春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第四章

平和だった日常が、音を立てて……


 
 痛みと疲れのあまりか、私は寝つけないでいた。ベッドで体勢を変える。瞳も閉じて、呼吸を繰り返す。それでも眠れはしなかった。

「……」

 胸騒ぎがしていた。

 ――ガガッ! 音声が入る音がした。国中に、夜空に響く拡声器の音。

「……!」

 私は飛び起きた。リッカもすぐに起きて、警戒の体勢に入っていた。動悸が止まってくれない。

 これから告げられることは――平和だった日常が、音を立てて崩れ去ってしまうこと。

『――クラーラ・メーディウム嬢殺害事件。容疑者はシャーロット・ジェム。発見次第、至急報告されたし』
「え……クラーラ、さん?」

 クラーラさんが……どうして!?

 私は動揺しきっていた……ううん、こうしている間にも。

 もう『死神』は目前に迫っている――無実の私を裁く彼らが。

「リッカ、逃げて……!」

 私はもう、魔力はほぼ使い果たしてしまっていた。最後に使えるならば、リッカを逃すことに使いたい。

「いやだ、いやだ……!」

 リッカは拒む。私を守ろうと、ベッドから着地して構えた。リッカ……!

 廊下から足音がする。風のように走る音だ。廊下からやってくる。ならば、窓からと――。

「……え」

 雨は止み上がり、澄み渡る冬の夜空。煌々と輝く月を背に、窓ガラスを突き破って現れたるは――。

「――容疑者シャーロット・ジェム。確保する」

 女神の狂信者にして、汚れ仕事も厭わない――金糸雀隊だった。

「あ……」

 私は『彼』を見た。おそらくだけれど、先程手当してくれた彼を。
 ただの民間人ならば、人道的対応もする金糸雀隊。ただ、彼らにとっての私は犯罪者。自分達が処刑するべく、動く対象であると。

 また殺されてしまうの。私は最後の力を振り絞ろうとして――。

「ぐはっ」

 みぞおちを殴られ、意識が遠のいてしまう。

「わんわん!」

 リッカが吠え続けていた。私は安心させたいのに、ああ……意識が混濁していく。

「うう……」

 気が失いつつある中、仕掛けてきた金糸雀隊を見た。その者はどうといったこともないと手を叩き払っていた。

「――長、これでよろしいですか」
「……」

 女性が確認をとるも、長といわれる人物からの返答は無い。

「長? ご用命を遂行しましたが」
「……我の命ではない」

 焦れる女性が問うと、長と呼ばれる人物の声が微かに震えていた。

「……長?」
「……失礼した。全ては春の女神の意のままに」

 女性の訝しむ声に、彼は整然と答えた。ぐったりしている私を連れていくよう、配下に伝える。

「がるるるる!」
「な、なんだこの犬!」

 リ、リッカ……!?
 そうはさせまいと、リッカはその隊員の足にくらいついた。足で振り払おうとされても、リッカは離すことはなかった。

「ふざけるな!」
「きゃん!」

 リッカは蹴り飛ばされ、ドア付近まで飛ばされてしまった。よろよろと立ち上がるが、それが精一杯だった。なんてことを……!

「リッカ……!」

 私は手を伸ばすも――。

「……しぶといこと」
「!?」

 冷徹に言った女性は、私の腹にもう一発食らわせた。私はその場で倒れ落ちてしまい……。

「――して、長よ。この犬はいかがなさいますか。聞くところによると、この者の家族とも」
「……。哀れな犬だ。捨て置け」
「はっ……」

 長の判断により、リッカをどうこうする気はないようで。リッカはまだ歯向かおうとするも、金糸雀隊はもう相手にしていなかった。

 リッカ……お願い……逃げて……。

「――罪人よ。巫女を殺めた罪深き者よ。さあ――お前に相応しい場所へ」

 彼女のその一言の直後、私の意識は完全に途切れた。



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