怒りを覚えているかを。

「あんたは、何者なの」

 リナさんにしてみれば、不可解な存在であると。

「私は……」
「……ううん。今はいい。そういえば」

 リナさんはベッドから起き上がった。本調子になってきたようで、歩き出す。

「アル君とかリッヒ、帰った? 私、お礼言いたくて」
「まだ帰ってません。遠慮して、廊下で待ってるって……」

 リナさんの付き添いとして、私がいれば充分だって。彼らもそうだし、リッカも廊下で待機していた。

「……紳士か――ううん、外、出よう」
「はい」


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