春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

文字の大きさ
253 / 557
第三章

キミがどうして?

しおりを挟む


 暗い部屋の中。リッカがベッドの上、毛布にくるまって寝息を立てていた。
 静かだ。私は両親のことを思い出していた。前世の両親のことを……。

「……ごめんね。お父さん、お母さん。ごめんね」

 二人を遺して逝ってしまった。それも教師と一緒に。遺された二人は、色々言われてたとしたら。

「ごめんなさい。本当にごめんなさい……」

 両親の期待に応えられなかったこと。

「ヒナタちゃん……」

 前世での幼馴染だった子。あの子は優しくて朗らかな子だったな。
 冬花はあの子まで置いて逝ってしまったんだよね……逢いたかったな。

「はは……冬花ってなんだろね」

 思い出せば出すほど、冬花の人生は何だったのかって思っていた。あんな醜聞まみれに死ぬことになってしまった。遺された二人のことを思うと。

「……あ」

 暗闇に光るのは二つの目。リッカが起きて、私を見つめていた。いつも熟睡して起きなかったリッカが。
 声が煩かったかな……ううん、違うね。リッカはただ、不安に揺れる私を察知しただけだった。責める気持ちは彼にはないんだ。

「ごめんね」
「ううん」

 リッカは首を振って、枕元に近づいた。私に体を寄せて、そこで丸くなった。

「……ふふ、ありがとう」

 リッカはいつだって優しい。リッカといると、私の暗い部分も和らいでいく。リッカは不思議な子だね。

「お父さん、お母さん……あのね」

 私はね、思うの。冬花の人生にだって、意味はあったんだって。

 そして、今は違う世界で生きているということ。

 ――氷の力を持つ、小さな魔法屋の店主。シャーロット・ジェムとして。

「……」

 私は生きている。最初の世界でも不意に訪れた死。それは、転生した後でも続いていた。

 死が、何度も襲ってくるんだ。

 それでも、私はこの世界で生きている。

 生き抜いていくんだ。




 この日の夜も、鳥籠の夢を見た。

「えっ……」

 長閑な一日との落差が激しかった。また、事件が発生して自分はここに戻されてしまったかと思い、振り返る。

「……ううん、そんなことはない」

 それは違うと否定した。事件は起こってない。

 ただ単に鳥籠の夢を見ただけかな。何もなくてもこの夢を見ること、昔からあることでもあったから。

「……ほんと、静か」

 鉄製の鳥籠の中。誰も訪れることもなく、そう思っていたけれど――。

「……?」

 足音がする。靴の音。となると、リッカではない。アルトか、リヒターさんかな。それともリナさん?

「……ああ」

 目の前で錠前を作り出した謎の人だったり? それとも、見知らぬ人物か。

「……」

 私は息を呑む。

「――ちゃん」
「え……」

 私は目を大きく見開いた――思わぬ人物だったから。
 この鳥籠の夢は、私を囚われの身とさせるもの。それも、執着によるものだという。そのような場から、そのイメージから遠そうな人物が、ここに現れたのだから。

「どうして……」
「……どうしてって、オレも知りたいってー。ほら、大晦日過ぎたらって、話してたでしょ? そう考えてた。そしたらさ、こうよ」

 話したいことがあるとは、確かに言っていた。だからって、この夢の中にふらっとやってくるとか……。

「……ロルフ君」

 私との繋がりは、せいぜい隣の席の同級生。そのはずの彼がここにいた。どうしてかわからない……。

「……ここ、なに? 単なる夢?」

 ロルフ君は存外冷静だ。それどころか、どこか冷めた目をしていた。

「そ、そう。夢。私も危ないとか、そんなんじゃないから」
「でも、出られないんでしょ」
「それは、うん……」

 ロルフ君は冷静に指摘してきた。彼が次に目をつけたのは、錠前だ。

「あれがキミを閉じ込めているんだ」
「……うん」
「そっか……三つか、どうにかしないと、そんなとこか」

 ロルフ君は注視していた。そんな彼は、私に問いかけてきた。

「……キミは、そのままでいいの」
「え……」
「だって、この檻。ひどくね? キミを思ってのことじゃないでしょ。こんなところに、閉じ込めて」
「ロルフ君、それは」

 ロルフ君は静かに怒っているようだった。矛先は――この鳥籠に向けて?

「私もね、出たいよ。でもね、ロルフ君。君は関わらない方がいいよ。その方がいい」

 ロルフ君は鳥籠の存在をよく思ってない。私としてもね、ドロドロとした思いが取り巻くこの檻に、彼は関わらせたくなかった。それこそ――太陽のような彼には。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

彼氏がヤンデレてることに気付いたのでデッドエンド回避します

恋愛
ヤンデレ乙女ゲー主人公に転生した女の子が好かれたいやら殺されたくないやらでわたわたする話。基本ほのぼのしてます。食べてばっかり。 なろうに別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたものなので今と芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただけると嬉しいです。 一部加筆修正しています。 2025/9/9完結しました。ありがとうございました。

転生したら、乙女ゲームの悪役令嬢だったので現実逃避を始めます

山見月あいまゆ
恋愛
私が前世を思い出したのは前世のことに興味を持った時だった 「えっ!前世って前の人生のことなの。私の前の人生はなんだろう?早く思い出したい」 そう思った時すべてを思い出した。 ここは乙女ゲームの世界 そして私は悪役令嬢セリーナ・グランチェスタ 私の人生の結末はハーッピーエンドなんて喜ばしいものじゃない バットエンド処刑されて終わりなのだ こんなことを思い出すなら前世を思い出したくなかった さっき言ったこととは真逆のことを思うのだった…

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

処理中です...