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第三章
キミがどうして?
しおりを挟む暗い部屋の中。リッカがベッドの上、毛布にくるまって寝息を立てていた。
静かだ。私は両親のことを思い出していた。前世の両親のことを……。
「……ごめんね。お父さん、お母さん。ごめんね」
二人を遺して逝ってしまった。それも教師と一緒に。遺された二人は、色々言われてたとしたら。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい……」
両親の期待に応えられなかったこと。
「ヒナタちゃん……」
前世での幼馴染だった子。あの子は優しくて朗らかな子だったな。
冬花はあの子まで置いて逝ってしまったんだよね……逢いたかったな。
「はは……冬花ってなんだろね」
思い出せば出すほど、冬花の人生は何だったのかって思っていた。あんな醜聞まみれに死ぬことになってしまった。遺された二人のことを思うと。
「……あ」
暗闇に光るのは二つの目。リッカが起きて、私を見つめていた。いつも熟睡して起きなかったリッカが。
声が煩かったかな……ううん、違うね。リッカはただ、不安に揺れる私を察知しただけだった。責める気持ちは彼にはないんだ。
「ごめんね」
「ううん」
リッカは首を振って、枕元に近づいた。私に体を寄せて、そこで丸くなった。
「……ふふ、ありがとう」
リッカはいつだって優しい。リッカといると、私の暗い部分も和らいでいく。リッカは不思議な子だね。
「お父さん、お母さん……あのね」
私はね、思うの。冬花の人生にだって、意味はあったんだって。
そして、今は違う世界で生きているということ。
――氷の力を持つ、小さな魔法屋の店主。シャーロット・ジェムとして。
「……」
私は生きている。最初の世界でも不意に訪れた死。それは、転生した後でも続いていた。
死が、何度も襲ってくるんだ。
それでも、私はこの世界で生きている。
生き抜いていくんだ。
この日の夜も、鳥籠の夢を見た。
「えっ……」
長閑な一日との落差が激しかった。また、事件が発生して自分はここに戻されてしまったかと思い、振り返る。
「……ううん、そんなことはない」
それは違うと否定した。事件は起こってない。
ただ単に鳥籠の夢を見ただけかな。何もなくてもこの夢を見ること、昔からあることでもあったから。
「……ほんと、静か」
鉄製の鳥籠の中。誰も訪れることもなく、そう思っていたけれど――。
「……?」
足音がする。靴の音。となると、リッカではない。アルトか、リヒターさんかな。それともリナさん?
「……ああ」
目の前で錠前を作り出した謎の人だったり? それとも、見知らぬ人物か。
「……」
私は息を呑む。
「――ちゃん」
「え……」
私は目を大きく見開いた――思わぬ人物だったから。
この鳥籠の夢は、私を囚われの身とさせるもの。それも、執着によるものだという。そのような場から、そのイメージから遠そうな人物が、ここに現れたのだから。
「どうして……」
「……どうしてって、オレも知りたいってー。ほら、大晦日過ぎたらって、話してたでしょ? そう考えてた。そしたらさ、こうよ」
話したいことがあるとは、確かに言っていた。だからって、この夢の中にふらっとやってくるとか……。
「……ロルフ君」
私との繋がりは、せいぜい隣の席の同級生。そのはずの彼がここにいた。どうしてかわからない……。
「……ここ、なに? 単なる夢?」
ロルフ君は存外冷静だ。それどころか、どこか冷めた目をしていた。
「そ、そう。夢。私も危ないとか、そんなんじゃないから」
「でも、出られないんでしょ」
「それは、うん……」
ロルフ君は冷静に指摘してきた。彼が次に目をつけたのは、錠前だ。
「あれがキミを閉じ込めているんだ」
「……うん」
「そっか……三つか、どうにかしないと、そんなとこか」
ロルフ君は注視していた。そんな彼は、私に問いかけてきた。
「……キミは、そのままでいいの」
「え……」
「だって、この檻。ひどくね? キミを思ってのことじゃないでしょ。こんなところに、閉じ込めて」
「ロルフ君、それは」
ロルフ君は静かに怒っているようだった。矛先は――この鳥籠に向けて?
「私もね、出たいよ。でもね、ロルフ君。君は関わらない方がいいよ。その方がいい」
ロルフ君は鳥籠の存在をよく思ってない。私としてもね、ドロドロとした思いが取り巻くこの檻に、彼は関わらせたくなかった。それこそ――太陽のような彼には。
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