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第四章
夜遊び巫女様
「……シャーロットさん? まだいらしたの?」
「わっ……」
び、びっくりした……! もう出てこないと思っていたのに、扉が開いたところだから。
そこにいたのは――きょとんとしたクラーラさん……何故!?
「あら、びっくりさせちゃった。ごめんなさいね?」
「いえ、そんなことは……」
「そう? ――それじゃ、今度こそおやすみなさい」
「はい、おやすみなさ――」
クラーラさん、自室ではなく、階段を下ろうとしている……? 私は訳が分からないながらも、確認をとってみた。
「今から、出掛ける気でしょうか? まずいでしょうし、危ないのでは……?」
「ふふ、大丈夫よ――あなたさえ、黙認してくれたら。心配にも及びません、近くに迎えもきていますから」
クラーラさんは蠱惑的に笑ってみせた……迎え?
「迎えって……」
「ええ、近くまで迎えに来てくれるの。――今夜のお相手、夜を共に過ごす方。ほら、女子寮には招けないでしょう?」
クラーラさんは私の耳元に口を寄せた。秘め事を語るかのように、そう話すものだから。
「え……」
私は耳を疑うばかり。というか、思考が追いつかないというか……!
よ、夜を共に過ごすって……その意味はさすがに……。
「……気晴らしよ、気晴らし。本当に良い気分転換になるから――何もかも忘れさせてくれる」
クラーラさんは遠い目をしていた。彼女にまとわりつく重圧、それに耐えられないから。だから彼女は夜の街に溺れようというの……?
「あなたは居合わせてしまっただけ。見逃してくれないかしら……ねえ、シャーロットさん?」
「……」
ぬかりがないのか、これまで噂になったことすらない。周りに気づかれないように、クラーラさんはそうしてきたんだ……。
「……それなら、話相手になれたら良かったです。相槌専用でよければ、いくらでもお付き合いしますから。面白さまで保証できなくてすみません」
消灯時間越えでも、外出するよりかはマシだと思った。私は自分の話術とコミュ力の低さ承知で夜の相手を提案してみた。
「ふーん……」
クラーラさんは興味深そうに見てきた。私の顔を覗き込んでもきていて。
「あらあら……私を引き止めようとしてくれてる?」
「はい。どうしても心配というか。駄目元です」
当人が納得していたとしても、私はどうしても見過ごせなかった。クラーラさんは微笑んでいるだけだけど……。
「……ええ、心配。そうでしょうね。私が――『巫女』だから」
クラーラさんから笑顔が消失していた。彼女から笑顔が無くなると、こうも冷たい雰囲気になるの……。
「クラーラさん……」
私は圧されていた。それでも言葉を紡ぐ。
「……はい、巫女様というのもそうです。それもですし、普通に心配なんです……同じ寮生として。クラーラさんは、巫女様でもあります。でも、その前に学生でもあるというか」
相手からの威圧感はなくならないけれど、私は続けた。
「お互い納得の上だけれど……で、どういったお話かしら?」
要領の得ない話だと、クラーラさんは詰めてきた。うん……そう。
「どう転ぶかわからないかなって。人は……豹変するから」
「あなた……」
私は声を震わせながらも、伝えた。私自身が直近の事件でも思い知らされたことを。
ある娘を愛したあまり、狂気に満ちてしまったある男のことも。和やかに接してくれていたのに、妄信者と化してしまった人たちのことも。
私に対しても……狂ってしまった彼らが。
「……あなたに言わせることでもなかったわね」
クラーラさんはそっと手を添えてきた。私の両手を包み込むように。
どこか悔いるようだった。どうして彼女が後悔するのか、それがピンとこなかった。
「わっ……」
び、びっくりした……! もう出てこないと思っていたのに、扉が開いたところだから。
そこにいたのは――きょとんとしたクラーラさん……何故!?
「あら、びっくりさせちゃった。ごめんなさいね?」
「いえ、そんなことは……」
「そう? ――それじゃ、今度こそおやすみなさい」
「はい、おやすみなさ――」
クラーラさん、自室ではなく、階段を下ろうとしている……? 私は訳が分からないながらも、確認をとってみた。
「今から、出掛ける気でしょうか? まずいでしょうし、危ないのでは……?」
「ふふ、大丈夫よ――あなたさえ、黙認してくれたら。心配にも及びません、近くに迎えもきていますから」
クラーラさんは蠱惑的に笑ってみせた……迎え?
「迎えって……」
「ええ、近くまで迎えに来てくれるの。――今夜のお相手、夜を共に過ごす方。ほら、女子寮には招けないでしょう?」
クラーラさんは私の耳元に口を寄せた。秘め事を語るかのように、そう話すものだから。
「え……」
私は耳を疑うばかり。というか、思考が追いつかないというか……!
よ、夜を共に過ごすって……その意味はさすがに……。
「……気晴らしよ、気晴らし。本当に良い気分転換になるから――何もかも忘れさせてくれる」
クラーラさんは遠い目をしていた。彼女にまとわりつく重圧、それに耐えられないから。だから彼女は夜の街に溺れようというの……?
「あなたは居合わせてしまっただけ。見逃してくれないかしら……ねえ、シャーロットさん?」
「……」
ぬかりがないのか、これまで噂になったことすらない。周りに気づかれないように、クラーラさんはそうしてきたんだ……。
「……それなら、話相手になれたら良かったです。相槌専用でよければ、いくらでもお付き合いしますから。面白さまで保証できなくてすみません」
消灯時間越えでも、外出するよりかはマシだと思った。私は自分の話術とコミュ力の低さ承知で夜の相手を提案してみた。
「ふーん……」
クラーラさんは興味深そうに見てきた。私の顔を覗き込んでもきていて。
「あらあら……私を引き止めようとしてくれてる?」
「はい。どうしても心配というか。駄目元です」
当人が納得していたとしても、私はどうしても見過ごせなかった。クラーラさんは微笑んでいるだけだけど……。
「……ええ、心配。そうでしょうね。私が――『巫女』だから」
クラーラさんから笑顔が消失していた。彼女から笑顔が無くなると、こうも冷たい雰囲気になるの……。
「クラーラさん……」
私は圧されていた。それでも言葉を紡ぐ。
「……はい、巫女様というのもそうです。それもですし、普通に心配なんです……同じ寮生として。クラーラさんは、巫女様でもあります。でも、その前に学生でもあるというか」
相手からの威圧感はなくならないけれど、私は続けた。
「お互い納得の上だけれど……で、どういったお話かしら?」
要領の得ない話だと、クラーラさんは詰めてきた。うん……そう。
「どう転ぶかわからないかなって。人は……豹変するから」
「あなた……」
私は声を震わせながらも、伝えた。私自身が直近の事件でも思い知らされたことを。
ある娘を愛したあまり、狂気に満ちてしまったある男のことも。和やかに接してくれていたのに、妄信者と化してしまった人たちのことも。
私に対しても……狂ってしまった彼らが。
「……あなたに言わせることでもなかったわね」
クラーラさんはそっと手を添えてきた。私の両手を包み込むように。
どこか悔いるようだった。どうして彼女が後悔するのか、それがピンとこなかった。
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