春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第四章

不慣れな恋愛アドバイス


「このまま、話を聞かせてもらうね? どうしても君が気になったから」
「む! 気になっただと!」

 すごい食い気味にきた。といっても、距離は空けたまま。私は追加しておく。

「その、落ち込んでいるなって」
「……む。余は別に落ち込んではおらぬぞ」
「え」

 こんなにもあからさまに。わかりやすく。それはもう落ち込んでいるのに……。

「ああ、落ち込んではおらぬ。といっても、活路は見出したいのだ」
「あ、うん。その前提でいくんだね」

 エドワード君は落ち込んでない、でもアドバイスは欲しいと。

「前提とはなんだ! まあ……よい。本日はな、クラーラ殿と念願のデートだったのだ」
「あら」

 デートまでする関係に発展するとは。私は微笑ましく思うも、結果がこの落ち込みようだから……。

「……余はな、楽しんでもらえている。そう思っていたのだ。だが、実際はどうだ。クラーラ殿は笑ってはくれていた。だが、楽しんでおられたのか。――彼女は、予定があると早々と帰られたのだ。それも逃げるかのようにだ」
「ああ……」

 私はあのクラーラさんを思い浮かべた。気晴らしにと夜遊びに出る彼女のこと。それでも、本当に予定が出来たのかもしれないし。

「……ええと、逃げるってこともないんじゃないかな。用事あったんだよ、そう、用事」 
「気休めはよしてほしいのだ。余は気づいていた。退屈そうに、時折欠伸をしていたことも」 
「ね、寝不足だったんじゃないかな。もちろん、デートが楽しみで、とか? 服で迷ったり、とか……あとは。あとはなんだろ」 

 私は音を上げてしまった……。もうエドワード君を慰めようも、クラーラさんを庇いようもなかった……。

「……ああ、目が覚めたともいっていたな。余の服装を見てというか。これが、余にはわからぬのだ」
「……うん」

 君の服装は……うん。コートからも醸し出される独創性。そのデザインや色使いは、常人では思い至らないもの。個性派の極みのファッション、クラーラさんには刺さらなかったんだ。

「……どうもな。余の美女たちは、余を好いてくれてはいる。だが――心から楽しんでくれているのだろうか」
「エドワード君……?」

 君はそういうこと、気にしていたんだ……そっか……。

「近頃はクラーラ殿とばかりだが、不平等もあってはならない。だから余は逢瀬を重ねてはおる。乙女達を楽しませようと、余も心を砕いておるが……結果はいつも、こうだ」

 エドワード君は手を握りしめた。ままならないと嘆いていた。やっぱり落ち込んでいるんだ。

「――シャーロット殿。そなたに伺いたいのだ。例えばだ、この空中庭園のような場所は退屈なのだろうか」

 エドワード君の眼差し――どこか縋るようでもあった。私はなんだろ、放っておけなくなっていた。

「退屈って。ここでしょ? お花綺麗だし、空気も澄んでるし。私はいいところだと思うけどな。もちろん、デートにだって良さそう」
「……そうか。そなたは優しいのだな」

 エドワード君は妙に感心していた。私はううん、と首を振った。

「優しいとかじゃないよ。本当にそう思ってるし。それとね、彼女たちは君のこと好きなんでしょ? 他の女性といっしょくたにされてもさ、それでも一緒にいたいってくらい」
「……シャーロット殿?」

 エドワード君、こんなにも驚いた顔をしているのは何故? そんな不思議そうにしている君こそが、私にはわからないものだった。
 私にとっては当たり前――当たり前だったこと。味わった気持ちだったから。

「好きな人と一緒なんだよ。それなら、嬉しいし、楽しいよ。退屈になる時もあるかもだけど、でも一緒にいたいって。側にいられたらいいんじゃないかって」

 私は空を見上げた。今では届くことのない世界に向けて。

「……その人がいてくれるだけでいい。廊下で見かけるだけでも。静かなところで、黙って景色を見ているだけでも。ううん、もっと景色が綺麗に見えたんだ。海がね、本当に綺麗だったの」

 夜明けの海。冬花の頃の想いが、この時だけ蘇るようだった。

「……そなたは」

 エドワード君はそれきり黙ってしまっていた。ただね、視線は感じる。私の横顔を見つめているような――。


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