春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第四章

プロローグ――縋られた日々②

 先生は無言だった。それが怖かった。判決を引き延ばされているようだった。

 私の言葉は偽りのないもの。冗談だとも言えなかったもの。それでも、先生を困らせてしまったんだって。突然でもあったから、謝ろうとしていた。

 気づけば、私は抱きしめられていた。先生は、自分も同じ気持ちだって。もちろん、冗談でもないと。
 私の頭は混乱していた。夢でも見ているかと思ったけど、そうじゃなかった。


 それから密かな交際は続いた。先生は人望もあって、そしてとにかくモテる人だった。疑惑もつきまとうばかりで。色んな女性の存在や、将来を約束した相手がいるとか。そんな噂を耳にしてばかりだった。

 私は信じ続けてきたけど、私たちが結ばれることはなかった。卒業式の日、記憶は曖昧。だけど、私たちは確かに揉めていた。屋上での諍いもあって、結果が――。

 皇冬花の人生はここまで。



「……」

 もしも、って考える。

 あの時、海を見に行かなければ。先生について行かなければ――先生に告白してなけれれば。
 全部が間違っていたって言われたら……それまで。私も後悔しているところばかり。でもね。
 間違っている恋と言われても、私は幸せだったの。片桐先生に出逢って、恋をして。それは幸せだったこと。

 辛い思い出としか、今は残ってないけれど。その時は、確かに幸せだったんだ。

 今、こうして新しい人生を生きているよ。ここでも迷ってばかり。正しい道、選択を選んだとか……中々言い切ることは出来ない毎日。

「ふふ、へそ天だ」

 モフモフの君は、おへそを天井に向けていた。仰向けで大爆睡、本当に気持ち良さそう。
 気候が温暖な土地、穏やかで温かい風。この土地ならではだね。
 モフモフの寝顔を見て、私の沈んだ気分も浮上してきた。この子の存在もまた、私の心の支えでもあるから。

 正しく生きているかはわからない。でも、懸命には生きている。それは確かだと思った。大切なこの子や、今の私によくしてくれる人たち。彼らと共に、私は生きているんだ。

 私はね、新しい世界で生きているよ。
 ――氷の力を持つ、小さな魔法屋の店主。シャーロット・ジェムとして。

 まだ、夜は明けてない。でも、マジックアワーも終えて、夜が明けた時には――。

「……」

 私は、今この場にいない『彼』を思い浮かべた。今回の当事者でもあった『彼』のこと。

 夜が明けてしまう。そうしたら。

 夢から醒めてしまう。

 魔法が溶けてしまう。

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