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第四章
荒れ狂う雨、彷徨う者たち
しおりを挟む来た道を引き返していた。他の観光客は本当にいない。リッカが道を覚えてくれていたので、それもあって戻れそうではあった。あったのに……。
「……どうして」
私は茫然としてしまった。氷の魔力で弾くなり、盾となるものを発現させてしようとしていた。それなのに、ままならなかった。
上手くできたと思えば、風によって砕け散ったり、もたなくなって消失していったり。
「……なに、これ」
魔力がうまく扱えない――得体の知れない何かが、圧をかけているかのようだった。
「……ずぶ濡れになるけど。温存しておかないと」
全く使えないわけではない。私はいざという時の為に温存しておくことにした。
雨は勢いを増していく。視界も雨の勢いで塞がれるかのようだ。私はリッカを強く抱きしめた。顔面が濡れてしまっている。それでも我慢していた。
「ごめんね、シャーリー……僕、歩くよ。重いでしょ」
「ま、待って……! リッカ、飛ばされちゃうから!」
リッカは腕の中でもがきだした。私は慌てて止める。この強風だ。リッカも吹き飛ばされかねなかった。なんとしても抱えて歩かないと……!
「シャーリー……」
私の気持ちが伝わったのか、リッカは大人しくはなった。
「急がなくちゃ……」
このままでは土砂崩れも起こりかねない。リッカも早く安全なところに連れていきたい。
荒れ狂う嵐の中、歩き進む。その時だった。
「っ!?」
――何者かに足が引っ張られたかのような。
私は足を滑らせてしまい、リッカを抱えたまま――転げ落ちてしまった。
「リッカ……!」
リッカを上に放り投げようとするも、もう間に合わない……!
せめて、それならせめてと……私はリッカを守るように強く抱きしめた。
「……」
崖から転がるように落ちていき、崖の下で止まった。私は痛みで中々起き上がれない。
「……リッカ!?」
ずきんと痛む体をこらえながら、私は体を起こした。リッカが離れてしまっていた。もしかして途中で離してしまったの……!? 私は青褪めながらも、立ち上がろうとして――。
「……シャーリー、起きた」
破けきった雨合羽のリッカが向こうからやってきた。自慢の被毛が濡れて汚れてしまっている……。
「あのね、どこも上るの大変そう。もっと下におりたりとかしないと」
リッカはどうやら脱出経路を探していたようだった。
「リッカ……ごめんね」
私が足を滑らせなければ……。
リッカがこれ以上濡れないように。私は自分の懐に引き寄せた。
「……崖の上に戻れれば、だよね」
自分が落ちた先を見据えた。そこに戻れれば、なんとかなるはずと信じて。温存とはいっていられなかった。
「……よし」
私は痛む体をおさえ、氷の魔力を放つ。氷で出来た階段……良かった、成功した。これを上っていけば戻れるはずだから。
雨は降り注ぐも、風の勢いは止んできた。よし、今の内に。
「これで、戻れるはず。ほら、リッカ――」
「シャーリー」
リッカは階段に飛び乗るも、そこから動こうとしない。私を待っているようだった。
「……うん、私も行くね」
本当のところ、痛みが止まらなかった。這う形で上ることになる。それもゆっくりと。
「シャーリー……」
リッカが私をくわえようとする……うん、ありがとう。私は這いつくばって、階段を上っていく。
「僕、シャーリーと一緒に帰りたい」
「……リッカ」
「こんなところで終わりたくない。僕、いろんなところ、お出かけしたい。シャーリーと一緒がいい」
「……うん」
危機に陥ってしまった。だからといって、ここで終わるわけにはいかない。やっと……やっと平和な日常が訪れたのに。
「リッカ、ありがとうね。私、上れるから……これくらい!」
「シャーリー!」
今はこの階段を上りきることを考えよう。リッカもゆっくりな彼女についていく。上って、上って。
――ようやく、元の場所に戻ることができた。
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