春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

文字の大きさ
304 / 557
第四章

そなたを選ぶ



 もうすっかり暗くなっていた。散歩の時間も遅れてしまった。リッカは尻尾を振って迎えてくれていた。お待たせ、リッカ。


 私たちは校内を散歩していた。私はお詫びの意味も込めて提案した。

「リッカ。美味しいお水、買っていこっか」
「へっへっへっへっ」

 売店にあるお水をね。リッカは嬉しそうだ。ぎりぎり閉店に間に合うかどうかの時間だった。私たちは急ぐことにした。




 実際に着いたのは、閉店直後だった。間に合わなかったねと、私たちは顔を合わせていたところ。

「――待っておったぞ、シャーロット殿」
「……エドワード君?」

 ……驚いた。売店のベンチに座り込んでいたのは、エドワード君だった。私を見上げる彼は。

「余は話があって……ひいっっっ!」
「くーん……」

 と、言いかけたとこで……エドワード君は竦み上がった。リッカはその反応に悲しそうにしていた。

「い、いや、すまぬ……余はな、犬に噛まれたことがあってだな。恐怖心が消えてくれないのだ」

 胸が痛んだのか、エドワード君は釈明していた。ベンチの上に座り込んで、逃げの姿勢のままで。
 ううん、エドワード君は逃げることはない。話あるって、そう言ってたものね。

「……うん。この距離からでよければ、話聞くね。リッカも、付き合ってもらっていい?」
「わんっ」

 以前のように恋愛相談に乗ってほしいかな? 一定の距離を保ちつつ、話を聞くことにした。

「……すまぬな。余はな、乙女と放課後デートをしておった。だがな」
「うん」

 だがな、ときた。どうしたんだろ。

「……肝心の余が、上の空になってしまってな。気もそぞろだった。それも――目撃してしまったからだ」
「目撃って?」
「……そなたらは、楽しそうであったではないか。親しげであったぞ」
「うーん……」

 私は唸った。私相手に嫉妬しているのかな……クラーラさんとの仲を疑っている気がする。これはまた――拗れそうな……。

「シャーロット殿、そなたらはどういった関係なのだ!?」

 直球で聞いてきた。ちょっと、心の準備が出来てなかったけれど、すごく見てくるし……答えないと。

「それ、誤解だよ。クラーラさん、交友関係広げる為に来たんだって」
「……そなたは」
「私?」

 何故、と私は思うも、自分の立場を省みた。今の私は。

「たまたま居合わせただけだよ。私、美女部だし。エドワード君差し置いてとかないよ」


 事情や思惑があるにしろ、彼のハーレムの一員だった。
「……シャーロット殿。まあ、わかってはいた……いたのだがな」

 エドワード君は立ち上がり、あろうことにも近づいてきた。

「え……」

 リッカが――子犬が側にいるのに、あれだけ怖れていたのに。エドワード君は厭わない。私は気持ち強めにリードを握った。

「……やはりな」

 私の瞳を見つめては、エドワード君はそう呟いた。

「――恋を宿してない瞳だな」
「!」

 以前にも言われたこと。エドワード君は覚えてないにしろ、私はいやに緊張してしまう。

「……」

 それから彼が黙り込むから余計に。

「エドワード君……?」
「……余はな、それが――大層、面白くないのだ!」

 エドワード君は重々しい表情から一転、ふんぞり返った。混乱する私をよそに、彼は宣言し始めた。

「うむ、そういうことだ! 余が上の空だったのも、そなたが気になっていたからだ! しかも、そなたは余を慕って入部もしてくれた。これはもう、もうなのだ!」
「……」

 エドワード君は興奮しきっていた。私はポカンとしていた……事態についていけなくて。

「こうして逢えたのも運命。余はな、そなたに全力で参るぞ!」
「あ、そうなんだ……ええと」
「『あ、そうなんだ』とは、どういった反応なのだ……?」
「ええと、ごめん?」

 私は整理をすることにした。私は必死だった。
 エドワード君はあれかな。私をターゲットにした、で合ってる? なんか気になる点があったから? 美女部に自ら入部したから? 私は考えるも考えて――。

「……」

 怖ろしい想像もしてしまった。仮も仮の話で――犯人がエドワード君で、しかも愛憎によって狙われてしまったとしたら……。

「私なら……」

 まだ自分が狙われた方がマシだと思った。氷の魔力もあるし、先の事も知っている。それだけでも大分違うと。

「シャーロット殿、どこへ参りたい? 余はな、どこへでも付き合うぞ!」
「……エドワード君」

 私がそう考えているとは知らず、エドワード君は純粋な笑顔を見せていた。血生臭い事態に発展するとは思えないもの。
 こんな子が殺したりするの? ……それも、愛憎が起因となって? ……私は胸が痛くなった。

 クラーラさん殺害事件は、犯人も動悸もわからないまま。エドワード君が犯人とも決定づけられていない。まだ決めつけるわけにはいかない。

「……うん。仲良くなりたいな、とは思っているよ。でも、ゆっくりでいいというか」

 私は緊張しながらもそう伝えた。

「なるほどな。確かにな――だが、シャーロット殿よ」 
「……わふっ」

 エドワード君が一歩、一歩と距離をつめてきた。それとなく間に入るリッカも気にせずに。

「これは、予感に過ぎない。だが、余はきっと――そなたを選ぶ」

 エドワード君は頬を染めながら宣言していた――。


感想 0

あなたにおすすめの小説

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

天咲リンネ
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

男女の友人関係は成立する?……無理です。

しゃーりん
恋愛
ローゼマリーには懇意にしている男女の友人がいる。 ローゼマリーと婚約者ロベルト、親友マチルダと婚約者グレッグ。 ある令嬢から、ロベルトとマチルダが二人で一緒にいたと言われても『友人だから』と気に留めなかった。 それでも気にした方がいいと言われたローゼマリーは、母に男女でも友人関係にはなれるよね?と聞いてみたが、母の答えは否定的だった。同性と同じような関係は無理だ、と。 その上、マチルダが親友に相応しくないと母に言われたローゼマリーは腹が立ったが、兄からその理由を説明された。そして父からも20年以上前にあった母の婚約者と友人の裏切りの話を聞くことになるというお話です。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

自称ヒロインに婚約者を……奪われませんでした

影茸
恋愛
平民から突然公爵家の一員、アイリスの妹となったアリミナは異常な程の魅力を持つ少女だった。 若い令息達、それも婚約者がいるものまで彼女を一目見た瞬間恋に落ちる。 そして、とうとう恐ろしい事態が起こってしまう。 ……アリミナがアイリスの婚約者である第2王子に目をつけたのだ。