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第四章
なでなでボーナスタイム
新しい年を迎え、平和で穏やかな日々は続いていた。新たに事件が発生することもなく、トラブルが発生することもない。
私は冬休み期間中も忙しさに追われていた。仕事のことや、冬休みの課題のこと。日々に忙殺され続け、それでも私は平和な日常を堪能していた。
そして、冬休み最終日の夜。私は女子寮の自室でくつろぐことにした。傍らにいるのは。
「へっへっへっへっ」
モフモフに定評がある白い子犬、リッカだった。ベッド下に座る私に体をくっつけていた。この状態にご満悦のようで、口元が緩んでいた。尻尾も小刻みに揺れている。
「ああ……」
私も締まりのない顔をしていた。リッカの背中を撫で繰り返していた。
一緒に暮らすようになったリッカ。この子も繰り返しの日々の記憶を有している。
純粋であり、怖がりでも優しいリッカもまた、私の心の支えとなっていた。
「えへへ、シャーリー。ありがと」
今喋ったのは、こちらの可愛いワンコ。リッカは人の言葉を喋ることも出来た。たどたどしい点もあるものの、十分伝わるものだった。伝わってるよ、伝わっているからね、リッカ……!
「いいんだよ、いいんだよリッカ。いくらでも撫でるから」
「わーい」
私の撫でる勢いは増していく。リッカもまた、はしゃいでいた。
「……」
そんな私たちを見ている存在があった。部屋の隅で。気配を消して。そんな……。
「……。リナさんもいかがでしょうか?」
「!」
私はリッカに夢中になりつつも、来客の存在は忘れてはいなかった。
夕飯後に喋りたいということで、私の部屋に集まっていた。
「もう!」
相手からは、せっかく気配を消していたのにと睨まれてしまった。
リナ・ゼンガー。国民的歌手の娘であり、学園の有名人――アイドル的存在な彼女。
直近の事件の被害者の息女ということもあり、関わることになった人物だった。ちなみに一つ上の先輩でもあった。
リナさんは以前は別の場所で暮らしていたけれど、この度女子寮に移ることとなった。私と同じ階でもあった。
「ほら、リナさん。ワンコ苦手なの克服したでしょうし。リッカ、温和だから大丈夫ですよ」
私はリッカを抱えると、壁際にいるリナさんにじわりじわり近づいていった。
「ちょ、ちょっと! そりゃ、私、克服はしたけど! いい子だってわかってるけど。で、でも? 進んでまでとか――」
一方、リナさんはリナさんで抵抗したままだった。
出逢った当初は、リナさんはガチガチの犬嫌いだった。それが、今では軟化したものだった。大きく前進したものの、まだ積極的に関わろうとはしない。
「僕ね、リナにも撫でてほしいっ」
「うう、勝てない……」
リッカはつぶらな瞳をリナさんに向けてきた。何とも期待に満ち溢れた目だった。ここまでされては、彼女も抗えなくなった。降参状態の彼女は遠慮がちにリッカを撫でた。リッカも嬉しそうにしていた。
「ふふ、リッカ。いい子だねぇ、お利口さんだねぇ」
「まったくもう……リっちゃんだけだからね? 他のワンちゃんには、簡単にはしないんだからねっ」
「へっへっへっへっ」
女子二人に体中を撫で回され、リッカは仰向けになった。私の目が光った……ビッグチャンス!
「リナさん、ボーナスタイムです。お腹、撫でるチャンスですよ。ゆっくり撫でてあげてください」
「ボーナスタイムて。えっと、お腹弱点でもあるんだっけ? そっとね、そっと……」
リナさんは若干引きながらも、乗ってくださった。
「わふっ」
リッカはお腹を撫でられながら、足をじたばた動かしている。私はもちろんのこと、ふふ、リナさんまで。揃ってデレデレ顔になっていた。
そんな幸せな時間は、消灯直前まで続くこととなった。
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