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第四章
キングとプール
しおりを挟むもう帰る時間が迫っていた。寄るとなるとせいぜい一箇所くらいかな、と。
「む」
エドワード君がふと足を止めた。そこは、温水プール前だった。彼はソワソワしていた。
「泳ぎたいの?」
「むむっ!」
私はそうだろうなと思いつつも、尋ねてみる。エドワード君は飛び跳ねた。その通りだったようだね。
「……いや、せっかくのデートなのだ! 余は、寄らぬ。寄らぬぞ!」
エドワード君は頑なにそう言うも、体は温水プールに向いていた。わかりやすいなぁ。
「別にいいよ? あ、でも……使っていいのかな。使用許可とか」
「心配は不要だ。既に許可を得ている。休日の午後は全て、余が好きに使ってよいと」
「それって……」
いいのかな……? 高等部の生徒も使用しているだろうに、エドワード君単独のものとなっていた。中等部どころの話ではなくなってるし。
「……エドワード君は」
親しみやすさもあったから、私は失念していた。エドワード君は中等部を牛耳るキング。そして、ララシアの貴族であるとも言われている。そうだったね……。
「シャーロット殿?」
「……質問なんだけど、他に使いたい人がいたら?」
「余は狭量ではないゆえ、共有するぞ!」
「うーん、そういうことなら……」
今はそれしかないのかと、私は溜息をついた。本人に悪気がないのも、なんともだった。
「……とりあえず。プールに寄っていくのはいいと思うよ。私は見学させてもらうね。水着持ってないし」
借りるという手もあるけど……水着はね。ノリが悪いと思われようと、着ないで済むなら越したことがないなって……。
「ふむ……」
エドワード君は難色を示すというか、考え込んでいた。私をしきりに気にしているようだった。
「ふむ、では余は甘えようぞ……実はな、泳ぐ時全力集中するのでな。相手方を放置してしまうきらいがあるのだ」
エドワード君は萎縮してしまっていた。前例もあるようだった。
「……本当はな、一緒に泳ぎたくもあったのだ。もちろん、泳ぎを教えたくもある」
エドワード君は純粋にそう望んでいた。そう、純粋に――。
「そう、水着姿のシャーロット殿に――」
そう言いかけて止まった。想像でもしてしまったのか、エドワード君の顔は一気に赤くなった……いやいや、水着姿って。
「す、す、すまなかった。いや、本当に想像すらしておらぬ! それは誠だっ!」
ううん、水着姿の想像はまだだったのかな。字面だけでこうも赤面してしまったってこと?
「……とりあえず。プール寄っていこうか?」
「……うむ」
このままでは、お互い気まずいままだから……。私は場所を移すのを提案した。
この学園の温水プールは、南国の植物も植えられており、ムードを味わえるものでもあった。この蒸し暑さも、冬の国からしたらそう体感できないものであった。
エドワード君が用意してくれた椅子に座っていた。着替え中の彼が出てくるのを待っている。――水着姿の彼を。
「……うう」
免疫がないのは私こそだった。前世と今世の幼馴染の水着姿を見たのは、小さい頃くらいで。それ以外に――。
「……」
……ないよね? ないはずなのに……私は居たたまれなくなって、顔を伏せていた。
「――む、シャーロット殿? 具合でも悪いのか?」
「ううん、そんなこと――」
私は返事をしようとして、反射的に顔を上げてしまった。目の前には、水着姿のエドワード君。私は心の準備なくして見てしまったことに、慌てふためく。
「!?」
エドワード君の水着姿が、あまりにも衝撃的だった。いっそド派手な水着ならまだしも――ブーメランパンツだった。
「うん、わかってる、わかってるんだ」
私はしきりに頷いていた。彼は泳ぎに全力で行くと。だから水の抵抗もないものを選んだ。なにも意識も、こうも動揺することもないでしょうに。
「ふむ。そなた、やはり具合が悪いのでは」
「全然そんなことないから。さあさあ、泳いでおいでっ?」
「そうか? 少しでも辛抱できなくなったら、言うのだぞ?」
エドワード君はどこまでも心配していた。私の前までやってきて、しゃがみ込んだ。
「だ、大丈夫――」
……ダイレクトに視界に入ってしまう。私は目をそらそうとしたけれど。
――ある物が目に入った。
「……ペンダント?」
エドワード君の首にかけられているのは、ペンダントだった。
サンゴがふんだんにあしらわれたチェーンの部分に、トップは青い宝石。その美しさに……私は惹きつけられた。
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