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第四章
待ちに待った遠出!
しおりを挟む翌朝。目覚めた私はカーテンを開けた。曇り空であった。雨でも降りそうな気配だ。
「どうしようかな……」
都に近いこちらはそうでも、目的地もそうとは限らない。新聞の天気予報欄を参照にしようにも、予報が掲載されているのは都近辺までだった。
「おはよう、シャーリー。お天気よくないね」
「おはよ。うん……そうなんだよね。降らないかもだけど、トンボ帰りも覚悟しないと」
最悪トンボ帰りもあり得るよね。鉄道代も当日キャンセルだろうと、安全を考えれば……。
「トンボ帰り? 鉄道には乗るってこと?」
リッカが尋ねてきた。そっか。
「うん、そうだね。鉄道に乗るのも思い出だよね」
「うんっ」
リッカにとっては、初めての鉄道なんだ。長い距離を鉄道に揺られる。それでも充分な楽しみなんだ。
曇天の空の下、決行することにした。
私たちが向かう方面、乗車客の数はそれなりだった。目的地はみな、秘境にある庭園のようだ。家族連れや恋人同士、友人連れが多くみられた。
リッカはキャリーバッグの中で大人しくしていた。私は彼を膝にのせて、窓際の席に座る。外の景色も見えるね、リッカは舌を出して笑っていた。
「わあ、ワンちゃんだぁ。かわいー」
「ワンちゃんだねぇ。大人しい子だね」
通り過ぎる親子が、リッカを見ていた。私は会釈をした。
「――お隣、失礼しますね。あら、ワンちゃん」
私たちの隣にやってきたのは、背筋が伸びた老婦人だった。席、ほとんど埋まっていたからかな。
「すみません、もし苦手でしたら――」
皆が犬が好きということもない。私は席を立って、連結通路にいようとも考えていた。
「いいえ、ご心配なさらず。わたくし、犬が大好きなのよ」
「良かったです……大人しくはさせますので」
私は安心した。それから、世間話をしていた。朗らかなご婦人で会話が弾んだ。彼女も庭園が目当てのようで、そこから話がさらに盛り上がったりもした。
山道を通る。雪化粧をした山々がとても綺麗だった。鉄道に揺られ、リッカが水を飲んだり。時折眠りについたり。そうこうしている間に――。
「――ほら、到着ですよ」
……私ときたら、すっかり眠ってしまっていた。
「わっ、すみません。ありがとうございました、起こしてもらいまして」
微笑む婦人が起こしてくださった。本当にすみません……。
「わあ……」
――雪がない世界がそこにあった。緑の木々が揺らいでいる。土の地面に雪も積もっていない。春が訪れているかのようだ。
「わたくし、知人に挨拶してからになりますから――現地でお会いできるといいわね」
「はい、そうですね。ありがとうございました」
私はリッカ入りのキャリーバッグを抱え直し、リュックを背負った。ご婦人に一礼をして、列車を下りていった。彼女は手を振って見送っていた。
「さてと」
キャリーバッグからリッカに出てもらった。改札口から空を見上げる。一向に曇り空で、雨は降りそうで降らない。
「借り物なんだし」
キャリーバッグも持って移動となると、雨に降られた時にね……お借りしているものだし。ロッカーでもあればと見渡すけど、それもなかった。
それでも幸いだったのは、有料で駅で預かってもらえたこと。雨が降ってしまっても、リッカは抱えればいいんだ。犬用人間用のレインコートもリュックにある。
「わふっ」
リッカは張り切っていた。私は空を不安に思うも、予定通り庭園に向かうことにした。
ゆるやかな山道を歩いていく。リッカも軽い足取りで歩いていた。ざらついた土の道を、尻尾を振りながらだ。ご機嫌だねぇ、リッカ。
土地勘がなかったけれど、観光客についていくことでどうにかなった。
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