春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第四章

彼女の心境の変化

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 冬休み最終日ということで、営業は午前中までにして、店を閉めることにした。学園に向かい、明日からの準備をする為に。

「リッカ、行くよー」
「わんっ」

 しばらくはエーデル村とはお別れ。私たちは村の入口まで向かっていた。


 入口に差し掛かったところで、見覚えのある後ろ姿があった。黒髪のツインテール。

「あ……リナさん?」

 私は見間違えていないと思った。うん、リナさんだ。一瞬躊躇いはするも、私たちを待っているのかもしれない。声を掛けることにした。

「……久しぶり」

 ……リナさんは随分とやつれてしまっていた。よっぽど心身に堪えたようだった……私を見るのも本当は辛いのだと思う。

「……そっか、そうだよね。生きて……いるんだよね」

 リナさんは今にも泣き出しそうだった。ゆっくりと、私の腕に触れてくる。

「生きてる、生きてるんだ……」

 そのまま私を抱きしめた。温もりを確かめるように。

「……ほんとはね、逢いに行くのも怖かった。でも勇気ださなきゃ、いつまでたっても……あんたに逢えないままだから」
「……うん」

 私も抱きしめ返した。足元にいたリッカも挟まってくる。ぐいぐい来る……!

「ちょっ……リっちゃんまで」

 リナさんは思わず笑ってしまっていた。モフモフとした感触がくすぐったそうでも――。





 その日の夜。私は寮の自室から出て、廊下で立って待っていた。ある人物を出待ちする為――今回の被害者、クラーラさんを。

 夜遊びさえ控えてくれれば、あのような結果にならないかもしれない。なんなら夜通しの話し相手も望むところだよ。頷き専門でも良いと仰ったのはクラーラさんなんだろうから。社交辞令だろうとそれで通す。

「……」

 私は廊下で待ち続けていた。待つ中、もしかしてと考えた。クラーラさん、寝ているのかも。ノックをするにも迷惑というか……明日、出直そうかと考えていたところ――。

「――なんだか落ち着かないと思ったら」

 部屋の扉が開いた。出てきたのは困り顔のクラーラさんだった。私は驚きつつも、彼女に近づいていく。

「ああ……」
「ええと、シャーロットさん……?」

 目の前の彼女が訝しむような表情をしていても、私はもう構わなかった。クラーラさんが生きている……生きているんだ。

「ふふ、なにかしら。夜のお誘い?」
「……そうですね。頷き専門でも、夜通しでも。お付き合いしますから」

 いつもの軽口だろうと、私はいいの。微笑ましいとも思えていた。しかも夜の出歩きを止められるなら言う事なしだと。

「……ふう。私、監視でもされているのかしら」
「いえいえ、そんなことは」

 私が慌てて否定すると、クラーラさんはより深い溜息を吐いた。

「……ご心配なくとも、夜遊びは控えるわ」
「え……」

 それは願ってもないこと。でも、急でもあった。以前までのクラーラさんならば、のらりくらりと注意をかわし、夜の都に出向いていたのに。

「――どういう心境の変化かって、そう思っているでしょ」
「はい」

 まさにそうだった。素直な態度の私に、クラーラさんは失笑した。彼女は顎に手をあてて考え、そして口を開いた。

「……。モルゲン先生にお会いして、釘をさされてしまったの。今までのこと、不問にはしてくださるって。それなら、ね?」
「そうだったのですね」

 教師による口出しの為、クラーラさんは改めることになったのかな。自然な流れだと思った。

「つい、羽目を外してしまいがちだったけど。私、自分の立場を弁えていなかった。――今後は控えるわ」
「控える、ですか」
「もう、そこ拾っちゃう? 言葉の綾。ともかく、もう夜に出歩くことはないから」
「はい……正直、そうしていただけた方が嬉しいです。クラーラさんのこと心配ですから」

 私はあとは、と考える。

「あとは、真剣に……」

 そう言いかけたところで、私は止めた。これは難しかった。エドワード君、他の人たちとも真剣に向き合ってほしい、とか。どこまで踏み込んでいいのかな……。

「……」 

 クラーラさんが続きの言葉を待つように、見つめてきた。私は意を決する。

「……真剣なんです。あなたに思いを寄せる子たちは、本当に真剣だと思いますので」
「……真剣、ねぇ」

 クラーラさんはどこか冷めた言い方だった。その様子私は不服だった。あれだけ一生懸命にアピールしているのに? エドワード君に同情したくもなっていた。

「――ふふ、ご忠告受け止めておくわ。さ、お互い寝ましょうか。あなた、寝不足でしょう?夜通しのお喋りは、また今度。ね?」 
「はい、おやすみなさい……」

 クラーラさんに目元を指で触れられ、私はこくんと頷いた。妖艶な笑みと共に、彼女は自室へと戻っていた。

「……ふう」

 動作一つひとつに色気があった。私は妙に緊張してしまっていた……。

「あれ?」

 随分とスムーズに話が進んだよね? それに、私が夜遊びを知っていたことに突っ込まれなかった。ううん、それはモルゲン先生の注意があったから?

 クラーラさんの夜遊び問題。これで一つは片付いた。あとは――彼女が恨まれるような行動をとらないこと。そこに警戒し続けることとなった。


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