春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

文字の大きさ
274 / 557
第四章

エド・クラウン一人の存在によって

しおりを挟む

「そなたは……」

 エドワード君は目を見張っていた。それから笑った。

「……ふ、面白い。そなたは手強かったのだな。ならば――」

 エドワード君は近づいてくる。伸ばされるのは手――私の腕を掴んで、引き入れようとしている。強引ともいえるような――。

「――なりません。無理な勧誘はお控えくださいと、申したはずですが」

 リヒターさんがその腕を捕らえた。彼にしては強い語気でもあって。

「くっ……痛いぞ、痛いんだぞ! 自治委員自ら暴力行為か!」

 エドワード君の言う事は本当のようで、彼は涙目だった。払うにも払えないようだった。

「はて、暴力行為とは。正当防衛でございますが」
「リヒターさん、もう大丈夫だから。おかげ様で助かったから」
「……かしこまりました」

 リヒターさんから腕を離されると、エドワード君は患部をしきりにさすっていた。

「ああ、ほんに痛かったぞ……ああ、痛い痛い」

 まだ涙目だった。痛みに素直なのかな、年相応の顔を見せていた。

「……それほどまででしたか。加減も知らず、申し訳ございませんでした」

 リヒターさんはさすがに申し訳ないと思ったようだった。そこまでだったのかと。

「まあ、よい……ああ、シャーロット殿よ……」

 リヒターさんの相手は切り上げ、私の方に顔を向けてきた。

「ああ……冷やしてくれぬか。ああ、痛い……」
「え……」

『それで冷やしておいてくれる? 時間経てば溶けるから』

 以前のループで、エドワード君殴られたことがあったから。彼に対して氷を与えたことがあった、あったんだけど……。

「ん? 余は存じておるぞ。そなたは氷の魔力があるのだろう?」
「それは、うん……」

 そっか、それだけだよね……? エドワード君はそれを知っていたからこそ、軽口で言っただけに過ぎないって。

「……まあ、なんだ。懐かしい気もしてな」

 エドワード君は穏やかな顔をしていた。そんな懐かしむような表情、どうして?
 彼に記憶はないはずなのに……。

「とりあえず、氷嚢代わりに――あとはよろしくお願いします」

 私は一つ、氷の固まりを発生させた。近くにいた女子生徒に手渡しておく。手当は彼女たちにお任せすることにした。そんな彼女たち、私の魔法に大いにはしゃいでいた。

「……ジェム様」

 私の横にすっとついたリヒターさん。こっそり話しかけてきた。

「ジェム様までも。この度は――」
「ううん。むしろありがとうね?」

 あの時、リヒターさんの介入がなかったら……力として抗えなかったのは確かだったから。

「ああ、余は痛かったのだ……慰めてくれぬか。いたいのいたいのとんでけーと!」
「ふふ、エド様ったら。いたいのいたいのとんでけー」

 氷の固まりを美女にあててもらい、エドワード君はご満悦だった。その、私たちのこと忘れているかのような……ひとまず、一声かけて退室しようとしたところ。

「――ん? ああ、よいぞ二人共。無理を強いるのは、確かに良くない。ここまでご苦労だった。帰ってよいぞ」

 エドワード君はすんなりと解放してきた。私たちは呆気にとられるも。

「はあ……話がついたのなら、私は何も申しません。ようやく解放されましたから……」
「失礼しました……」

 疲労と開放感が混濁したリヒターさん。私も疲れ切っていたから……私たちはそそくさと退室することにした。




「……」
「……」

 美女部から解放されて、私たちはどっと疲れがよせていた。さらにこの異様な雰囲気の廊下ときたものだから。一刻も早く、この中等部から去りたかった。
 エド・クラウン一人の存在によって、これほどまでに――。

 エドワード君は異国の民であり、公用語も異なっている。それなのに、語学は堪能だった。学業成績も優秀ときた。

「貴族かぁ……」

 高貴なる身分の持ち主。中等部を掌握している。学園の美女も思いのままにするのだろうね……。

「……」

 平和が続いて欲しかった。このまま、たわいのない日常が続いて欲しかったのに。

 今は気づかないくらい微かなもの……それでも。私の胸騒ぎは止まらなかった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

彼氏がヤンデレてることに気付いたのでデッドエンド回避します

恋愛
ヤンデレ乙女ゲー主人公に転生した女の子が好かれたいやら殺されたくないやらでわたわたする話。基本ほのぼのしてます。食べてばっかり。 なろうに別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたものなので今と芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただけると嬉しいです。 一部加筆修正しています。 2025/9/9完結しました。ありがとうございました。

転生したら、乙女ゲームの悪役令嬢だったので現実逃避を始めます

山見月あいまゆ
恋愛
私が前世を思い出したのは前世のことに興味を持った時だった 「えっ!前世って前の人生のことなの。私の前の人生はなんだろう?早く思い出したい」 そう思った時すべてを思い出した。 ここは乙女ゲームの世界 そして私は悪役令嬢セリーナ・グランチェスタ 私の人生の結末はハーッピーエンドなんて喜ばしいものじゃない バットエンド処刑されて終わりなのだ こんなことを思い出すなら前世を思い出したくなかった さっき言ったこととは真逆のことを思うのだった…

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

処理中です...